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第16話 グッド・バッド・ドロイド⑩

 翌日は結局、半日あまりを総合病院の中庭で過ごした。ドリアンを運んだあと、そのままそこにいたのだ。あまり出歩くな、というファッジの指示に従った形だ。そのファッジが、「終わった」と言いに来た。見舞いが、かもしれないし、一切合切が、という意味かもしれない。「出よう」

 ハニーは日陰のベンチから腰を上げた。


 殺し屋スモーキーは緊急治療室に担ぎ込まれた。全身のいろいろな骨が折れていたらしいが、奇跡的に命は取り留めた。全治十か月だ。ドリアンは五日の入院で済むらしい。

「たいした傷じゃなかったのか」

「脇腹をかすっただけだな。のんきにグースカ寝てたよ」散歩する入院患者とすれ違い、完全に離れるのを待ってから、ファッジは再び口を開いた。「マサムネ。パノーフ議員を殺った殺し屋を殺したのは……」

 ハニーは遮った。「アナだろ?」

「状況的に、たぶんな」

 転落死だったという。

「当時の“番付”は事故と結論付けていたが、今見ると不自然な点がある。そのあと何人かそいつの関係者が死んでるのもな。モカもそうだったけど、殺した奴の携帯から連絡先を調べて、近しいやつを芋づる式に……たどっていたんだろう」

「もう終わったことだろ」

「そうだな」

 病院の敷地を出た。ファッジは口調をからっと変えた。「マサムネこのあと暇? 飲みに行かない?」

「ああ、おれ酒やめたんだよ」

「ええ?」

「じゃあな」


 アパートメントに帰った。

 テーブルの上のペットボトルには、枯れかけたトルコギキョウが刺さっていた。

「IQ?」出し抜けにハニーはたずねた。「トルコギキョウってなにかな」

「はーい。トルコギキョウはリンドウ科ユーストマ属の一年草または多年草。切り花が人気。紫、黄色、ピンクなど、いろいろな種類があるみたい。花言葉は『感謝』『おだやか』『良き語らい』だよ」

 ――良き語らい、か。

 花弁の先から色褪せ始めた紫色の花をハニーは眺め、おもむろに握りつぶした。



(第十六話 おわり)




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