約束
楽しい2時間ほどが過ぎ、パーティは終了した。
徒歩2分ほどの所にある有楽町線の麹町駅から帰る人たちと別れ、浩司と郁美と遥の3人は7~8分ほど離れたJR四ツ谷駅へ向かった。
「楽しかったね。 遥、やっぱり来て良かったでしょ?」
「郁美の言うとおり、とても楽しかった。」
「浩司君は?」
「勿論、楽しかったよ。それに、郁美や遥さんともいろいろ話せたし。
また、会える? 君たちと。」
「そうね。そのうちにね。」
「そのうちって、何時だよ。
僕はもうすぐ卒業だから、来年の2月位からは学校へ行かなくなるし、出来るだけ早いうちにチャンスを作ってくれよ。」
「そうか。 でも、一月はみんな忙しいわよね。
遥はお正月は、家へ帰るんでしょ?」
「その積り。」
「遥さんの自宅って何処?」
「下関よ。」
「え? 下関? ずいぶん遠い所なんだね。」
「そんなに遠くはないわよ。新幹線だったら4時間半くらいだし、寝台特急だったら、今晩東京を出発すれば、明日の朝にはもう着いているわ。」
「飛行機じゃいけないの?」
「行けるわよ。エアラインを利用する人も結構多いみたい。
でもね、空港が宇部か北九州なので、空港から後が少し面倒なの。
それで、私はいつも新幹線か寝台列車にしているの。」
「そうだわ、遥のお誕生日って、たしか2月2日だったわよね。
郁美が言う。
「ええ。」
「それでは、2月2日に遥のお誕生日祝いをしましょうよ。」
「あ、良いね。それ。 僕も絶対、仲間に入れてね。」すかさず、浩司が言う。
「今日のパーティみたいにゴージャスには出来ないと思うけれど、私たちなりに思いっきり楽しい集まりにしましょうよ。」
「賛成! 僕はもうすぐ就職だから、会費は2倍くらい出せると思うよ。」
「まあ、私達だけのパーティだから、山海の珍味を揃えて、なんてわけにはいかないけれど、一点豪華主義でやりましょうよ。
と、なると、やっぱり、シャンパンは欲しいわね。
今日のシャンパン美味しかったものね。」
「よし! 僕にまかせてよ。 シャンパン。 僕が持って行くから。」
勢いよく浩司が言う。
「え? ホントに? 大丈夫なの?」
「モチロン!」
「うん。それなら、と。 シャンパンだけはドンペリニオンにしない? 今日と同じに。
でも、浩司君、ホントに大丈夫かな?」
「まかせてよ。
遥さんの誕生日祝いだったら、逆立ちしたって、もって行きますよ。
そのドンペリニオンとかいう奴。」
「ただのドンペリじゃないのよ。ロゼよ! ロゼ!」
「分かってますよ。 ロゼでしょう。 ロゼ! ロバじゃなくて、ロゼ。」
「いやだ。浩司君ったら。間違っても、ロバなんか連れてこないでくださいよ。」
四ツ谷駅はもう目の前だった。 3人は2月2日の再会を約して別れた。