モンスターケイブ-6
「──させるかよ!」
刹那、今まさに棍棒がメアの命をつぶそうとしたその時だった。天井の穴から大爆発のような轟音と共に、爆炎が放たれ、棍棒を燃やし尽くし、ゴブリン達を飲み込んだ。
直後、穴からは見覚えのある二人が飛び込んでくる。
「ふー!間に合いましたね!」
一人は俺の目の前に着地し、もう一人が、素早くメアを抱きかかえ、こちらに飛んでくる。
「……な」
「なんで?みたいな顔してんなぁ!」
ウズルと、セレナ。絶対ないと思われた助けが来た。しかし、どうして?
「お前らがいきなりギルドを飛び出してからしばらくして、ボロッボロの男がギルドにきたんだが、やっぱり、明らかに様子がおかしいってわけで、話を聞いたわけだ」
「御二方が飛び出しいった時点で、何かあったんだろうと思ってはいたのですが、御二方がモンスターケイブまで仲間を助けに行ってくれたと聞いたので、ボクたちも追いかけることにしたんですよ!」
「ありがとう……。間に合ってくれて助かった」
「あー、その辺はの礼は、クー坊にしてくれ」
ウズルがそう言うと、セレナはえっへんと張った胸をドンと叩く。
「礼には及びません!僕の術で少し足を速くしたまでです!……クー坊という呼び方については謝ってください」
ボロボロの冒険者というのは、おそらく俺達がモンスターケイブの、手前で出会った男のことだろう。となると、彼がギルドにつくまでは結構時間があったはずだし、そこからたったの数分で──このピンチのことは知らなかっただろうが──今に間に合うように助けに来てくれたというのだ。
「本当に……ありがとう」
「ったくよぉ……にしても、本当にデケェんだな……巨大化したモンスターってのは」
俺によって身動きの出来なくなったゴブリンと、先程丸焦げになったゴブリンをみて、ウズルが呟く。
「こりゃ実物みねぇことには、想像もつかねぇ」
「……あぁ、しかも強さもゴブリンのそれじゃない」
とは言うものの、俺は通常サイズのゴブリンと戦ったことはないが、下位モンスターがAランク二人を追い詰めたのだからそういうことだろう。
……俺は一年冒険者やってる設定だしな。
「うーん、でも一発で丸焦げですか。ウズルさんの火力、いつ見ても抜群ですね」
言われてみればそうだ。同じAランクのメアの攻撃では……
「……俺は、攻撃力だけはSランクに近いからよ」
「その分、ノロマで術も苦手ですけどねー」
うるっせぇな、とセレナを小突くウズル。恥ずかしがりながらも怒っている訳では無いようだ。
「……にしても、メアさん……」
ウズルから離れたセレナは、そう呟きながらメアに視線を落とす。しばらく見つめたあと
「なるほど」
ぽん。と手を打つ。
「メアさん、スキルの本領を発揮していませんね!」
……どういうことだ?ゴブリンが丸焦げになる前、奴らの傷口には確かに闇が蠢いていたはずだ。
1話の冒頭を変更しました