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第1話 初戦

こんにちはこんばんわ。RICEです。


第1話完成しました。

小説ははじめて書くので至らないところもありますが大目にみていただけると幸いです。


ではスタートです。

第1話


4限目のチャイムがなった。俺の周りを朝の少女が飛んでいる。


「ねぇ、マスター?なにやつてるの?」


「…。」


俺以外には姿も見えてなければ声も聞こえてないらしい。


「ちょっとマスター聞いてますの?!」


そんな声も無視をし、そういえば名前も聞いてないな、なんてことを考えてたら授業は終わっていた。


屋上。本当は入ってはいけないが生徒会員の俺には鍵を持つ権利があるためここで昼食をとることが多い。今日にとっては好都合だ。


「なぁ、お前はなんて言うんだ?」


静かに少女に問いかけた。


「やっと喋ってくれましたのね!マスター!私の名前はアイゼリ・フローライトと申しますわ。以後お見知りおきを。」


少女はレースの着いた赤を基調としたスカートの裾を少し上げながらお辞儀をした。


「なんて呼べばいいんだ?」


「アイゼリでもいいですし、旧友にはリフとも呼ばれていましたわ。」


「んじゃ、リフで。」


「はい!マスター!」


「あとマスターっていうのやめてくれ。」


「いいえ、マスター!」


呼びやすい方を選んだだけだがリフは喜んでくれたらしい。なによりだ。たがマスターという呼び方は諦めるしたなかったようだ。


「お前はなんなんだ?なぜいる?どこから来た?」


俺は思いつく疑問を投げかけ、昼食の焼きそばパンをほうばった。


「そんなに求められても困りますわ、マスター。私どうしたら…//」


「は?」


それが自分を自分でだいているリフへの正直な感想だった。


「コホンッ。ええ、失礼いたしまたわ。私は銃の信者。故郷はサイベートですわ。ここに来たのはs…」


ガタンッ!!!


「なんだ?!」


地面がぐらつくとともに大きな音が聞こえた。


「来ましたわね、行きますわよ!マスター!」


「行くってどこへ?!」


「とりあえずついてきてくださいですわ!」


ついてきてといわれてもリフが行った先は屋上の柵。そこから下へ急降下した。

俺は何も考えず焼きそばパンをおいたまま屋上の扉をあけた。


全速力で校門をでてリフを探す。


「こちらですわ!マスター!」


突き当たりの角で俺を呼んでいた。俺はリフの方へ残り少ない体力を向けた。


走ってきたのはスクランブル交差点。ニュースでもでるメジャーな場所だ。


「来ますわ…。」


「来るってなにがっ…おわっ!」


さっきより地面が揺れて、歩行者は悲鳴をあげ車は急停止し歩行者天国状態になっていた。

駅から警察が駆けつけてくる。


「よぉ、初戦はお前か、アイゼリよぉ。」


「手鳴らしにはちょうどいいかもですわね。アゲートさん。」


「まだ誰も死んでないんだよなぁ。お前が最初の死者かぁ…。ははっ、残念だったなぁ」


「あら?あなたかもですわよ?」


なんだなんだ。いきなりなんなんだ?!フードを深く被ったアゲートとかいう青年とリフが話している内容を理解できなかった。初戦?!死者?!なんだよそれ。


「リフ!これはなんなんだよ!」


「ゆっくり説明するのはあとですわ。簡単にいえばサバイバルといったところでしょうか。あのチビと戦いますわ。」


「誰がチビだ!!まだ成長期だわ!クソが!」


リフは指を指した。飛んでるので気にならなかったが確かに小さいかもしれない。


今まで話につられ気づかなかったがスクランブル交差点にいた歩行者や車に乗っていた運転手は全員通路や駅の方面に固まっている。

だが1人だけ俺と同じ立場に少女が立っていた。遠目からでははっきり分からないがセーラー服を来ていて、俺とは裏腹に落ち着いたようすだ。


「リフ、戦うって俺はどーすればっ」


「マスターは遠目から見ててくださって結構ですわ!マスターに指一本触れさせませんわ!」


「おいおい、アイゼリよぉ。1人で戦うつもりか?随分余裕ぶっこいてんじゃねぇかよぉ!」


「あなたごときにマスターは必要ありませんわ」


俺はリフに言われた通り後ろに下がった。いまいち状況が理解できないなか、今はリフに任せることにした。


リフはスカートの下に手を入れ太ももにかかっていたバンドから両手で銃を取り出した。すかさず体制を立て直しアゲートに放った。


「おっと、危ねぇなぁ。」


口元をニヤつかせながら袖から小刀を3本指に挟み銃弾を弾いた。

なんなんだよ、本当に日本かよ。


固まっている歩行者もざわついたり叫んで逃げていくものも多かった。クラスの人には見えなかったのにどうして見えてるんだ…?そんな考えを過ぎらせながらも2人の戦いを見ていた。


