42.フラノの地を豊かにしよう~最強生物と出会う2
「皇帝陛下の御成り~!!」
現れたのはさっき一緒に居たドラゴンだった。
煌びやかなドレスと黄金の装飾品で着飾っている。
シーア帝国、ドラゴンが支配中。
しかも、それを知っているのはおれだけのようだ。
シーア人たちは何も知らず、ドラゴンの女帝に従っている。
と言っても暇を持て余したドラゴンがシーア帝国に入り込んで人の真似事を始めたのは今に始まったことじゃない。
彼女はこの国の有力者に成りすまし、数百年もの間この国で暮らして来た。
しかし戦争中の流行病で前王朝の有力者が次々と死に、ついには皇帝も崩御した。
皇位継承権をかけた争いが激化し、血みどろの内乱が起きた。
見かねたドラゴンが前王朝を廃し、カサドラルとの講和をまとめたことで皇帝となったらしい。
おれは皇帝の恩人として歓待を受けた。
「薬、よく効いたぞ。礼を言う」
どうやらそのようだ。
さっきからお嬢ちゃんがおれに体当たりしてくる。
「わわぁ! 礼を言う!!! あははは!!!」
元気いっぱいだ。
フォースフィールドで何度フッ飛ばしても遊んでいると思っているのか。
普通の人間なら大怪我では済まないぞ。
「すまんなぁ。じゃれ付いているだけなのじゃ。遊び相手になれるもの珍しくてうれしいらしい」
「きゃきゃ! キョウ好きー!!」
兵士たちも見て見ぬ振り。
お転婆ってレベルじゃない。
この子の無垢なじゃれ付きの破壊力を知っているのだろう。
完全にビビってる。
「褒美をやろう。何がいい? 金か? 女か?」
本当はレアアイテムとかが欲しかった。
だが、彼女は数百年、ある時は大商人、ある時は宮廷術師、ある時は皇帝の側室になるなど、名前と素性を変え、この国の変遷を間近で見てきた。
おれはドラゴンの知恵をもらうことにした。
「獣人の国の建国、可能だと思います?」
「ほう‥‥‥」
ドラゴン女帝は他の者たちを下がらせ、詳しい話を聞いてくれた。
「只人のお主からなぜその質問が出るのかは置いておいて‥‥‥妾に知恵を求めるとはただの好奇心ではあるまい」
フラノの場所はぼかし、あくまで獣人が主権国家を成す可能性について考えを伺った。
他国の有力者の後ろ盾があり、魔力障壁があり、
「ま~無理じゃの!」
「やっぱり~?」
理由はいくつもあった。
「獣人が徒党を組めば只人が許さぬだろうよ」
「獣人が利益を生むとしてもですか?」
「それこそ無理じゃ。獣人は少数の部族をまとめることはできても都市、国の規模では政治も産業も制御できん」
そう、一番の問題。
「獣人の国、それが成ったとして、王は誰じゃ? シーア人か? カサドラル人か? アルタ人? それが獣人の国と言えるか?」
王たる者がいないこと。
誰もが認める獣人の王という者がいない。
治める能力を持つ者がいない。
「少なくともこの国の獣人は奴隷労働者か、犯罪者、それか闘技者しかおらん」
「闘技者って?」
「見世物で戦う者たち。奴らも奴隷じゃな」
シーア帝国のエンタメと言ったらこの闘技という見世物だ。
ルール無用。
残虐な素手によるファイト。
賭け試合だ。
闘技者は奴隷が多く、荒くれ者だ。
「そんな奴らが徒党を組めば、反乱だとして軍がでる、というか妾が出すよ」
獣人の国が完全に否定された。
フラノでさえ森と村で分かれているのだ。
それを一つにまとめるなど途方も無い。
「昔はな‥‥‥獣人にも骨のある奴がいた。偉大なものが。だが、今や獣人の血は只人と同化して薄れた」
ヴァクネーン村長と他の獣人が違うのも同じ。
只人と同化し、野性味が失われたのだろう。
村長は一見野性味はすごいが、大人しい。バルトの言いなりだ。
「ああ、いや。一人いたな」
「え?」
「屈強にして、賢く、気高き戦士。太古のままの姿を保ち、全獣人はおろか、全シーア人が羨望の眼差しを向ける、最強の男が」
女帝はにやりと笑った。
「お主にチャンピオンを紹介しようぞ」




