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16.宴の席で~ドワーフとオークの職人

 

 宴は村の中央広場で行われた。


 おれは村長を救った恩人として紹介され、この村に住むことが発表された。



 おい、聞いてないぞ。


 バルトが言いかけた『ついで』ってこのことか。




 村人たちの反応はまちまちで歓迎してくれるものと怪しんでいるもの、無関心なものそれぞれだ。


 住人は獣人が7割、只人が2割、あと獣人でも只人でもない者を数人見かけた。


 村人同士は種族が違ってもみんな仲がいいようだ。


 さぁ、お待ちかねの食事だ。


「おお~」


 おれは舐めていた。

 異世界の文化というものを!


 獣人というからには肉を焼いたものがほとんどだと思っていた。

 予想に反し、出された食事は工夫を凝らし、穀物と野菜を使ったものがたくさんあった。

 スープに、パイ、多種多様なソースで様々な味付けで加工、調理された肉料理。

 生前からカップ麺とレトルトカレーが主食だったおれにはどうやって作っているのか全く分からないがなんというか手間暇をかけた感じだ。


 舌が塩以外の味付けを知覚している。

 身体が震え、自然と涙が流れた。


 おれに話を聞きに来る者もいたが、バルトが代わりに応えてくれた。


「だから大丈夫だ、おれがステータスも確認した。こいつは嘘は言ってない。何か問題があればおれが責任を取る」

「あ、ああバルトさんがそう言うなら」


 バルトはみんなに一目置かれているようだな。

 村長と傭兵をしていたと言っていたが、それだけじゃない。

 頭がいいからか。


 食事を堪能しながら小耳に挟んだところ、バルトは交易事業の中心人物で、只人との交渉に欠かせない人物なのだという。

 ここは村と言ってもかなり文明的だがどこにも文字が無い。

 村人の多くは只人の言葉はあまりしゃべれないようだ。


 村人たちは飲んで騒いで村長の回復を喜んでいたが、バルトの指示があると即座に他の者と交代していた。

 村の警備だろう。

 ここはキチンと護られている。


 ああ、そうか。

 食べていていいんだ。

 森の中では何か変な音が家の外からしたら大騒ぎだった。


「ふぅ‥‥‥」


 やっぱり、おれはここに居たい。

 安心したい。


 魔王を倒して成り上がろうとかそんなのどうでもいい。


 やっぱり平和が一番。


「キョウシロウ、そろそろいいだろう。少しはあいさつしろ。お前の生活に関係ある人たちだ」

「ふん、いいだろう」

「なんだこの偉そうなガキは?」

「すいません」


 紹介されたのは村の工房に属する、職人たち。

 要するにおれの家を造ってくれる人たちだった。

 獣人と只人もいるがすごいデカい怪物と、すごい小さい髭おっさんに目がいった。


「ひょぇ~」


 デカい怪物を見上げた。

 怖すぎて思わず声が出た。


「オークを見るのは初めてかい? ガドガだ。土建業を担っている。よろしくね」

「あ、どうも」


 オークって、魔物じゃねーんだ!

 いや話してみると優し気だが灰色の肌に牙‥‥‥化け物じゃん。

 森で遭遇したら『転移・闇討ち』で速攻倒してるぞ。


「ふん、下手に出るんでないわい。よそもんがバルトに取り入ったんじゃ。こいつぁは厄介事をおこすぞ」

「まぁまぁ、ルンガルシフ、まだ子供じゃあないか」

「フン、只人はこの年頃から狡猾であくどくなるんじゃ!! 何か企んどるに決まってる」


 ルンガルシフっていうのか。見た感じドワーフだ。


「ああ、すいませんすいません!! ルンガルシフ様のお気を悪くしてすいません!!!」

「お、おおう、なんじゃ‥‥‥?」

「ああ、大変だ!!! どうやらぼくはルンガルシフ様に嫌われてしまったようです、一体どうすれば償えるんでしょうか!?」

「や、やめろ! なんじゃ突然!!」

「そんなぁ、どうかもう一度チャンスを下さい!! 何卒御慈悲を~!!」


 おれは跪いてすがり付いた。

 周囲の視線が集まりルンガルシフが慌てふためいた。

 新参者をイジメるおっさんの図。


「いや、ワシは別に‥‥‥おい、立て、なんで地べたにうずくまるんじゃ!! わわ悪かった!!」


 どぉぉうだぁ?

