40.フラノの地を豊かにしよう~シーア帝国へお散歩してみた2
荒野の一画にある拠点。
岩場の陰に粗末な小屋がいくつか立ち並んでいた。
各々が物資を持ち寄り、まとまって動くらしい。冒険者は助け合い。
この‶果ての荒れ野〟には作物が育たないが、珍しい植物、鉱石、魔獣がいて遠征に出る危険はあるものの金になるのだという。
「これが冒険者か」
ボロい小屋で、酒と肉をカッ喰らう。
食べているのはさっきのデカトカゲだ。
豪快に焼いたトカゲ肉は意外に脂がのっていてジューシーだった。
何となく物価も教わった。
あのトカゲ一匹の肉や革、骨から眼玉なんでも金になる。
肉は食料。
皮は鎧。
骨や血、目玉は薬にされる。
一匹で大体、20万ルコン。
これだけあれば一月ラクラク暮らせるという。
だが当然ハイリスクだ。
荒野の戦士団のメンバーは全員結構な怪我を負っていた。痛そうだった。
全力で走っている時アスファルトの上で転んだ時ぐらいすりむいている。
まるで皮膚をおろし金にかけた時のようだ。
痛々しい。
「ねぇ、キズグスリあるからよかったら使って」
「おう、いいのか?」
どうせ薄めた方のやつだ。
大した騒ぎにもなるまい。
そう思っていた。
トカゲ肉に舌鼓を打ちつつ、そろそろ飽きてきたと思ったときだった。
「おい、ちょっと来い!!」
「クルリちゃん、そんな言葉遣いはしたないわよ」
「いいから来い!!」
クルリちゃんに告白されるのだと思った。
荒野の戦士団が怖い形相でこちらを睨んでいた。
「見ろ」
さっきまでズタズタになっていた皮膚が完治していた。
ちゃんと治ってる。
「よかったね。一々言わなくていいよ」
「お前、こんなもん寄越しやがって!!!」
「使っちまったじゃねぇか!!」
彼らからすると霊薬を薄めて作ったキズグスリもかなり高価なものらしい。
「値段も言わずに渡されたとはいえ、こんなもんをタダで使っちまっては後々怖いからな。金は払う」
「はぁ、それはどうも」
ウルタが大量の金貨の入った革袋をこっちに寄越した。
ざっと計算して200万ルコンはある。
あの薄めて作ったキズグスリが一本で200万ルコンだ。
マズイことをしたとすぐに悟った。
「それとは別に荒れ野の悪魔の討伐報酬ももちろん分配する。命を救われたしな」
「討伐報酬はいいよ。その代わり、このことは秘密にしてもらえます?」
戦士団は詳しく聞かず了承した。
悪くない取引だしね。
「薬のことは秘密にするわ。でもあんた、何者?」
さすが、術師は偏差値が高いようでおれのことを怪しく思ったようだ。
おれは冒険者ではなく、荒野をさすらう風来坊だと説明した。
他にどう説明する?
「詳しく説明してもいいけどお金とるよ」
「じゃあ聞かない。まぁ悪人ってわけじゃなさそうだし。それより、その薬まだあるなら売ってよ。秘密は護るから」
薬が貴重なのはよく効く薬が主に西の大国アルタから輸入しているから。
ここからだと大陸の端から端で遠く離れている。
ちなみに治癒魔法とかもあるらしいが、その技術なんかもアルタの秘術なのだという。
「じゃあ、一本300万ルコンで」
「なんで値上がりするのよ!!!」
「売る前提で持ってなかったから。ああ、情報とかで値下げしてもいいよ」
クルリは魔法が使える。
魔法についていろいろ教わった。
「ホントに非常識だな。キョウシロウは。術師に魔法に付いて説明させるなんて」
魔法は術師にとって秘術で、一般人には伝えるものでは無いらしい。
でも基本を教えてもらった。
「私が使えるのは基礎的なエーテル魔法と土属性魔法」
「エーテル魔法って?」
「エーテルそのものを使った魔法」
「エーテルって?」
「本気で、聞いているんだよね?」
バカを見る目で見られた。
まったく嫌になっちゃう。
おれは初心者なんだよ?
魔法使いの常識で話さないでよね。
「人は生来魔力を有している。魔力は魂から創出されると信じられている。それが万物の持つエーテルという物質と交わることで魔法という現象を引き起こす」
要するに魔力は接続ケーブル。
魂からの命令が魔力を伝いエーテルを動かす。
その結果が魔法。
これはスキルも同じだ。
おれは魔力を込めて『転移』を発動させるが、その際、エーテルという未知の物質との反応なんて考えていなかった。
エーテルについておれはクルリにいろいろ質問した。
「なんでそんなに聞きたいのよ。あんただって使ってたじゃない」
「え?」
「あの強力な魔力障壁よ」
おれのフォースフィールドはエーテルの力だったようだ。
「逆に聞きたいぐらいよ。普通の魔力障壁であんなことできないわ。魔導具があるわけでもないのに」
「ふぅ~ん。教えてもいいけどお金とるよ」
「ねぇ、あんたのこともっと教えてよ。お金は無いけど一晩付き合ってあげていいからさ」
そう言ってクルリは上目づかいで引っ付いて来た。
冒険者の貞操観念はかなり低いようだ。
「ぼ、ぼくもう帰らなくちゃ! お母さんが心配しているから!」
「は?」
おれは適当にはぐらかしてその日は帰った。




