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バス停・オブ・ザ・デッド ~ボクはゾンビゲームにTS転生した!  作者: どくどく
一章 犬塚洋子(ボク)はバス停使いのゾンビハンター!
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ボクはフラグを踏む?

「ここまでくれば、勝ち確だね! もうなにもこわくない!」


 厄介な生徒ゾンビ二人を廃し、笑みを浮かべる洋子ボク。うんうん、やっぱり僕のプレイヤースキルは無敵だね!


「ヨーコ先輩、油断しないでください! っていうかそれは噛みついてくる怪物相手には危険なフラグです!」

「もー。福子ちゃんは心配しすぎ。ボクがそんな安易なフラグ踏むとか――」


 壁を突き抜けて洋子ボクに突撃してくるチェンソーザメ。コンマ3秒遅れて魚ゾンビが逃げ道を塞ぐように迫ってくる。


「――ナイって!」


 だが飛びかかってくる前にチェンソーザメにダッシュし、通り抜け様にバス停を振るう。突撃してくるタイミング、角度、そして速度。全てが分かっているのならカウンターは容易だ。ブレードマフラーで追撃を加えながら、迫ってくる魚ゾンビの攻撃を受け流す。


 元よりチェンソーザメの厄介なのは魚ゾンビとの連携と、超強い斬撃ダメージにすぎない。逆に言えば、その対策さえしっかり取れれば組みしやすい相手なのだ。


「あとは隠れている軍人くんぐらいかな。それも見つけ次第倒してしまえばいいし。ま、いろいろあったけどボクにかかればこんなものさ」

「ふざけるなぁ! ミ、ミーのパーティーを壊滅させてただで済むと思うなよ!」


 いまだに腰を抜かしている十条が洋子ボクを指差し叫ぶ。


「はぁ? そっちが勝手に防御に回って崩壊したんじゃないか。ボクが何したっていうのさ」

「ユーが指示を出さなければ、困惑することはなかったんだ! ミーの完璧な指揮能力で持ち直せる予定だったのに!」

「あの武器構成で防御に回るとか、ただの臆病じゃん。っていうか防御力ならキミがピカ一なんだから、キミが盾になるべきだったのに」

「そそそそそそそんなことできるか!? ミーは十条家の人間。その辺の凡民とはわけが違う!」


 おー。言うに事欠いて凡民と来たか。


 察するに、十条コイツの性格は<王様気質>かな。高い指揮能力でパーティーの攻撃力を向上させる効果を持つ。代わりにパニックになるとでたらめな指揮を執って防御にデバフ(マイナス)がかかる感じだ。


 ……なおのこと守りに入ってどーするのさ、って感じだ。ちぐはぐにもほどがあるよ。


「とにかくユーにはこの損失を補填する義務がある! 欠けたパーティーの穴を埋めるためにミーの手足となれ! パーティーに入ってミーに貢献するんだ! 無事帰れたら高級装備かきんあいてむをくれてやってもいいぞ!」

「んー。軍人くん出てこないなぁ。もしかして毒霧でやられた? それはそれで間抜けだよね」

「ミーの話を聞けぇ!」


 ぎゃあぎゃあ騒いでいる十条のたわごとを無視して、戦場に意識を向ける。中々透明化を解除しない軍人くんの行動を意識しながら、水場を走り回った。福子ちゃんに迫ると思われる魚ゾンビを迎撃し、状況をコントロールしていく。


 福子ちゃんも洋子ボクの意図を察したのか、チェンソーザメにターゲットを集中する。ラジカセこそないが、最初のパターンに戻った形だ。少しばかり洋子ボクが走り回ることになるけど、必勝パターンが形成されたも同然!


「……そう、か。ならばミーも攻撃に参加させてもらおう!」


 そしてこの状況を見た十条も現状を悟ったようだ。チェンソーザメが洋子ボクを狙い、それを回避もしくは迎撃したところを福子ちゃんが狙う。そのパターンを見て、自分も参戦できるのだと思ってしまう。何せ今は洋子ボクと福子ちゃんのワンサイドゲーム。冷静になるう余地も出てこようモノだ。


「キミの助力なんかいらないから」

「ふははははは。ミーの邪魔をしようとは不届き千万。だが寛容なミーはそれを許そう。何故なら! クランを作ると言う大望が今叶うのだからな!」

「ひ、人の話を聞かない御仁ですわね……」


 洋子ボクの制止を聞くことなく、十条は浮遊砲台に攻撃命令を出す。念動力で動く浮遊砲台は目標のチェンソーザメに向かって飛び、砲撃を加えた。そのダメージにチェンソーザメは態勢を整え直すために水に潜る――ことなく攻撃をしてきた浮遊砲台をヒレで切り裂き、十条に向かって迫る。


