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33.この運命はゴリラの計画

 村長ヴァクーネンとウィズ。

 それに彼らの家の使用人たち。


 それとおれ。



 舘に住むのは総勢10人。


 聞いてない。



「ごめんね。私はどうせ狩りで家を空ける時間が長いから、ちょくちょく顔を出そうと思っただけなんだけど‥‥‥」


 長い沈黙の後、だだっ広い個室でウィズが重い口を開いた。





 事の発端は建設途中の館を見たウィズが放った一言だったらしい。



『うちより大きいんだな』



 ルンガルシフたちはおれ以外の奴らの要望・願望を詰め込んだ。

 結果、この村で一番立派な屋敷にしてしまったことの問題に後で気が付いた。



 旅人がこの舘に滞在したら、舘の主であるおれが村長だと勘違いするだろう。



 急遽、おれの家として建設されたものは村長のお屋敷となった。



「で、でも逆に良かったよ。この舘の掃除だけでキョウシロウの一生が終わってたところだ。うちから人手が来るから、キョウシロウはお水だけお願いするね」


 眼を合わせないウィズ。


 確かにそうなんだが。

 釈然としない。



 この件に関してウィズは少なくとも一つウソを付いている。


 上手く隠しているが、おれの力で水のインフラ問題を解決する話、魔力障壁をこの舘に設置する案はおそらく、彼女のものだ。



 なぜなら、ガドガやルンガルシフ、アンブロシスを口止めできる者は限られるからだ。



 そしておれがこの村からいなくなることを危惧していた人物。


 ウィズしかいない。



「犯人はこの中に居るお前だぁぁぁ!!」

「えぇ~! なんのことでしょう?」



 ウソを付き慣れていないからすぐにわかる。

 しっぽがビクゥと反応しているぞ。

 眼もめっちゃ泳いでる。

 顔も紅いし。


「ち、ちがうんだ! 私はこんな大きな屋敷になるなんて思わなかったんだ! ただキョウシロウが住むだけで村のみんなが感謝を忘れないよう、魔力障壁番にしてしまおうと思って」


 責任重大じゃないか。

 やっぱりな。

 おれをここにつなぎとめる策か。

 

 おれを必要としてくれるのはうれしいが、ウィズがこんな回りくどいマネをするなんて意外だ。



「本当にそれだけ?」

「うっ‥‥‥いや、魔力障壁を設置するなら冷却に川沿いが良いというアンブロシスの意見もあったが、キョウシロウがスキルで水を呼び出せるからと意見しただけなんだ。そうしたら冷却後の水が湯になるからとルンガルシフが大量の湯を使った浴場を造ると言い出して‥‥‥ルンガルシフの要望が入るならとアンブロシスが錬金と薬草の実験室をと言い出して、それを聞いた他の者も次々と自分の要望を‥‥‥」


 シュンとするウィズ。

 嘘ではないらしい。



 つまり、舘が大きくなり村長たちが引っ越してくることになったのはウィズの謀ではない。

 たまたまか?


 いや‥‥‥



「迎賓館にすると言ったのは誰だっけ?」

「え? 知らない‥‥‥」


 きょとんとするウィズ。

 本当に知らないらしい。



 ガドガが言っていた。


『――おれら、自由にできる木材が大量にできて舞い上がってしまって。そうしたらバルト君が、ここを来客があったときの迎賓館も兼ねた建物にしたいって』



 奴がおれの家を迎賓館にすると言ったのはウィズが提案をした後か? 前か?


 いや、ウィズの後だったとしても奴がおれの家を迎賓館に仕立てようと計画したのはいつだ?


 本当に思い付きだろうか?

 何か引っかかる。


「ウィズ、おれがスキルで水問題を解決できるって、どうしてわかったの?」

「え? すまない、秘密だったのか? 誰かに聞いたような気が‥‥‥え~っと、カーシャかな」



 考えすぎか。



「あれ? カーシャがなんでキョウシロウの話をしていたんだろう?」

「何かおかしい?」

「カーシャはバルト以外の男の話は基本しない」



 おっと?



「そう言えば魔力障壁をどこに設置したらいいかとか、普段あまりしない話も突然してきたような‥‥‥」

「ウィズ‥‥‥」

「そうだ聞いてくれ。キョウシロウがいなくなるかもと言っていたのもカーシャなんだ。あの人が不安を煽るからこの前は変な態度を‥‥‥」



 この子、いいように操られている。


 カーシャの興味はバルトにしかない。

 そのカーシャがおれの話をウィズにした。

 カーシャがおれ一緒にいたのは一日だけ。


 おれのことを詳しく知っていて、カーシャにそれを伝えて協力させられて、こんな無慈悲な計画を立てておれを嵌めそうな性格が悪いゴリラ。



 バルトしかいない。



「ウィズ、これは老婆心で言うんだけど」

「私の方が年上だぞ」

「友達は選んだ方がいい」

「カーシャは叔母だ」


 村長の妹だったのか。


「叔母は選んだ方がいい」

「無理を言うなよ」



 小さなコミュニティーというのはいいものだが、逆に恐ろしくもある。


 些細な情報も大きく影響するのだ。


 そうか。

 おれがバルトの言うことを聞かなくなった。


 だからバルト→カーシャ→ウィズのホットラインを造った。





 いや、最終的に奴が操っているのは、おれ!?


 奴はおれを追い出し、まんまと村長家族の元へおれを送り込んだ。

 気ままな一人暮らしも穏やかな日常生活も送らせてくれる気は無いらしい。



 つまりウィズが一緒に住むことになったのは彼女自身も想定外。



「キョウシロウ、まだ怒ってる?」


 おれ自身、嵌められたことに対して怒りを覚えるが、ウィズが一緒だとそこまで怒ろうという気になれない。


 おそらく、ここまでが奴の術中!!



 何て恐ろしい奴なんだ‥‥‥



 これ以上奴に弄ばれてたまるかよ!!



「キョウシロウ? やっぱり一緒に住むのは嫌か?」

「全然!」

「そうか、良かったー。お詫びも兼ねて、私が腕によりをかけてごちそうするからな!」

「わーい楽しみぃ~!」



 あれ?


 何か、問題があった気がするけど、なんだっけ?


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