「り、リフ、頑張れよっ」


戦いが進むにつれリフに勝って欲しいという思いが強くなり不意にその言葉がでた。

リフは固まり、ぎこちない動きで俺の方を振り向いた。


「ま、マスターぁぁあ!私のことを応援して下さるのですね!なんで私は愛されているのでしょうか、なんて幸せもの、もう死んでも構いませんわ!」


「い、いや、死ぬなよ」


迫力に圧倒されていたのは俺だけではなくその情景をみていたアゲートも含め全員だった。

だがリフはそんなことも気にせず言い続けている。


「アイゼリぃ!いいのか!余裕ぶっこいてぇ!」


そんな言葉と同時に小刀がリフの方へ投げつけられる。だがリフはきずいていない様子に話を続けていた。


「リフ!!」


「なんですの?マスター!また応援を?とても嬉しいですわっ…と。」


最後の言葉と同時に後ろを向きながらも人差し指と親指で小刀を挟んだ。男だがその眼差しには惚れそうになった。


「私が喋ってる時になげるとはいい度胸ですわね。ウォーミングアップも出来たとこですわ。そろそろ本戦といきませんの?」


「あぁ、いいぜ。」


今までのがウォーミングアップだと驚いてる俺はこの後もついていけるのだろうか。


「マスター、肉体をかせ。」


肉体…?

アゲートはセーラー服の少女に確かにそういった。


「あぁ。醜態は晒すなよ。」


「分かってるって。」


アゲートは少女の方へ下降して行った。

地面におりたったところで少女はポニーテールを肩にかけうなじを晒した。


「我、ナイフの信者、アゲート・ナチス。マスター、神賀利悠香の肉体を求む。」


俺にギリギリ届くくらいの小さな声で呟いた。

アゲートはマスターのうなじを噛んだ。

その瞬間アゲートの姿は光のように消え、神賀利悠香の姿だけが残った。痛がっている様子もなく、肩の力が抜けたように俯いている。


リフはその間銃のセッティングを行っていた。


「あぁ、やっぱ肉体はいいな、扱いやすい。」


神賀利からアゲートのようなセリフが吐き出された。だが声は少女のままだった。


「乗り移ったのか…?」


俺の呟きはリフに届いていた。


「察しがいいですわね。私たち信者はマスターの肉体を借りて戦うことができますの。そっちの方が扱いやすいですし強さもましますわ。」


「じゃあリフも…」


「ダメですわ。」


重ねるようにリフは言った。


「肉体を使うということは、ダメージは肉体に行きますわ。血だってマスターの血が流ますわ。人間の体力がどれほどのものか知りませんが最悪死に至ることも。信者に行くダメージは命の代償。マスターが傷だらけになった状態で信者はマスターから離れる時全ての傷を受け持ちますわ。もちろんマスターと分割することも出来なくはないですわ。ですがそんなことをする信者はいません。信者がダメージを受け取るということは肉体のダメージの数倍のダメージを食らうのと同じこと。命をとられない信者はいません。肉体を使った所でとけるときはどちらかの結末のとき。肉体が死ぬか。信者の体にダメージを追わせるか、ですわ。」


