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36.全てのモブ顔男子に捧ぐ

 

 おれは軽く拳を突き出し、ステップを踏む。


 素早いパンチと軽いフットワークを見せつける。


「さぁ、おれのスピードについて来られるかな?」

「その程度で私に挑むとは‥‥‥」


 この時点で奴はおれの術中にはまっている。

『転移』は移動のスキルだ。

 種が分かると対策される。


 おれのスキルは知られていない方が効果が倍増できる。

 だから、おれの攻撃はスキルではなく、武技だと思わせることにした。

 訓練でみんなの動きを見たから、偽装は簡単だ。



 森の長が村長を確認する。


 村長は頷いた。


「いいだろう。身の程知らずの愚か者。私、森の長たるゲンツゥアが――」

「お待ちを父上!!」


 おれとゲンツゥアに割り込むように青年が立ち塞がった。



「この者は私にお任せください」

「グレイ、私の獲物だ」

「このような粗忽者、父上が相手をするまでも無いでしょう」

「そうだな。いいだろう」



 森の長の息子か。

 ルーデと同じく槍使いのようだ。


 おれにとっては好都合。

 戦い慣れている。



 それに、こいつはおれの敵だ。



「おれはお前を許さない」

「は? 何を言っている只人。長に挑戦するなどおこがま――」

「ちがぁう!!! お前は、おれの敵だ!! 絶対に許さないぞ!!!」



 首を傾げるグレイ。


 心当たりがないってか?



「おれは怒ったぞぉぉ!!」



 変身しそうなほどの激昂したおれを見て、グレイはフッと笑った。


 笑った。

 ねぇ、こいつ今笑ったよね?


 なにが可笑しいの?




 イケメンがそんなに偉いのか!!!




 グレイは構えたが、転移でおれを見失った。



「何!?」

「うらぁ!!!」


 攻撃に反応して避けられた。

 グレイはすぐに素早く移動した。



 だが、『転移・闇討ち』で背後に回った。



「はっ!?」

「かっ飛べ!!」



 フォースフィールドを纏って体当たりした。

 バシリとはじける音がしてグレイは吹っ飛んだ。


 ガードされたか。


 ちぃ、顔を狙ったのによ。



「ぐっ、何だ!?」

「うぉぉぉ!!! 死ねぇ!!!」



 体勢を立て直させない。

 転移で接近し、フォースフォールド纏って攻撃。

 接触するだけで弾き飛ばす。


 顔を狙っているのに、グレイは辛うじてガードする。


 そんなに顔が大事か?


 ならがんばって護るんだな!!



 グレイは槍を振るうが、そんなものは当たらない。

 ルーデの槍術スキルに比べれば大したことは無い。



「バカな、グレイが手も足も出ないだと!」

「きゃあ~グレイ様!!」



 女の悲鳴が聞こえた。

 おれの怒りはさらに抑えようも無く上がった。


 フォースフォールドで槍を受け止めた。身体を覆ったフォースフィールドはただの槍の攻

 撃など通さない。


「バカな! こんな体技があるわけが‥‥‥」



 絶望しているようだな。

 だが、恐怖はここからだ。


 槍を掴み投げるふりをして『転移・天地逆転』で地面に叩きつけた。



「ぐぁ!?」



 無様だな。


 さらに、追い打ちのパンチ、に見せかけて『転移・榴弾』!!



 グレイは腕でガードしている。


 これが武技か。


 だが、そんなものは関係ない!!



「その整ったお顔、おれたちモブ顔以下にまで落としてくれるわ!!!」

「ひ、ひぃ!!」

「誰がモブ顔だ!!! バカにしやがって!」

「い、言ってな――」



 気が付くとおれはバルトたちに止められていた。


 まるでこの世のモブ顔男子たちの怨念がおれを突き動かしたかのようだった。

 だがこの世にイケメンがいる限り、何度でもおれは立ち向かうだろう。

 この世でモブ顔たちが搾取される限り、おれは戦い続ける。


 全てのイケメンを駆逐するために。



「キョウシロウ、なんで」

「イケメンはその存在自体が罪だ。ただ存在するだけで不当におれたちモブ顔から出会いを奪っていく。これはおれだけの問題じゃない。全人類の問題だ。おれ、報われないこの世のモブ顔たちの代表として戦った。」

「キョウシロウ、グレイは女の子だよ」

「ぼく、薬持ってるの。使って! ひどい、一体誰がこんなことを!!」

「キョウシロウ‥‥‥怖いな」



 おれは意識を失っていたグレイに無理やり霊薬を飲ませた。



「がはっ、ゲホッ、何だ、私に何を飲ませた‥‥‥! あ、あれ?」



 グレイの傷は跡形も無くきれいに治った。


 なるほど、こうして見ると確かに女の子だ。

 髪が短いし、背が高いし、胸当てとか装備で体格もただ細身なのかと思った。


 美男子かと思ったら美少女だったのか。



「お、おお!! まさかそれは、古の秘薬か?」

「そんな貴重なものをどうして‥‥‥」



 獣人たちが困惑している。



「女の子が傷ついているのを見過ごせない性質なんで」

「お、お前‥‥‥」


 グレイが驚いた顔を見せた。


「いや、グレイ。やったのそいつ――」

「そいつ、お嬢のこと男――」


 獣人が二人消えた。


 やだ、森って怖いわ。



「全く、情けない」

「父上!」



 ゲンツゥアが近寄って来た。



「申し訳ありません。不覚を」

「森の獣人を代表して負けたのだ。その意味が分かるな?」

「はい」



 ゲンツゥアがおれを見下ろした。

 なんだやるのか?

 シュシュ!


「見事だった。フラノ一を名乗るだけはある」

「名乗ってませんが」

「勝者たる貴殿には、グレイをやろう。好きにするがいい」

「は?」



 グレイがおれに跪いた。



「キョウシロウ様、強きお方よ。今から私はあなた様の忠実な僕」



 なにこの展開!?


 森の獣人たちも当たり前のようにしている。

 これが彼らの常識なのか。



 でも‥‥‥



「結構でーす」



 グレイは口を開けたまま茫然としていた。




 だって僕とか重いし。


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