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手がかり-2

 下層への通路に逃げ込んだ人々は、全員が怯えながらも、回復や怪我の処置をし合って生き延びていた。


「皆様方!もう安全です!帰りましょう!」


 セレナの元気な声を聞いて、皆一様に表情を明るくする。





 ギルドと、そこに集まった人々は全員、俺達の帰還を待ちわびていたようで、満身創痍の有様の俺達は、手厚い対応で出迎えられた。


 それから一時間ほど経つが、緊急会議の結果の公開を待機し、多くの冒険者がギルドに残っている。

 

 メアも道中で目を覚まし、もともとのステータスの高さもあってポーションで体力は回復している。まだ体の節々の痛みは消えていないようで、冷やしたりもんだりしているが、本人は平気だと言っていた。


 問題は重傷者達だ。ギルドで待機していた回復術士達が懸命な努力を尽くしているが、まだ全員の意識は戻っていない。


 ……そして。


「……ギルドの冒険者登録情報との照合の結果です」


 セレナが、報告要旨を持ってきた。いつも明るい彼女の、そのやりきれない表情で結果のだいたいを察してしまったが、確認する。


「……証言による死亡確認二名……行方不明者一名……か」


 ……三人、欠けたか。


「あの状況で行方不明つったら、残念だが……」


 ウズルも項垂れる。


「……俺が、立ち止まったりしなければ」


 逃げてきた冒険者と出会う直前、諦めかけて立ち止まったことを思い出す。あそこであんな時間を過ごしていなければ、この三人も助けられたかもしれない、そう思うと後悔ばかりが募ってくる。


「……いえ、ハヤトさんは最善を尽くしたと、ボクは思います!」


「……メアと三人の命を比べちまうみたいで悪ぃが、そうじゃなかったら俺たちが間に合ってなかったかもしれねぇ。そうだろ?」


「ウズル、それは俺たち以外の人がいるところで言うなよ……」


 わかってら、と彼は答える。


 だが、二人の言葉で少しだけ楽になった気がする。……被害がこれだけで済んだ、そう言えるのだろうか?


 複数の巨大ゴブリンがいると分かった時の怯え、棍棒を投げられた時の混乱。スキルを使いこなせなかった時の情けなさ。……そして、そのせいでメアに重傷を負わせてしまった罪悪感。


 乗り越えなければ、いけない。


 ……無理やり転生させられて、いきなりこんな死地を経験させられて、それでもまだ、問題は解決していない。これも、しかたなく眷族やるってことについて回っているんだろうなぁと、そう思う。


 しかたなく、なんて言って眷族になってこんな目にあっているんだ。


 しかたなく、強くなるしかないか。


 ひどいな、俺は。俺たちで何とかするんだ!なんて言っておきながら、こんなことになったらなったで、これは眷族になったせいだなんて、少しでも思ってしまっているのだから。


 ──はは。アイラに合わせる顔、あるか?


 女神の眷族として、役目は果たせただろうか?多分アイラのことだから、俺が本気で迫れば、契約の解除はしてくれただろう。それをわかっておきながら俺は、心のどこかで女神のそれになったことを快く思っていたのだろう。


 それなのに。このザマだ。




「──緊急会議の決議報告をする!」

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