 人の多いところでいびって来た相手にビビるぐらい謝る。

 こうすることで社会的ダメージを相手に与えることができるのだ。


 おれはこの技で陰湿を極める日本のスクールライフを何度もサバイブしてきたのだ!!


 羞恥心を捨てた者のみが辿り着く境地。みんなはマネしないでね。


「ハァ、やめろキョウシロウ。ルンガルシフさん、悪いな。コイツは森から出てきてちょっと不安定なんだ。気にしないでくれ」

「む、そ、それを先に言わんか」


 バルトに睨まれた。

 おっと、バレてる‥‥‥


「キョウシロウ、お前、木材の調達は自分でできると言っていたがどれぐらいで出来るんだ?」

「ああ、明日にでも揃うと思うよ」

「何ぃ、本当か!?」


 職人たちが驚いていた。


「おれが住んでいた森の木でいいんだよね?」

「ああ、問題ない。だがあんな遠い森の木々をどうやって運んでくるんだ?」

「そこはおれのスキルの出番だ」

「そうか。いまは木材が手に入りにくいからなぁ。助かるよ」

「フン、大口を叩いて後で出来ませんでしたと泣きついて来ても知らんぞ」

「そ、そんなぁ、ひどいですよ!!」

「それやめんか!!」


 夜もだいぶ深まり、明日に備えて帰って寝ようと思ってふと思い出した。

 ここに来たそもそもの目的。


「そうだ、ウィズ!」

「おい、どこに行く」

「ちょっとお花摘み!」


 おれはバルトの呼びかけを適当に流し、辺りを見渡し、ウィズを発見した。


「おーいウィズ」

「ん? キョウシロウか」


 彼女はおれに気が付いてにっこりと微笑みかけた。

 微笑みがおれのハートを貫いた。


 あれ?

 おれは何を話そうとしたんだっけ?


「料理はどうだった? 私も少し手伝ったんだ」


 少し照れながら彼女はそう言った。

 かわいい。

 お料理できるの、すごい!


「料理美味かった。ありがとう」


 おれは手を差し出した。

 ウィズは首を傾げた。


「フフ、キョウシロウ。前も思ったがその手は何か意味があるのか?」

「え? なにってありがとうございましたってあいさつだけど」


 あ、握手の文化が無いのか?


 くそ、無理ゲーですわ。

 夜も深まって参りました。

 このまま強引に触ろうとしたらさすがにマズい。

 痴漢扱いされて社会的に死ぬ。

 詰んだ。

 撤退、撤退でござる。


「そ、そっかぁ、こっちではこういうあいさつないんだぁ‥‥‥」


 あきらめよう。


「ああ、無いけれど。これでいいのか?」


 はぉぉぉぉ。


 女子に手を握られた。

 女子から手を握られた!!

 ウィズ、なんていい子なんだ!!


 爪が刺さってるけどね!!


「こちらこそ、父を救えたのはキョウシロウのおかげ。これから同じ村の一員としてよろしく頼む!!」

「お、うん。こちらこそ!!」


 よし、今だ!!


「ん? どうした、キョウシロウ?」


 おれの手には、霊薬の瓶が現れた。



 えぇ~!!!

 ウソォ~!!

 本当にできちゃったよ!!!


 半分ただの悪乗りだったのに。



 確定だ。



 ウィズと手を握ると、物体を引き寄せることができる!!!



 なんで?


「おお、相変わらずすごいスキルだな」

「ウィズ、これ御礼にあげる」

「え、何の? え、これって‥‥‥ちょっと待て、まさか……!」


 ウィズが大きな切れ長の目を見開いちゃってかわいかった。

 茫然としている彼女を置いて、おれはバルトの家に戻り、スキルの考察を始めた。



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