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バス停・オブ・ザ・デッド ~ボクはゾンビゲームにTS転生した!  作者: どくどく
一章 犬塚洋子(ボク)はバス停使いのゾンビハンター!
32/226

ボクの言う事を聞いてほしいんですけど無理ですか?

「ギシャアアアアアアアアアアアア!」


 叫び声と同時に壁から飛び出したチェンソーザメ。それは僧服を着た男を喰らい、そのままかみ砕くように力を籠める。


「ウンカイさん!?」


 とっさのことに反応が遅れる十条チーム。


 後藤はライフル使いだ。ここまで近距離だと、ライフルの特性はまるで生かせない。むしろ構えている間に攻撃されるだろう。


 マッドガッサーくんは慌てて距離をとろうとするが、壁際だったこともあり逃げ場を失う。今入ってきた扉に逃げようとして、後藤の身体にぶつかってしまう。


 マシンガンを持った氷華学園の軍人くんが銃を撃ち放つ。だがとっさのことで狙いが甘かったのか、チェンソーザメはそれを回避しながら移動する。


 そして十条は――


「あわわわわわ! ええと『攻撃』だぁ! ここに居るゾンビ全部攻撃しろ!」


 ようやく現実を認識したのか、浮遊砲台に命令して攻撃を始める。念動力で宙に浮かび、敵を追いかける砲台は適切な距離まで近づくと攻撃を開始し――


「わああああああ! その方向から撃ったらラジカセが!?」


 浮遊砲台はルーレット台の上に置いてあったラジカセ近くにいる魚ゾンビも攻撃し、そしてその近くにあったラジカセも破壊する。


「ふん。こんな所で悠長に音楽を鳴らしているのが悪いんだ。そもそもクラシック以外の音楽は――」

「馬鹿ぁ! 音で魚ゾンビ引き寄せてたんだよ!」

「はぁ? なんでそんな面倒なことをしているんだ。ゾンビは全部殺せばいいだろうが。ああ、貧乏人の装備ではそれが出来ないのk――」

「十条さん、サメが来ます!」


 叫ぶ洋子ボクの声に小馬鹿にするように肩をすくめる十条。そんな十条チームに向かって、チェンソーザメが迫る。


「慌てなくてもいいさ。ミーの浮遊砲台が攻撃してくれるから。皆は自分の身を守ることに――」

「魚ゾンビも来ます! 五体も!」

「こっちからは三体だ! 迎撃が間に合わん!」

「ひえええええ!? 浮遊砲台『防御』だ! ミーを守れ!」


 そして追い詰めるように魚ゾンビが十条チームの両サイドから迫る。マッドガッサーくんが毒霧を放ち、軍人くんがサブマシンガンで応戦する。何匹かはそれで迎撃できるが、その攻撃を突破して数匹の魚ゾンビが彼らに襲い掛かる。


「なんだと!? ゾンビのくせに連携して襲い掛かってきただと!?」

「ひぃ!? ウンカイさんがゾンビ化しましたぁ!」

「こっちもまずいぞ! ってサメは何処に行った!?」

「足元! 全員散って!」


 混乱する十条チームに向けて走る洋子ボク。サメが出没する地点に向かってバス停を振るい、出会いがしらに打撃を叩き込む。


 よし、決まった! 今のうちに立て直さないと。となると最善手は――!

 

「ふ、ふん! その程度ミーも予測できたさ。だが敢えて功績を譲っt――」

「後藤! キミはあそこの壇上に登ってライフル撃って! あそこからならおおよそ射線は通るはずだから!

 マッドガッサーくんは後藤の護衛! 後ろの壁から現れる時は声かけるから、その時は散会して! 氷華のマシンガンくんは遊撃で魚ゾンビを!」

「おい、ミーの部下に何勝手に命令を――」

「主軸は福子ちゃんの眷属! 三人は櫻華の僧侶ゾンビと魚ゾンビの打破を中心に動いて!」

「え? あ、えーと……」

「お前ら! そんなバス停女の言う事なんか聞いてないでミーの言う事を聞け!

 ミーを守りながらサメを攻撃だ! 魚ゾンビは迎撃しろ!」


 ヒステリックになって叫ぶ十条。


 メカニックくんと軍人くんと後藤は、そうなると十条の言う事を聞いてしまう。課金アイテムを貰った恩もあるのか、逆らいづらいようだ。


「ヨーコ先輩!」

「……ごめん、福子ちゃん。状況が悪化した」

「はい。ですが先輩のせいではありません」

「うん。とにかくあそこのルーレット台を背にして戦って。ボクは色々動き回るから、そのサポートを」


 はい、と小さく頷いたのを確認して走り出す洋子ボク


 状況が混沌としてきたが、やるべきことはチェンソーザメをどうにかすればいい。魚ゾンビの統率を取っているチェンソーザメさえ倒してしまえば、魚ゾンビは逃げ出すのだ。


 水面に出ているノコギリサメのひれ。周囲を泳ぐ魚ゾンビ。そして――生徒ゾンビ


 洋子ボクの視線の先には坊さんゾンビがいる。今は誰を襲うかを見定めているようだ。動いた相手に襲い掛かる。そんな雰囲気が見て取れた。なので――


「なので、先に動く!」

「ヨーコ先輩!?」

「福子ちゃんはサメに集中して! あとは全部どうにかするから!」


 そうだ。一番まずいパターンは、福子ちゃんに攻撃が集中する形だ。防御用に眷属を飛ばしてはいるが、それでも集中攻撃を受ければひとたまりもないだろう。


 洋子ボクなら、なんとかなる!


