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巨大種ー2

 緊急会議には三大冒険団団長も参加するようだ。そうと決まればすぐにでも招待に行かなければ。


 とはいうものの俺は団の所在すら知らないことを思い出した。というかそもそも団外部の者がいきなり団長を呼び出すとはいかがなものなのだろうかとも思えてきた。


 ……となるとここはメアに任せて俺は何か他の仕事を探した方がいいかもしれない。


 俺はそう考えたのだが……。


「タカミネ君。一緒に来て」


「俺はいいが、団的には部外者だぞ」


 メアは来てほしいというが、どうしようか。


「状況説明は一人でも人が多いほうがいわ。大丈夫、団長はそんなことを気にするような小さいお方じゃないわよ」


 そう言うことであれば文句はない。メアはスライムと戦っていたし、一部始終をしっかりと見ていた俺が説明したほうが分かりやすいこともあるだろう。


 それに、アイラからもらった魔気とやらの情報もある。いい感じに伝えることができたらいいだろう。

 俺には魔気が何かはわからないが、向こうは知っているかもしれないしな。


「そうか、なら行こう」


「ありがとう」


 二人でギルドを出る。メアによると、ギルドの本拠地は壁の近くにあるらしい。


 神殿から街の出口まで一直線に延びる大通りをはずれ、壁の方へ向かう。ギルドにことを伝えひと段落着いたので、ダッシュするというようなことはしなかった。


 歩いていると、メアはグローリア騎士団について話し始めた。


「グローリア騎士団には団長を筆頭に、300人程の冒険者が所属しているわ。そのうちAランクが6人、Sランクは3人よ」


 彼女の言うところによると、Aランク以上が幹部、さらにSランクの3人は≪三騎士≫と呼ばれる団長の側近ポジションらしい。


「この戦力は他の二団と比べても最強だわ。でも、絶対に争うことはしない。……というか、しなくなった」


「……そういえば、今の団長になるまでは、取り決めなどの体制は取っていなかったらしいな」


 俺がそう言うと、メアは少し悔しそうにした。


「えぇ、そのせいで起こっていたいざこざも団長の取り組みによってなくなったわ。……団の信条である秩序が、やっと信条と言えるようになったの」


 それに、と続ける。


「団員も増えたわ。……モンスターによる襲撃によって親を失った子供たちを迎え入れて、モンスターとの戦い方を教えたのよ。まだ大人になっていない子もいるわ」


 なるほど、行くあてのない孤児を保護して、尚且つモンスターとやり合えるように稽古もつけているのか。


 ……俺のいた世界でそんなことしたら「無理矢理戦わせるなんてー」とか「倫理的にー」とかうるさそうだ。当の孤児本人たちからしたら、そんなこと知ったことではないと思うが。


 絵に描いたような善行だと思う。この街の人からの信頼も厚いことだろう。……となると同じようにいざこざを起こしていた他二団はどう思われているかわからないが。


 ……しかし、いよいよもってメアの年齢が分からなくなってきた。


 多くの場合、到達するのに十数年かかると言われるAランクの実力者で、当時のこどもがある程度成長するくらいには昔に起きたモンスターの襲撃を冒険者として経験している。そして俺と年齢がそこまで変わらないと思える見た目だ。


 思い切って聞いてしまいたい気持ちがはやるが、女性に唐突に年齢を聞くなど失礼が過ぎると自制をきかせる。


「今回の件も、状況を伝えればすぐにでも解決を図ってくださるはずよ」


「あぁ、事態が悪化する前になんとかなるといいな」


「大丈夫よ。私たちグローリア騎士団は、もう二度と絶対に、この街を危険に晒などしない。そう決めているわ」


 確固たる意志を感じた。彼女もAランク、騎士団の幹部だ。信条にもより深く思うところがあるのだろう。


 店が並ぶ中心街を離れ、さらに住宅街も抜けると、巨大な宿舎と、運動場の様な施設、そして砦の様な建物が建っていた。それらを囲むようにぐるりと柵がめぐっている。


 初めて街に出たあの日の夜、神殿のある丘の上から見えた砦は、これだったのだろう。


 門には門番が二人立っていた。メアと俺が近づくと、敬礼をして訪ねてきた。


「シアール卿、お帰りなさいませ!失礼ではありますが、そちらのお方は……?」


 団内ではメアはシアール卿と呼ばれているらしい。まさに中世の騎士団そのものの様で──実際のところは詳しくないが──なんだか面白かった。


 メアは確かにしっかりものであるし、真面目だとも思う。しかし、いざ目の前ではっきりと立場の差を見て取れる状況となると、意外さもあったのだ


「タカミネハヤトさんよ、とある一件の重要参考人として連れてきたわ。客人としてもてなしなさい」


「ハッ!」


 先程俺と話していたときとは違い、堅くした態度でメアがそう門番に言うと、門番は俺にも敬礼をして、さらに頭を下げてきた。


 俺は団の人間ではないので、こういった規律に即した行動をされてもなんだか申し訳ないというか、気まずいというか、堅苦しさを感じてしまう。


 門を通りけると、メアも気が抜けたのか、一気に態度を崩した。


「私が幹部になった途端これなのよ……。卿なんてつけられて、逆にこっちが気を使ってしまうわよ」


「なに、部下からあんな風に呼ばれているとはな、シアール卿」


 俺も少しふざけてみる。


 彼女はだいぶ恥ずかしそうに顔を変えてやめるように文句を言ってくる。


 門から敷地内をしばらく歩き、ひときわ高い棟へたどり着く。


 棟の入口にも衛兵が立っており、長槍を片手に直立していた。


 「メア・シアール。ただいま戻った。団長にご報告がある。」


 やはり俺と話すときとは違う雰囲気のシアール()がそう言うと、衛兵達はさっ、と門の前をどき、門を開錠した。


 衛兵たちが俺にも礼をしてくるので、軽く会釈だけして中に入る。するとやはり、メアは肩から荷が落ちたかのようにため息をついた。


「そんなに疲れるものなら、やめればいいものを」


「いえ、いいわ。立派な騎士たるもの、皆に見えるところの形からでも作っていくものよ」


 なるほど、メアにはメアなりの考えとプライドがあるということか。それならばもう何も言うまい。


「この棟は団長室と会議室、あとは幹部のプライベートルームがある最重要棟よ。私にはいいけれど、失礼はないように頼むわよ」


 わかっている、と頷き、廊下を進む。建物内は、白を基調とし、赤いカーペットや金の装飾品などで模様されており、いかにも整合な騎士団たらんといった雰囲気を漂わせていた。


 階段を上り、おそらく最上階につくと、大きな左右両開きの扉が姿を現した。


「……ここが団長室よ。今ならおそらく三騎士もいるわ。……入るわよ」


 いつになく緊張したメアがドアを叩く。中から入ることを許諾する返事が帰ってきた。


 扉を開き中に入ると、部屋の装飾こそ他と同じではあったが、厳格たる空気が一層強まった。


 最初にメアが何か言うかと思ったが、先に素早く口を開いたのは団長、ベルトロ・インウォーカーだった。


「──君が、タカミネハヤト君か」

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