リフが説明をスラスラとするとき俺は一言も発言しなかった。いや、できなかった。


「肉体をもったあいつに、今のお前は勝てるのか?」


「分かりませんわ。信者は肉体をもらうことで魔術が使えますわ。今の私にできることは銃の拡張ぐらいのもの。ですがやってみる価値はありますわ。」


リフは口元をニヤつかせ自信の腕を犬歯で強く噛んだ。当たり前のように血が出たがリフは痛がらず台詞を吐いた。


「我、銃の信者アイゼリ・フローライト。我の銃を我の血液に従い拡張を望みますわ。」


ハンドガンが光に包まれ光が放たれた後には中型銃に変わっていた。


「終わったかぁ?待ちくたびれたぜ、さぁ、やろう、アイゼリ。」


「えぇ。お待たせしましたわ。」


リフは手袋を下に落とした。赤いルビーのような瞳でアゲートを睨み自信の血を舐めとった。


「俺から行かせてもらうぜぇ!!」


その瞬間アゲートはリフに急接近した。俺の目にはとまらない速さだったが確実にリフには見えていた。

アゲートは小刀をリフに振り回した。それは適当に見えるが確実にリフの隙があるところを狙っていた。その小刀はリフの首元をかすめ血が滲んだ。リフはその小刀を素手で掴みそれをかてとして空中で上下逆さまの状態になり背後からアゲートを狙い打った。アゲートは背中に小刀を回し銃弾を弾いた。


「見えてたのか…?」


アゲートは背後を狙われたにも関わらず銃弾を弾いた。しかも片手で。肉体とはやっぱり差がありすぎる気がする。そしていつの間にはその戦いを見てるのは俺と警察、SNSにあげるネタだと思っている人だけになっていた。


銃弾を弾かれたリフは顔をしかめ体制を立て直した。


「アイゼリよぉ、全然てごたえねぇぞ?それが全力かよ?あぁ?!」


「くっ…」


リフが体制を立て直したのは俺の方向ではなく逆だった。アゲートはそちらに向かって体制を立て直したばかりのリフに襲いかかった。ナイフで来ると思ったのは俺だけではなくリフもだった。前で銃を2丁構えているリフのがら空きの溝落ちに接近し思いっきりのパンチを入れた。


「ガハッ!!」


リフは後ろのビルに叩きつけられた。


「リフっ!!!」


俺はすかさず駆け寄ろうとした。たがリフは俺の足元に銃弾を打ち込みそれを止めた。


「どうしてっ…?」


「いったでしょう。マスターは私がお守りしますわ。」


リフは地面に血を吐き出した。


「はぁ、女の体はダメだな。筋力がねぇ。」


アゲートはリフを打ち込んだ右手を振っていた。リフはおぼつかない足でなんとか自分の足を立たせた。リフの頭からは壁に打ち付けられた衝撃でおった傷からの血が流れていた。痛々しくて見ているのが嫌になった。だがリフの目にはまだ熱が灯っていた。


「痛いですわねぇ。女の子には優しくって言われませんでしたの!」


リフはさっきと同様にアゲートの背後へ回った。


「ちっとは学習しろよなぁ。アイゼリよぉ!」


アゲートも同様にそれに備える体制をとった。だが振り向いた先にリフはいなかった。俺も状況の把握ができなかった。だがアゲート自体も状態が把握出来ておらず今までに見せなかった表情を浮かばせていた。


「残念でしたわね。上、ですわ。」


リフはあの一瞬で信者の特権の飛行を使い上に回っていた。アゲートがそちらを向いた時にはもう遅くリフは銃弾を放っていた。アゲートはガードするのが無理だと判断し避けるのに手段を変えたがそれも間に合わず左腕の肩に銃弾が直撃した。


「ちっ…うざってぇなぁ。」


アゲートは肉体が本体になってるため痛みは訴えないが確実に血は出ている。肉体の方にかなりの負担だ。もう5センチズレていたら確実に死んでいた。だがこれでもリフのほうが少消耗は激しかった。


「はぁ、はぁ…。」


リフからは息遣いが多く聞き取れる。

リフは俺とは逆の方に着地をした。


「我、ナイフの信者。アゲート・ナチス。虐殺魔術を求む。」


アゲートが魔術呪文を唱えながら手を前にスライドさせるとアゲートを取り囲むようにナイフが現れた。


「いくぜぇぇえええ!!!!!」


アゲートはそこからナイフをどんどん掴み、リフの方向へ投げる。ナイフは投げられると同時にまた出現にしアゲートはその手を止めることがなかった。リフは銃であしらいながらも全てを止めれるわけでもなくかすり傷程度の傷を多く作った。リフは避ける程度で多く走ってさせたり場所を変えることはなかった。


「なんでだよ、逃げればっ…。」


あぁ、そうかリフは俺を守ってる。俺に傷を付けないため、俺とは逆の方向にいつも体制を立てていたんだ。今思うと全て辻褄が合う。あの

時もあの時も思い出せば思い出すほどリフの行動の理由の原点には俺がいたんだ。

その時疲れ切ったリフにナイフが真っ直ぐ向かった。リフはきずいていても動くことができなかった。

そんなことを思う前には俺の体は勝手に動いていた。全速力でリフの方に向かっていた。間に合う間に合わないの問題ではない。とにかく今日あったばっかで俺の事が変人なくらいに大好きなリフだが助けたかった。それだけだった。