 殴って――くる!


 タイミングを見計らい、バス停を盾にして拳を防ぐ。ゾンビ化した影響なのか元々の筋力なのか、強い衝撃が伝わってきた。二撃目を放たれるより前に、バス停を振りかぶった。頭を潰すとばかりに真上から叩き下ろす! 悪いけど、一気に決めさせて――


「――もらお、うわぁ!?」


 気が付くと、洋子ボクの体はバス停を軸に回転していた。そのまま水面に叩きつけられる。海水が鼻から入り、咳き込んでしまう。


「げ、ほっ! これってもしかして――」

「ふはははははは。ウンカイは<マニ式格闘術>をもっているのだ!」

「近接攻撃を受け流す防御系課金アイテムじゃないか!? 先に言えよそんなこと!」


<マニ式格闘術>。手に装備する系のアイテムで、分類は盾になる。この『AoD』は格闘術とか魔法とか超能力とかそんな概念的な物も武器や防具として扱われるのだ。


 近接攻撃の身に有効な盾で、タイミングよくガードすれば確率で相手を『転倒』させるカウンターが発生するのだ。飛び道具には意味が無かったりするので実用性はあまり高くない。サメの攻撃もうまく合わせればカウンターできたんだろうけど、残念だったようで。

 

「カキン? 何を言っているのだ?

 どうあれお前に教える義理はないね! そのままミーたちの囮になれ!」

「今は協力しないとマジヤバいんだって! っていうかその浮遊砲台をもっと攻撃に回してよ!」

「断る! この砲台はミーを守る最後の砦! 迂闊に攻撃に回すわけにはいかない!」


 十条は七つある浮遊砲台全てを自分の身を守るために『防御』命令している。自分に近づいてくる魚ゾンビを迎撃しているのだ。その上で軍人くんとメカニックくん、そして後藤に身を守らせるように命令していた。


 ガチガチの防御陣形。それは鉄壁の陣形に見えるが……。


「あああああ。装備の特性が全然生かされてないぃ……」


 軍人くんのサブマシンガンは、軽量且つ連射が効く。ザコゾンビ一掃に向いているのだがそれほど遠くには届かない。一ヶ所に留まれば近よってくる相手にしか攻撃が出来ない。もっとアクティブに動き回らないと十全に強さは発揮できないのだ。


 マッドガッサーくんの毒霧は設置型の範囲殲滅型だ。群れて迫る魚ゾンビには有効だが、巨体で素早く迫るチェンソーザメとの相性は悪い。毒霧自体の攻撃力も高くないので、体力のあるボス相手だと足止めにすらならない。


 後藤のライフルは言うに及ばず。高火力長距離の特性は、常に安全なポジションを確保しながらでなければ十全に発揮できない。あんな長い銃身で誰かを守りながら撃つとかムリムリ!


 そして十条。眷属の上位版ともいえる浮遊砲台は本人を守るために回されて、機動力が死んでいた。そしてガチガチに防御を固めた課金装備なのに、さらに防御に回っている。あれだけの装備があるなら、多少力押しで突っ込んでも耐えきることはできるはずだ。


 十条パーティは強力な課金装備もあり、今は無事だが――


「くそ! ちょこまかと動き回って!」

「サメが来る! 逃げないと……あわわわ!」

「くそ、銃身が引っかかって――」

「お前らあまり動き回るな! ミーを守れぇ!」


 チェンソーザメと魚ゾンビの連携により、少しずつ傷付いていく十条パーティ。疲弊も激しく、顔色も少しずつ蒼くなっていく。


 洋子ボクも福子ちゃんも、チェンソーザメを中心に攻め立てる。だが十条パーティがサメやら魚やらに攻撃したりするお陰でなかなかタイミングが合わせられない。散発的にダメージを与えるがこれまでのような快進撃とはいかず、倒すには至らない。


「シャアアアアアアアア!」


 チェンソーザメが跳躍し、そのチェンソーのひれが軍人くんとマッドガッサーくんを切り裂く。


「ウ、オオオオオオ……!」

「ガ、アアアアアア……!」

「お前ら!? クソッタレが!」

「ひええええええええええ!? こ、こっちに来るなぁ!? ミ、ミーはゾンビになりたくないいいいいいい!」


 ゾンビ化した軍人くんとマッドガッサーくん。仲間が殺されたことでパニック状態に陥る後藤と十条。


「あちゃー……これヤバくない?」


 課金アイテム持ち生徒ゾンビ三体と、チェンソーザメと魚ゾンビ十四体。


 状況はどんどん不利になっていく――

拙作を読んでいただき、ありがとうございます。

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