「ホワイ!? なぜダメージを受けたのに水に潜らない!?」

「ダメージ量が小さすぎたんだよ。仕切り直さなくても大丈夫って思ったんだろうね」

「あの光華こうか学園の眷属の攻撃では一撃で潜ったのにか!? しかも無印眷属だぞ! ミーの浮遊砲台が彼女に劣るとでもいうのか!?」

「そりゃ『鬼角笛』で強化された上に七体同時攻撃だからね。浮遊砲台が強くても三体だけの攻撃だとダメージも劣るさ!」

「チートだ! 眷属の『攻撃』は三体までなのに! なんで七体も攻撃できるんだ!」


『待機』からの攻撃を知らなきゃ、そう思うのは当然だろう。でもまあ、チート(ズル)はしていないもんね。


コウモリの(フレーダーマウス)戦争・クリーク二連撃ツヴァイ!」


 そして十条に向かうチェンソーザメに福子ちゃんの操る眷属が迫る。七体同時の攻撃を受けて耐えきれず、チェンソーザメは近くの穴に飛び込む。


 福子ちゃんのやり方を見た十条は、その手管に舌を巻いていた。ただ命令を下すだけの自分と、適切なタイミングを計って攻撃する福子ちゃん。そこにある技術の差を感じ、同時に認められずにいた。


「ありえない! そんなやり方とか――」

「上位ランククランのテイマーならみんな知ってると思うよ。キミは【ナンバーズ】の知り合いらしいけど、こんなことも知らないのかな?」

「ぐ……! ミ、ミーはそんな下賤な技などなくとも勝てるからいいんだ!」

「装備による力押し。それで今までのし上がってきただけじゃん。現に福子ちゃんにダメージ量で負けてるし」

「ぐぎぎぎぎぎ……!」


 悔しがる十条。それを見て、溜飲が下る僕。横殴りとMPKの指示(疑い)の分はこれで晴れたし、これぐらいにしておくか。僕も『他人の褌でえらそうにしている』わけだし。


「十条さん……。アンタ、俺を騙したのか? 【ナンバーズ】に紹介してくれるって言ってたのに」

「いや待ってくれ! 今はそれを言い合っている状況じゃないだろうが。そう、協力してあのサメを退治して『金晶石』を手に入れてミーのクランを」

「そのクランだって、【ナンバーズ】をサポートするための分派クランだって聞いてたぜ。俺はあの【ナンバーズ】に貢献できるって信じてたのに」


 洋子ボクと十条のやり取りを聞いていた後藤が十条に詰め寄る。


 有名なクランへの伝手がある。しょーもない詐欺だね。ま、そっちはそっちで好きに揉めててちょうだいな。その方が邪魔されなくて済むしね!


「今のうちに決めるよ。福子ちゃん!」

「はい、ヨーコ先輩!」


 言ってチェンソーザメと魚ゾンビに集中する洋子ボクと福子ちゃん。十条達の横やりもなく、スムーズにダメージを蓄積していく。このまま一気に決めるよ!


 ……あれ、なんか忘れてる?


「きゃん!」


 突然の銃撃にうずくまる洋子ボク。透明化していた軍人ゾンビが持っていたマシンガンをこちらに向けて撃ち放ったのだ。狙いは甘かったこともあり、慌てて飛びのいて事なきを得る。ったく、危なかった!


「もう、撃つなら撃つって先に言ってよね!」

「ヨーコ先輩、右!」

「――え?」


 福子ちゃんの声。右側から迫るチェンソーザメの口。無数の鋭いサメの歯。それが迫ってきているのが分かる。飛びのいて態勢を崩した洋子ボクが動けるようになるより早く、チェンソーザメの牙は洋子ボクの頭に食らいつくだろう。


 あ。これ、やばいかも。


 しょーもないフラグ踏んで遊んでたバツかなー、と全く他人事のように思う僕。思考も体も完全にフリーズしており、チェンソーザメを迎撃しようとバス停を握るけど、絶対に間に合わなくて――


 たぁん!


 銃声が響く。

SVLK-14S(スムラク)』。後藤の持っているライフルだ。その銃口から放たれた弾丸が、チェンソーザメチェンソーザメの頭部を穿った。

 それがとどめになったのかチェンソーザメの意識は失われ――そのまま洋子ボクはチェンソーザメに押しつぶされる。


「ぐええええええ……」


 噛まれることはなかったけど、重い!


 そして押しつぶされて水中に洋子ボクの体が押し付けらえてるから呼吸が! 力入れて上体を起こさないと顔が水の中に沈んじゃう! あ、もう駄目。……ぶくぶくぶくぶく。


 駆け寄ってくる福子ちゃんの気配を感じながら、僕は意識を失った。


 ……え!? ちょっといろいろ決まらないんだけど! そんなのアリなのぉ!?


拙作を読んでいただき、ありがとうございます。

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[一言] まさか後藤に救われるとは……。
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