リフの瞳の前までナイフが来た時俺はリフの腕を強く引いた。そのまま俺たちは地面へ転がり俺がリフを押し倒すような状態になり、アゲートのナイフは壁に刺さった。アゲートは心底機嫌が悪そうな顔をしていた。


「コンクリートにも刺さんのかよ…。」


「マスター、どうしてですの!来ないでってあれほどっ!」


「リフは俺を守って戦ってくれたんだろ?リフが危ないときにそのマスターが立ち尽くしててどーするよ。」


俺は久しぶりに人に笑顔を見せた。リフは目から涙を零した。リフの体を起こした。アゲートはイラついていて今すぐにでも襲ってきそうなのでなるべく言いたいことを早く伝える。


「リフ、俺を使え。」


「ですがっ、」


「もうその体もボロボロだろ、俺は大丈夫だ。死ぬ覚悟はできてねぇがリフは勝ってくれるんだろ?」


「えぇ。必ずしも。マスター、本当にいいですの?もしものことがあったらっ…。」


ここまで渋るリフを見て本当に俺は守られてるんだなと改めて思い返した。それと同時になにもできない無力な俺に腹をたたせた。


「リフ、お願いだ、このままなにもできないままリフを死なせたくない。俺を使え。そして勝て。信者のお前に勝てるかわからないが中学は3年間陸上部だ。」


「わかりましたわ。流石私のマスターですわ。ありがとうございます。大好きですわ。」


その時リフから額にキスが落とされた。恥ずかしさもあったがなんだか懐かしい気持ちになり目頭が熱をもった。


「マスター、マスターの体。アイゼリ・フローライトがお預かりいたしますわ。」


「あぁ。またな。」


俺は静かに目を瞑った。


「我、銃の信者、アイゼリ・フローライト。マスター、ーーーーーの肉体を求みますわ。」


目を瞑っていても分かるような光に包まれた。その瞬間俺は自分が自分でないような変な感覚におそわれた。だがそれは気持ち悪いわけでもなく意識を手放すわけでもなかった。

完全に光が無くなったあと俺の頭や腹、腕などに酷い痛みを感じた。俺はさっきのリフの台詞を思い出した。肉体を信者が手に入れた今、痛覚は全て俺のモノになる。最後信者返すとしても。戦闘中の痛みに俺が意識を保って居られるかも鍵になる。もし俺が意識を失えば俺が死んだということにってしまう。どうやら他人事ではなかったようだ。

それにしてもリフはこの痛みに耐えていたと思うとなんとも言えない状態になった。腹は内出血を起こしていて頭は深いキズ、腕や足にはかすり傷が多々あった。


「マスター、大丈夫ですの?」


「あぁ、なんとかな…。」


「それにしてもマスターの体に私がはいってるってだけで興奮しますわ…。」


アゲートに聞こえないような小さな声でリフが呟いた。


「黙れ。」


俺にはリフの声はそのままリフに聞こえた。だがアゲートのときはアゲートの口調で神賀利の声だった。どうやらマスターである俺の声は外には届いておらず信者であるリフとだけ会話ができ、信者の声は外には俺の声で、マスターには自身の声で聞こえるようだ。

そう考えるといつもの口調が俺の声で外に聞こえてると思うと気持ち悪いな。

それは背筋がゾッとしたのを感じた。


「やっと終わったかよぉ。待ちくたびれたぜ、クソが。契約中は攻撃禁止ってのも楽じゃねぇ。」


「お待たせしましたわ。では再戦と行きますわよ。」


リフが前を向き直ると同時に俺は目を静かに開けた。リフの見えている情景が俺にも反映されていた。アゲートはこちらを冷たく睨んでいた。


今度はリフから戦闘を持ちかけた。たがリフが走っていったのはアゲートの方ではなく先程リフが背中を強く打ったあのビルの壁だった。


「リフ?なんでそっち…」


「先にマスターの身体能力を確かめさせてもらいますわ。」


そうだ。リフが体を動かすからなんでもできると思っていた。だが違う。俺の肉体だから俺の筋力、体力で決まる。リフがバク転をできたとしても俺の筋力量でできなければできないのだ。


