メモ4
メモ4
_ありったけの夢を届ける。
それが俺の夢だった。
その為にサンタになったし、思っていた以上に堅苦しいものだと分かったから教会を抜けた。
1年と2ヶ月。
巨人を砕き、追手を凌ぎ、笑顔を絶やさずここまで来た。
だがそれもじきに終わるだろう。
どう見ても植物とは似ても似つかない「世界樹」と呼ばれる建造物。
世界樹自信が強力な防御結界を張っていて勝手な出入りは不可能だが、友人が何故か鍵を持っていたから避難場所に使っている。
外からの追手に襲われる心配こそ無いが、部外者が長居しすぎてしまった。外は追手に包囲されており、内側に居座れば防衛システムによる迎撃が始まるだろう。
とっくに詰んでいた。
この先は殺されて終わりだろう。
と、思っていたが、思わぬ所に俺の仕事は残っていた。
世界樹の中枢、「ここが心臓部です」と言わんばかりの風景が広がる中に、ソイツは居た。
「キミ、名前は?」
「_」
反応ナシ。
無視というよりは認識していない、という感じだった。
見た目は10歳前後で、男とも女とも分からない風貌。
ただ、その瞳には何も映っていなかった。
「…いいねェ」
「キミが、俺の仕事納めだ。」
届いているとは思わないが、それでも声をかけ続けた。
「俺の夢は、ありったけの夢を届けることだ」
「ここまで色んな場所を渡ってきたが、正直まだまだ物足りなくってな」
「そこにキミが居た。」
「俺が今からやることの理由は、それだけだ。」
友人と最期の合図を交わす。
戸惑う様子もなく、いつもの様に火を焚べる。
右腕を砲身に換える。
昂ってきたから左腕も使う。
「瞳に何も映さないのなら、この焔を焼き付けよう!」
心身共に、物理的に燃やし尽くす。全身全霊を燃料にする。
「空虚な心には、ありったけの夢を届けよう!!」
灯火を灯すために。
俺の夢を、ここに残すために。
「聖夜の奇跡を、君に!!!!」 _____