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バス停・オブ・ザ・デッド ~ボクはゾンビゲームにTS転生した!  作者: どくどく
二章 犬塚洋子(ボク)のバス停に集う者達
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ボクだってこんなことは予想外!?

 ナナホシ子供に寄生されたゾンビの行動は単純だ。


 近くに居る人間に殴り掛かるか、遠くに居る者に走りかかって体当りをして自爆するか。そして攻撃されるか自爆するかすれば、広範囲に回避不能のバッドステータス付与を行う。


 逆に言えば――


「攻撃と体当りを避け続ければ、何の問題もない!」


 要は攻撃のトリガーを発動させなければいいのだ。簡単簡単。


「いや、無理だろ!? 六体のゾンビの攻撃を避けきるとか!? 『彷徨う死体(ワンダリング)』もいるんだぞ!? 正気かお前らのクランマスター!?」


 洋子ボクの言葉に叫んだのは、十条だ。洋子ボクの作戦に異議があるようだ。


「ダイジョブだって。犬ゾンビも生徒ゾンビも攻撃ルーチンは統一されたからね。攻撃パターンが単調だから不可能じゃないよ!」

「るーちん? いや、それでも6体だぞ!? しかもナナホシ本体もいるんだぞ!? しかもバス停に制服とか舐めた装備で!」

「日本のことわざで言う所の、そんな装備で大丈夫か、デスネ!」


 洋子ボクの説明に納得いかないと言う風に叫ぶ十条。


 寄生ゾンビの攻撃を受けない為には、大きく二つの手段がある。つまり回避するか盾軽装備で受けるかだ。後は例外的な防御として近接武器の切り払いもあるけど、これは今回使用しない。切り払ってもダメージを受けた扱いで自爆するからね。


 回避は言わずもがな。相手の攻撃範囲から逃れることだ。これはゾンビの攻撃パターンさえ把握していれば問題ない。頭の中でゾンビがどう攻撃してくるかをイメージし、どう避けるかを決める。攻撃してくるゾンビの数は多い分、攻撃も様々なパターンがあり、それをわずかな時間で構築しなければならない。


 盾系装備で受けるのも、似たようなものだ。洋子ボクのバス停も時刻表示板の面で攻撃を受けることが出来る。その『面』の範囲外の攻撃は受けるのだが、大火力でない限りは防御可能だ。


「うん? 大丈夫だけど」

「お前達のクランマスターは頭おかしいぞ! ミーの命運がかかってるんだから真面目にやってくれ!」

「否定はしませんが……実際それができる人なんです」

「これは十条チャンが正しいけど、デキちゃうンだよネー」


 叫ぶ十条に、福子ちゃんとミッチーさんが答える。むぅ、なんか洋子ボクが頭おかしいと言うのを否定してくれてない気がするんだけ――


「どっ!? っと、こっちこっち!」


 噛みつこうとしてきた犬ゾンビを半歩下がって避け、すぐ隣に居た生徒ゾンビの爪を攻撃をバス停で受け止める。コンマ3秒後に7時方向からの犬ゾンビを前転しながら避け、そのまま駆け抜けるようにして寄生したゾンビから距離を離して、ナナホシ本体にバス停を振り下ろす。


「脳天ゲット! ――ミッチーさん、5,7,9! その後で攻撃GO!」

「ひぃ! バス停の君をいじって楽しんでる場合じゃナイネ!」


 ナナホシの頭部をバス停で叩きながら、ミッチーさんに回避の指示を出す。ナナホシ本体からの節足攻撃三連続を避けた後に、ミッチーさんはナナホシに迫って毒ガスを吹きかけた。


<ギチチチチチチチチチ……!>


 可聴域を超えたナナホシの叫び。戦場全体に響き渡る鳴き声が、人間の鼓膜を揺さぶり精神を汚染する。人間ではない存在の強い感情をぶつけられ、そのおぞましさに戦意が折られる。


 うあ……! だい、じょうぶ……!


 一瞬止まる洋子ボクの足。『AoD(ゲーム)』的には性格スキルのデメリットを強引に発生させる攻撃だ。洋子ボクの<お調子者>の場合は、すくんでしまって動けなくなる。

 幸い、疑似的な物なので効果はそれほど長くはない。だが僅かな足止めの間に、ゾンビは距離を詰めてくる。


 ――コンマ五秒後に三時から生徒ゾンビ、五時から犬ゾンビ。そのコンマ二秒後に生徒ゾンビが走って体当りしてくる。ミッチーさんの方は4時方向から二体。そしてナナホシ本体は――


 一瞬で状況把握をして、最適解を導き出す。その後起こりうる状況をイメージし、更なる手を繰り出していく。想像イメージ行動アクション、そして状況掌握コントロール。この思考こそが生存の要。


「見え見えだよ! ボクを捕まえるには1000年早いかな!

