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バス停・オブ・ザ・デッド ~ボクはゾンビゲームにTS転生した!  作者: どくどく
一章 犬塚洋子(ボク)はバス停使いのゾンビハンター!
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ボクと福子ちゃんの関係

 ――この時、僕は気付くべきだったのだ。


 自分の事を『男と思っていない女性』と一緒に夜を過ごすという意味を。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「大丈夫?」

「はぁい。……色々疲れたので、寝させてもらいます」


 授業の後、疲労困憊の福子ちゃんを放置もできず、洋子ボクの寮室で休ませることにした。部屋に運んだ後に事情を光華学園に連絡をして、ひと段落ついたところだ。

 

うーん、厨二ロールする余裕もない感じだ。初日に飛ばしすぎたかな?


「ベッド使っていいからね。今日はゆっくりお休み」

「はひ……。では遠慮なく……」


 うつらうつらと頭を揺らす福子ちゃんは、洋子ボクの肩を借りながらベッドに向かう。そのままベッドに腰掛けると――ドレスを脱ぎ始めた。


 大丈夫……見なければ問題ない! 目を逸らせ、ボク!


 机の上に置いてある飲み物を飲むふりをして、福子ちゃんから目を逸らす。布が擦れる音が響き、そして何かが倒れる音。よし、後は福子ちゃんに布団をかけてあげれば――


「ふぶぅ!?」


 振り向いた僕が見た光景は、正に衝撃の一言だった。


 背中の羽根を押し潰さないようにうつぶせになって眠る福子ちゃん。コウモリの羽根は折りたたまれ、布一つない背中が露わになっている。胸を隠すブラジャーはドレスと一緒に地面に落ちていた。


 ドレス――つまりスカートもだ。福子ちゃんが唯一つけている布のショーツ。レースの入った可愛い系の下着。ピンク色の布は幼さと同時に可愛さから色気に変わりつつある女性の美しさを醸し出していた。そこから伸びる太ももも、すらりとしている。


 耐えろ、ボク! ここで理性を溶かし切れば何をするかわからない! 耐えるんだ!


 精神を総動員し、必死に衝動に耐える僕。


 しかしジレンマ! 近づかなくては布団をかけてやれず、近づけば理性は蕩けそうになる。しかしこのまま放置するわけにもいかない!


 流石にこのままだと風邪を引くだろう。だから布団はかけないといけない。しかしこの状態の福子ちゃんに近づけば、その分僕の理性は崩れそうになる。


 オンナノコのカラダ。無防備なカラダ。触れると柔らかそう。っていうか柔らかかった! 服越しでああなんだから、直で触れると――だあああああああ!


 近くにあったタンスに頭をぶつけ、痛みで正気に戻る僕。よし、理性復活! 頭が痛む間に福子ちゃんに近づき、そっと掛布団をかけてやる。よし、これで問題ない。


「はふぅ……」


 どっと疲れた。そのままソファーに座り込む。照明を落とし、脱力した。


 そのまま疲労に任せて、洋子ボクは眠りにつく。近くにあったバスタオルを身体にかけて、倦怠感のままに制服を脱ぎながら睡魔に身を任せ――


 ……………………。

 …………。

 ……。


 むに。


「――むに?」


 小さな衝撃と、胸への圧迫感から目を覚ます洋子ボク


 暗闇の中、明かりを求めてスマホを探す。机の上に置いてあったスマホの画面ライトが、うっすらと洋子ボクとそして抱き着くようにして眠る福子ちゃんを照らした。


 なーんだ。福子ちゃんか。そりゃそうだよね。この部屋ボクと福子ちゃん以外誰もいないんだし……。


 …………………あれ?


「へ……」


 少し顔を傾ければ、福子ちゃんの寝顔があった。


 瞳は閉じ、髪の毛が触れそうなほどに顔が近づいている。唇からは定期的に寝息が漏れ、誘うように僅かに口が開いている。


 手は洋子ボクの首と胸に回され、抱き枕のように洋子ボクの体に密着している。太もも同士が触れあい、互いの体温と柔らかさがはっきりと伝わってくる。


 スマホの画面ライト。淡い光だからこそ福子ちゃんの姿が幻想的に見え、同時に触れている部分が現実であることをはっきりと認識させられる。


「う……あ……」


 まさに不意打ち。なにこれなにこれなにこれなにこれ!