リフはそのまま走って壁の少し手前で高くジャンプをするとともに体をひねりアゲートの方へ顔を向けた。壁に足をつき強く蹴ってアゲートの方へ飛び出した。

日常でこんなことはしないため俺には驚く景色だった。


「ほっ…と!」


リフはアゲートの顔まで来たら足を出し腰を強くひねりアゲートの左頬目掛けて蹴りを入れた。


「そんなん容易く入ると思うなよなぁ!アイゼリよぉ!!」


アゲートは蹴りを入れたリフの右足を右手で強く握った。

爪がくい込んで痛いくらいにだ。


「アゲートさんこそそんなんでガードできたと思わないでくださいですわっ!!」


台詞とともにリフは掴まれてる右足を軸にひねり半回転して右足のかかとを勢いよくアゲートの後頭部にいれた。


「あっぐっ…!」


俺は右足の強い痛み耐えられず痛みを声に出した。

だがアゲートはその衝撃で手をはなし数十メートル飛んだ。床に擦りつけられる効果音とリフが足をつく音が重なった。


「マスター?!大丈夫ですの?どこがいたいのです?!」


リフは焦った様子で体をキョロキョロ見回した。


「大丈夫だ。試合に集中しろ。」


「…はい、ですわ。」


ザクッ…。ザクザクッ。


ざく?なんだその効果音。

リフが下を向くと俺の腹には3本のナイフが刺さっていて、それを見て痛みを覚え、悶絶しそうになった。だがここで意識を手放せば終わりだ。自分を自分でなんとか保ち俺は荒い息のなか意識だけはなんとか掴みとった。


「アイゼリ、油断するなよ、ここからは総力戦だぁぁぁあ!!!我、ナイフの信者。アゲート・ナチス!!反撃の魔術を求むっ!!」


アゲートは力ずよく言い放った。リフはまだ刺さったナイフの方を見ていた。


「リフ!なにやってる!早く体制をっ!」


俺の言葉はリフに届かなった。リフは1ミリ足りとも動かない。

アゲートの魔法はさっきのよりも多くのナイフをリフへ向かってだし、アゲートは腕を下方へ振り下ろした。ナイフが一斉にリフの方へ向かってきた。


「リフ!早く!!」


「マスター、この1撃だけ痛みに耐えて意識を手放さないでくださいですわ。」


リフは俺にしか聞こえないような小さな声で確か俺にいった。俺は唾を飲み込みこんだ。今はリフに何を言っても聞かない、俺はリフに見えないのは承知で小さく頷いた。それを悟ったリフは1言だけいった。


「ありがとうございます、ですわ。」


その言葉と同時に俺の肉体へ15本中8本のナイフが一斉にささった。


「グハッ…」


本当に痛い時、人間は声が出ないとはこのことだろう。聞こえたのは俺からは息が微かにでた音。肉体からはナイフが刺さった音と血が地面に叩きつけられた水音だった。

俺は意識の狭間にいた。少しでも気を抜いたらもうおしまいだ。リフが今どこを見てるのか、そんなものは痛みにかき消されていた。今は視覚も聴覚も、全てが痛みとなっていた。


「おい、避ける気もねぇくらい諦めたのかよ…真剣に戦えよアイゼリ!!」


「やっとこれで戦えますわ。」


俺にリフの言っている意味がわからなかった。だが、リフには勝利の道筋が見えている。そんな気がした。


リフは勢い良くアゲートに向かってかけだした。


「我、銃の信者。アイゼリ・フローライト。乱射の魔法を求む、ですわ!」


走りながら慣れた口調で呪文を唱えた。

それに被せるようにアゲートも先程の呪文を唱えて戦闘体制をとった。

リフは自分の後方に赤に光る魔法陣を出現させた。アゲートと5メートルほどの距離に来たところで足をとめ、アゲートに向かって指鉄砲を作り向けた。アゲートは口角を上げながら腕を下方に下ろす準備をした。

リフがいった『ばん。』という子供のような言葉で魔法陣からアゲートに向かって乱射が始まった。アゲートは下方に振り下ろし銃弾を弾くようにナイフをあてた。

リフとアゲートはそれぞれの魔法で乱戦が広がっているにもかかわらずお互い駆け寄り肉体戦が始まった。


アゲートが強く拳を握りリフへ向かって放つ。リフは腕を十字にしガードをしたが勢いとともに後方へ後ずさった。リフは先程自分に刺さっていたナイフを右ポケットから取り出しアゲートに投げた。それと同時に駆け寄りかかと落としを繰り出した。


