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モンスターケイブー5

 メアの方はどうなったか確認をする。


 なんと、下層への通路を攻撃していたゴブリンを先に処理してしまったようだ。


 さらに、現在交戦中の二体の内、片方のゴブリンは、片腕を切り落とされ、もう片方は足がうまく機能していないように見える。


 しかし、やはりというかあのゴブリンを二体同時に相手し、さらに傷ついた人々を逃すのは難しいようで、ゴブリンたちにも大きなダメージは与えているものの、決定打は打てていないようだった。


 二人で当たれば余裕も生まれるはずだし、俺のスキルも組み合わせられれば優位にすら立てるだろう。早く援護に回らなければ。


「待ってろ!今、い……く……」


 ──!?


 走り出そうとした瞬間、足がもつれ、転倒してしまう。頭がクラクラする。立ち上がろうとしても、膝立ちになるのが精一杯だ。体が言うことを聞かない。


「タカミネ君!?」


 俺が倒れたことに気づいたメアが、叫ぶ。そのせいで、彼女に大きな隙が生まれてしまった。手負いになり、気の立っているゴブリン達が、その隙を見逃すはずもなく。


「──うぐッ!?」


 彼女の体よりも大きい拳が炸裂する。吹き飛ばされたメアは、受け身も取れずに壁に打ち付けられてしまう。


「大丈夫か!?くそ……俺のせいで……!」


 踏ん張って叫び、呼び掛けてはみたが、反応がない。……気絶してしまったのか。洞窟の硬くゴツゴツとした壁に打ち付けられて、平気なはずがない。


「どうすれば……いい……アイラ」


 ネックレスに語りかけるが、返ってきた言葉は期待には反するものだった。


「……残念だけど。スキルのフル稼働で……今まであんたが使わなかった脳の領域まで動かしたから、オーバーヒートが起こって……。ごめんなさい。私、人々に啓示をしてこなきゃ……」


 悔しそうな声、半分涙声でもあった。そして、彼女なりの役目を果たしに行ってしまった。


「畜生……!」


 体はまだ動かない。もちろん、メアが起き上がる気配もない。ゴブリンは二体とも、メアの元へ歩いている。


 ……このままでは、無抵抗のまま……殺される。


 一歩、また一歩と、奴らがメアに接近する。着実に近づく死に、彼女が気付くことはない。そして俺は、それをただ見ていることしかできない。


 やはり、来るべきではなかったのか?あぁ、ここで俺たち二人の内一人でも死んでしまうというのなら、あの時の判断は間違っていた……。


 後悔すら感じる。そうさ、正しいことをして死ぬんだから悔いもない。なんて言えるほど、俺はできた人間じゃないさ。


 ゴブリンが、彼女の目の前までたどり着いてしまった。もう、おしまいなのか。たとえ俺が生き残っても、この光景と、罪悪感を背負っていかなければいけないというのか。


 ……メアのおかげで、戦っていた人々は逃げられたようだ。それだけは達成できたようだ。


 だが、それで、メアが納得しても、俺も、アイラも、この場にはいないウズルもセレナも納得しないだろう。


「おい!!ゴブリンども!女ばっか狙ってないで!俺をやれよ!」


 最後の抵抗。全力で叫ぶ。これで俺の方に注意が向いてくれれば。あわよくば俺の方に来てくれれば、メアが目を覚ますまでの時間を稼げるかもしれないという淡い希望にすがるしかなかった。


 しかし、俺の渇望もむなしく、ゴブリンたちはこちらをちらりと横目で見ただけで、メアしか狙っていない。


 ゴブリンが棍棒をゆっくりと持ち上げる。傷のせいでのろのろとしているが、邪魔するものはいないうえ、あの棍棒が振り下ろされれば降り方に関係なく確実に潰せてしまうだろう。


 ついに、その時が来てしまった。棍棒は崩落した天井の穴近くまで持ち上げられ、ゴブリンの意思によって振り下ろされるのを待ちわびているかのようだった。


 ゴブリンの顔が、ニヤリと歪む。  


 一瞬、持ち上げられたゴブリンの腕が震え、棍棒が振り下ろされ──

全話までを加筆、修正しました。 9/1


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