 ミッチーさんはそのまま3秒走って右に跳ぶ! ナナホシが飛んでくるよ!」


 生徒ゾンビの攻撃を避け、犬ゾンビの攻撃をバス停で受け止める。そして体当りしてくる生徒ゾンビを見をひねって回避した。


 同時に羽を広げたナナホシが、ミッチーさんの方に向かって跳躍する。コンマ6秒前に跳んで回避したミッチーさんは、そのまま転がるようにしてナナホシから距離を離す。


「おおおおおお! もう少し遅れたら圧し潰されテタヨ!? ギリギリだったネ。

 デモ、虫で圧死……経験したことないからどんな感じか気になるヨ!」

「あ、興奮で変なスイッチが入った。戻ってこーい!」


 変な誘惑に負けそうになるミッチーさんにツッコミを入れる洋子ボク


 でもまあ、逆に言えばそう言う事が言える程度に余裕はある。


「マジか!? あの状況で避けきっているだと……!? 信じられん!」


 十条の呟きが聞こえる。どうやら信じてもらえたようだ。


「だから言ったじゃん! このボクにかかればこの程度逆境でもないのさ!

 華麗にゾンビの攻撃を避けるボク……その姿にもっと見惚れてもいいんだよ!」

「いやそれはない。凄いとは思うが惚れるとか100%ない」

「即答かよ!?」


 迷いなく答えられて、ツッコみ返す洋子ボク


「だが、このままいけば勝てるんじゃないか!? ふはははは! 『彷徨う死体(ワンダリング)』などと怯えていたが、蓋を開ければこんなものか!」

「なんで十条キミが偉そうなんだよ……」

「いやあ、ミーが戦えれば余裕だったのだが、仕方あるまい。今日の所は名誉を譲っておこう。しかしミーが貴様らの荷物を背負っているから、勝利が見えているのを忘れるなよ!」

「十条チャン、復活したみたいネ」

「だからなんで偉そうなんだよ……」


 十条のハイテンションな叫びにげんなりする洋子ボク


 とはいえ、もともとは狗岩用に用意していた大量のガスボンベが役立っているのは事実である。そういう意味では<倉庫ストレージ>の十条がいないと手詰まりだったのは事実だ。


 とはいえ、楽観できるわけでもない。毒ガスとバス停の打撃。この二つだけでナナホシを倒すとなると……問題はどれだけ時間がかかるかだ。


 現状、ナナホシと相対しているの洋子ボクとミッチーさんだ。そしてメインのダメージソースはミッチーさんの毒ガスによるスリップダメージになる。


 洋子ボクもバス停を振るうが、大前提としてナナホシと6体のゾンビの攻撃を避けることがある。一撃喰らえば厄介なバッドステータスで足止めされ、一気に瓦解しかねない。なので無理に攻撃に転じることはできない。


 そしてミッチーさんの毒ガスは限りがある。既にガスボンベの二本を使い切っており、<倉庫ストレージ>に残っている毒ガスのボンベは三本。これが尽きればミッチーさんは攻撃手段を持たない状態になる。


「ま、どうにかなる!」


 最悪のケースを棚に上げ、動き回る洋子ボク。焦らなければ、ゾンビ六体の攻撃を避けることは難しくない。ミッチーさんに回避の指示を出しながら、少しずつダメージを蓄積していけばどうにかなる。


 なるんだけど……休む暇がない……!


 動き回るたびに呼吸を行い、そのたびに空気中のゾンビウィルスが体内に溜まっていく。抗ゾンビ薬のはいったジュースを飲みたいけど、その余裕もない。足を止めて一秒。その間ミッチーさんの指示は止まるし、洋子ボクへの攻撃も来るだろう。


 その一秒が致命的になりかねない。飲んでいる間にナナホシが『鳴く』かゾンビが体当りを仕掛けてくれば、立て直しは難しくなる。隙を見てジュースを飲んで回復したいけど、その隙を見いだせずにいた。

 

 とにかく、ミッチーさんが重ねていく毒ガスで、ナナホシの体力をじわりじわりと体力を奪っているのは確かだ。このパターンを崩さかければ、負けはな――


「い!?」


 思わず叫ぶ洋子ボク。そして驚きを隠せない僕。


 ナナホシの節足が、子供が寄生したゾンビを殴ったのだ。とたんにはじけ飛ぶ体液。そしてその空気をまともに受ける洋子ボク


 嘘……だろ!? 『AoD(ゲーム)』ではそんなことしなかったじゃないか!


 ナナホシが寄生ゾンビを攻撃し、自爆させて体液をぶちまけさせる。

 それは()()()()()()()ナナホシの行動だった。


拙作を読んでいただき、ありがとうございます。

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