「ちっ、邪魔だなぁ!!!」


アゲートは背中からナイフを取り出しリフへ振りかざした。リフは避けながらも半回転し立場を逆転させた。

そこで一旦魔術もきれ肉体戦も休息を迎えた。


たが休息は3秒もなく。リフが先に近寄った。アゲートは体力的にももうきついはずだ。なんて言ったって中学生女子の体だ。体力は限界を迎えるのが早いだろう。

リフはアゲートの足を蹴り尻もちをつく体制を取らせた。アゲートはそれを見込み片足で蹴りあげバク転で回避をした。どんどんアゲートがビルへ追い詰められていた。


「アゲートさん、体力は大丈夫ですの?」


リフは小馬鹿にしながらアゲートを問いかける。


「もちろんだ。」


アゲートは息が上がって、先程のような強い言葉を放つ余裕もなかった。

その証拠としてリフがアゲートのナイフを投げると先程まではキャッチしていたが今は祓うしかできていない。


「ではいきますわよ…」


ガタッ…


アゲートは自ら膝をついていた。


「なんだ、これ…」


アゲートは息が早くとても普通な状態ではなかった。


「喘息…か?」


この症状は確かにそうとしか思えなかった。俺の大切な人も喘息をもっていた。

リフは次の技を出さなかった。躊躇したのだろう、誰もがそう思うだろう。だがリフは違かった。リフにはチャンスでしか無かった。


リフはライフルを魔術で魔法陣から1つづつ取り出した。リフはそれを後方のビルに向かって乱射した。俺は何をやっているのか初めは分からなかった。だがすぐわかった。リフが打ち付けられたあのビルは下の方に穴が飽いていた。さらに高層ビルだ。下のバランスが崩れれば一気に倒れる。それをリフは狙った。

いつからだ。自分が打ち込まれた時か…?


アゲートは発作に苦しまれながらも上を見上げ目を丸くしていた。

ビルはもうぐらついていた。


「フッ…。」


アゲートは一言笑いをこぼした。


「我、ナイフの信者。アゲート・ナチス。マスター、神賀利悠香の肉体から離脱を求む」


今までにない小さな声で呟いた。光に包まれ2人が分離した瞬間、アゲートは倒れた。声を出し切れずに悶えた。倍のダメージ、全てをアゲートが引き取ったのだった。

そして最後の力で神賀利を遠くへ突き飛ばした。


「感謝してるぜ、マスター」


最後微かな声だったが確かに聞こえた。等の神賀利は言葉を失っていた。


リフは最後の弾を打ち終えた。


「アゲートさん、ごめんなさいですわ。ですがこれはサバイバルですわ。」


リフの冷たい眼差しとともに瓦礫と化した高層ビルはアゲートにふりかかって大きな音を立てた。


「後はお願いしますわ。神賀利さん。」


リフは神賀利に一礼し振り返った。


「ほっとくのかよ、リフ。」


「いいえ、最後を見とるのはマスターだけと決まっておりますわ。」


「そうか。」


俺の肉体であるリフはそのまま来た道を戻った。聞こえるのは靴音だけだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


アゲートがビルに潰された。私はなにもできなかった。動けなかった。最後は私の持病のせいでアゲートが死んだ。

アイゼリに一礼されて私はかけだした。瓦礫の上にたちアゲートがいた場所に駆け寄った。もちろんアゲートの姿は見えない。私は全ての傷を受け持ってくれたアゲートのおかげで無傷だ。体力もある。私は瓦礫をどかした。体力があってもどかせるのは小さな瓦礫だけだが人目でも、服だけでも見れればよかった。

探し続けて服も十分土汚れが着いたきた頃腕が見えた。破れてボロボロになった黒パーカーに包まれた腕。私は泣きながら周りの石をどかした。顔の部分をどかしたときに私は言葉がでなかった。そこにいたのは3年前事故で失った弟の悠太だった。


