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13.居候

 

 眼が覚めて、何とも言えない気持ちになる。


 悪くないものだ。


 部屋の外から人々の営み、歩く音、話し声、笑い声が聞こえる。


 もう昼頃だろうか。


 日差しと心地よい風が楽しげな声を運ぶ。



 きっとこの村の村長は回復したのだろう。



 おれは約束を果たし、この村に暮らす。

 まだ不安もあるが、人の中で生きられる。これがどれだけ素晴らしいことか。




 おれはしばらくこのありがたみを噛みしめ、感じ入っていた。


「よう、感慨にふけるのもいいがちょっといいか?」

「ケェェアアアア!!」

「おう、驚かせたか」


 なぜおっさんがいるんだよ。


「お前が起きないから様子を見てたんだが」

「そうすか」


 普通こういう時は、ウィズじゃない?

 起き抜けにゴリラみたいなおっさんを見るこっちの身にもなってくれよ。


「まず、礼を言う。お前のおかげで村長は回復した」

「そうすか」

「約束通り、それなりの家を用意することになった。それまではおれの家の部屋が余ってたから提供したんだが」

「そうすか。ども」

「隠す気も無いぐらい不服そうな顔だな。言っとくがウィズは村長のところだ。回復したと言ってもまだ油断できないんだ。よそ者がいては気が休まらんだろう」


 ふむ。


 コイツ、確かバルトとか言ったか。

 最初はゴリラかと思ったが人間‥‥‥いや、ここでは只人という人種になるのか。

 獣人に交じって違和感なく行動できていた。

 アメリカさんの特殊部隊とかSWATみたいなタフガイだ。

 昨日の行軍で分かったがレベルで基礎能力が上昇しても肉体が鍛えられるわけじゃない。

 力を生かすには普通に鍛えた方がいいみたいだな。


「話の流れで言わなかったがよ」

「はい?」

「ここで暮らすなら確かめておくことがある。お前はあの森に住み、荒らし喰いを一人で倒したし、森からここまで付いて来られた。肉のついてない体でその体力、それなりのレベルだろう。それに優れたスキルがあると見た」


 レベルとスキルについて尋ねるとは。

 この世界でレベルとスキルは生死に関わる重要情報だ。


「おれがそれを話すと思うか?」

「そうじゃない。最後まで聞け。ここは只人の村じゃないんだ。求められるのは強さだ。それも個の強さではなく結束の力だ。お前のように軟弱な身体だとここの生活はかなりツライものになる」


 要するに、忠告か。

 大げさな。

 おれは森で一人で生きられたんだ。それに比べればここは天国だ。


「知っていると思うがこのフラノの地はカサドラル王国とシーア帝国の境にある、いわば緩衝地帯だ」


 ふむ、知識チートで初めから知っているかのように思い出せる。

 北にあるカサドラル王国とシーア帝国を分けるこの辺りはどこにも属さない辺境地のようだ。


「おれたちはこの魔獣が多い土地で狩りをし、時には魔獣退治のための傭兵となって金を稼ぐ。そうしないと冬を乗り切れない時があるからな。だから村の男は狩りをするし、訓練をする」

「え?」

「お前も例外じゃない。むしろこの狩りや訓練に参加できなければ獣人には認められない。荒らし喰を倒したことで期待されているし、彼ら獣人にとって狩りの仕方や戦いの方法を教えるのは仲間と認めるという意味合いもある」


 だんだん話の流れが見えてきたぞ。

 彼、バルトと言ったっけ?

 バルトは親切心でおれの淡い幻想、白昼夢を打ち消してくれた。


 ここは異世界。おれの常識で話は進まない。

 村長を助けた恩人として悠々自適に暮らせると思っていた。

 彼らにとって恩人にするのは、ハードなトレーニングと実戦の機会を与えること。


 とんでもない!


 昨日の行軍だってヤバかった。

 獣人の移動速度は只人とは違うんだ。


「あの、おれにはスキルがあるんで、別に‥‥‥」

「狩りも戦闘もおれたちは一人でしない。協力し合う。戦果はそれで分け合う。足並みを乱すと食いっぱぐれる奴がでる。特に獣人の村で只人のお前がそれをやるといずれ問題になる。わかるな?」

「いや、全員が狩りして戦ってるわけじゃないでしょ? 畑もあるし、鍛冶屋とか、大工とか、職人――」

「農夫も鍛冶屋も大工も職人も戦う。それが獣人だ」


 マジかよ。


 いや、そりゃそうだ。

 スキルがあるこの世界で集団がまとまるには工夫がいる。

 飛び抜けたスキルの奴が一人いてそいつが一人だけ活躍し続けでもしたら全部そいつの意向で物事が決まってしまう。

 集団で生きるのはそういうスキルが無い者たちが生きるための手段だ。


 それにスキルはほぼ運だ。

 獲得できる者は限られ、得られたスキルもその人の人徳や賢さは反映しない。


 何となくスキルを使えればちやほやされると思っていたけど単純な問題として、人が苦労していることをスキルで簡単にこなす奴が居たら、いい気分しないよね。



「まっ、今すぐってわけじゃない。家も建ってないからな。だがもし家ができて、そこに住み続けるというなら、覚悟してくれ」

「ああ‥‥‥」


 バルトはここで暮らしてきた只人の先輩として気を使ってくれたんだな。


 しかし、なぜこんな厳しい生き方をするんだ?

 彼は獣人ではない。

 他にも只人が住んでいるみたいだが。


「バルトはなぜここに住んでいるんだ? 故郷ってわけでもなさそうだが」

「おれは傭兵でな。戦いの中でここの村長と出会ったんだ。それでまぁ、ここの暮らしは結構気に入っている」

「ふ~ん」

「さて、動けるならそろそろ行くか。お前を村長ヴァクーネンに会わせる」

「わかった」


 村に残るかどうかは暮らしてみて決めるとして当面の拠点であるのは間違いない。

 村長にはキチンとあいさつしておこう。



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