 ああ、そうか。いったんトイレか何かに行って、そのまま寝ぼけて倒れ込んだんだね。自分の部屋じゃないからそう言う事もあるよねー。仕方ないよねー。うんうん、これはそれだけの話――


 とか現実逃避している場合じゃなーい! こんなの無理無理無理! 我慢なんてできるはずないよ!


 密着する福子ちゃんのぬくもりと肌の柔らかさは洋子ボクの肉体を刺激し、同時に僕の男性としての欲望を刺激する。


 無防備に迫るオンナノコ。それを無茶苦茶にしたいという暴力的な欲望が体中を駆け巡る。そうすればその後どうなるかなんて考える余裕もない。あるのはただ、熱くなる洋子ボクの体と、僕の肉欲。福子ちゃんがこんなにかわいいのが悪いんだからね!


 洋子ボク/僕は福子ちゃんを抱き寄せようとその華奢な腰に手を回し、


「カミラお姉様ぁ……死んじゃ、ヤですぅ……!」


 泣きじゃくる声と流れる涙。それが僕の肉欲を冷ました。


「そっか。福子ちゃんは……」


 福子ちゃんはカミラを喪った。


 カミラと言う人が、福子ちゃんの中でどれだけのウェイトを示していたか。それを僕は知らない。その仇を討つことだけを目的として、そして今なおその喪失に涙するほどなのだ。


「そうだよね」


 腰に回そうとした手を引っ込め、洋子ボクの頭を掻く。少し前までの自分を恥じながら、肩をすくめた。


 この子はまだ子供なんだ。何かにすがることで、ハンターとして戦える。その『お姉様』はもういない。ボクを『好敵手』と見ることで、どうにかなっているんだ。

 だったら今は、その支柱を演じなくちゃ。


 いずれ彼女が独り立ちし、自分で道を歩めるようになるまでは。

 

「それまでは、彼女を守らなくちゃ」


 だって洋子ボクは彼女の『好敵手』なんだから。


 洋子ボクに勝つ。それが彼女がハンターとして走れる原動力なんだから。


 まあ、それはそれとして――現状、何一つ解決していないのはどうしたものかと!


 間近で吐息を聞きながら、肩と胸に回された腕。絡みつく太もも。ショーツ以外何もつけていない状態の福子ちゃんが抱き着いているこの現状!


 り、理性が回復して気の迷いはなくなったんだけど……かといってこの状況に心が慣れたかというとそういう事ではなく!


 依然として、福子ちゃんが僕の理性を揺さぶっているのは変わらないのだ。


 相手は中学二年生。手を出せば犯罪。同性だからと言って許されるモノではないのだ。だからここは耐えるのが紳士。いや、洋子ボクはオンナノコだから手を出さないのが普通! そう、女子同士のふれあいなんだよこれは!


『でもでも? この世界はゲーム世界なんだから現実の法律を持ちだすのは間違ってない?』


 僕の心の中の悪魔が囁く。た、確かに!?


『いえいえ。彼女を守ろうと誓ったのでしょう。ならば耐えるのが吉かと。欲望退散』


 僕の心の天使が囁く。うん、そうだとも!


『彼女が慕ってるのは明白だろう。だったら年上としてすこーし火遊びしても罪じゃないぜ』

『その結果、彼女の今後に歪みが生じるかもしれません』

『そん時はそん時さ。失敗を恐れちゃ、何もできないぜ』

『失敗に彼女を巻き込むことを許してはおけません』


 うーわー。天使と悪魔がぐるぐるぐるぐるー。


 スマホの画面ライトが消え、部屋が暗闇に包まれる。


 五感の一つが閉ざされたことで、逆に触感が増したような気がする。触れ合った部分が強く感じ取れた。


(さんてんいちよんいちごぉきゅうにぃろくごぉさんごぉはちきゅうななきゅうさんにぃさんはちよんろく――)


 僕はと言うと、必死に円周率を心の中で朗読して気を紛らせていた。


「あ。おはようございます……私、どうしてこんな所で寝てるんでしょうか?」

「おはよう……うん、どうしてだろうね」


 気が付くと、朝になっていた。福子ちゃんは何も気にする様子もなく洋子ボクから離れていく。


「おお……。これが人類の朝日……。僕は僕に勝ったぞぉ……」


 窓から差し込む朝日を見ながら、僕は眠気に抗うことなく意識を失った。


拙作を読んでいただき、ありがとうございます。

気にいっていただけたのなら、評価をいただければ幸いです。


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