「悠…太…?」


どうして悠太がいるのか状況は理解できなかったが今は悠太にもう一度会えた嬉しさで視界が滲んだ。


「お姉、ちゃん」


「悠太っ!!」


「また会えてよかった…。」


悠太の声はか細かった。それでも最後見とってあげれなかったこの前とは違い今は手を強く握れている。


「うん、私も。」


「お姉ちゃん、いつも朝起こしに来てくれてありがとう。嫌いなトマト食べてくれてありがとう。宿題教えてくれてありがとう。迷惑かけてごめんなさい。」


私は全てに「うん。」と返信をした。涙が止まらなくなった。


「お姉ちゃん、」


「なぁに、悠太」


「大好きだよ」


その言葉に答えることができず悠太は光となって消えた。私は声をあげて泣いた。かっこ悪いなとも思いながらもそれを止めることができなかった。あの悠太はアゲートが見せてくれたさ幻想なのだと思った。


「悠太、アゲート、ありがとう。」


私は空を見上げて言った。昼だったのがあっいう間に月が顔を覗かせていた。


そろそろ家に帰ろうと瓦礫に手をついて立ち上がろうとした時、さっきまで悠太がいた所に1枚の手紙が落ちていた。

瓦礫の中には似合わない、綺麗な白い封筒だった。

私は手を軽く拭い、その封筒から1枚の手紙を取り出して読んだ。


「そっか。最初からそーだったんだね。アゲート。」


一昨日にあったばかりの知らない男の子。自分より背が引くくて世話が焼ける男の子。


「私はもう十分だよ。」


手紙に呟き手紙を下に落とし立ち上がった。手紙は炎と化して燃え尽きた。


家の方に足を進めた。制服がボロボロで明日学校どうしようと思いながらも足を進めた。


不思議で貴重な体験。マスターと呼ばれる居心地の悪さ。もうそんな体験はできないだろう。いや、できない。


「だって、もう未練はないよね。」


私は自分にだけ聞こえるように独り言を呟いた。アイゼリさんに1言言いたかったな、と考えながら顔を俯かせる。なんか、全てに納得がいき疲れているはずの足が軽くなった。


私は顔をあげて1歩をふみだした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


俺らはなにも喋らず学校の屋上までいった。


「リフ、俺に傷を半分分けろ。」


「分かりましたわ。」


やけに素直だなと思いながらも俺は目を閉じた。


「我、銃の信者。アイゼリ・フローライト。マスター、ーーーーーの肉体から離脱を求むですわ。」


光とともに俺は自分の体を動かせることへの懐かしさを覚えた。が、痛みが消えた。先程までの悶える痛みが1ミリもなかった。もしやと思い俺はリフの方を振り返った。案の定リフは口から血を吐き、息を早めていた。


「リフ!分けろっていっただろ!」


リフの出血箇所は非常に多かった。信者はどうなのか知らないがこのままでは出血多量で死んでしまうのではないかと思い自分の来てたパーカーを幹部に圧迫した。


「何度もいわせないでくださいですわ、マスター。マスターを守るのが信者の役目、ですわ。」


リフは目を細め笑って俺の頬に手をあてた。そしてそのまま意識を手放した。

死んだかと思った。だが息はあったので俺は少し安心をした。

そんな時脳内に女性のアナウンスが聞こえた。


『ただいま、サバイバルからナイフの信者、アゲート・ナチスが退陣しました。残り7人です。』


そこでプツッと切れた。

今日は不思議な体験をした。なんにでも無関心な俺が…いや、無関心になってしまった俺がこんなにも人のために何かをしたのは初めてだ。本当は自分でもこんな危ないことしたくなかった。たが、体が勝手に動いた。


腕時計を見ると9時を指していた。そろそろ帰るか、と思い立ち上がリフを姫抱っこして屋上をでた。


帰り道、これからこんな毎日が続くことへの不安を覚えながら足を進めた。正直怖い。次元が違う。

この戦いはなんのためなのか、マスターに選ばれる基準はなんなのか、当主は誰なのか、今日のビルの作戦はいつから考えていたのか、聞きたいことは考えればキリがない。

だが考える脳も疲れているし、答える本人も意識がない。俺は明日聞けばいいやと思い考えるのを放棄した。


そして帰ったら速攻寝よう。と思い足を早めた。


屋上に置いたままの焼きそばパンを忘れ。


第1話 初戦 読んでいただきありがとうございます。スクロールお疲れ様でした。


新キャラもでてきて初の戦闘が始まり最後には謎にの解明に近づくような台詞もあったと思います。


少しでも興味をもってくださったらタイトルの意味が分かるまでお付き合いください。


また次話でお会いしましょう。

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