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0.45:Terrain-01「古都」

Terrainナンバーは街、ダンジョンといった地形についての紹介を行います。

 ──スクランブル・レイダーの世界を紹介しよう。第一回は「古都」だ。


 初めに述べておくと、スクランブル・レイダーの世界に厳密な地名は存在しない。何故なら、実在する都市を拡張現実の力で背景にしているからで、それはこの先、何年と続くかもしれないゲームサービスの中で、時には新しいビルが建ったり古いビルが崩れたり──といった大きな変化が加えられると、世界観として地名を成す意味がなくなるからだ。

 故に、これらは都市名というより、一種の「地形パターン」となることを覚えていただきたい。

 無論、設定としても地名は一部を除いて存在せず、住人達は「赤い山の麓の街」みたいな呼び方をしている。

 ユーザーはリアルな地名で呼び合ってもいいし、新しく名前を付けてもいい。つまり、開拓するというわけだ。

 プレイヤーが冒険をしていくと、新たな地名は次第に充実し、広まっていくだろう。そこも本作における冒険要素の魅力の一つでもある。


 もう一つ説明しておこう。ホコテンでMRゲームを遊ぶ場合、タイトルに限らず自動的にゲームチャンネルという境界線がパーティ単位で引かれ、それぞれが別のゲームに侵入出来ないようビーコス側で調整される。ちょうど、水面に浮かべた油のようなものが動き回っていると考えれば分かるだろうか。

 その油のような境界線は、スクランブル・レイダー側の視点では何も見えないようになっている。先述の車道と同じように、質の違う油同士が近付くと、ビーコスが生み出した疑似本能によって、プレイヤーは動物の習性のように本能的な何かを感じ、嫌がって留まったり、或いは自覚せずに避けて通ったりするのだ。

 ちなみに、同じゲーム同士のゲームチャンネルが存在する場合、くっつくことも離れることも出来るし、互いの認識も可能である。



 さて、今回の「古都」と称される場所も、地形パターンの一つである。

 現実世界では寿ヶ谷駅の駅前。片道二車線の車道の両脇にお洒落なビルが立ち並ぶ繁華街をベースにしている。

 基本的にゲームプレイが禁止されている車道やその周辺については、川や海といった地形に置き換えられる。寿ヶ谷駅前で言うなら、水路だ。

 ビーコスとしても、ゲーム中は意図的にこの場所を超えるような操作が受け付けられないよう、先に述べた疑似本能により、強い恐怖や見えない壁といった処置で厳しく規制されている。


 古都が巨大な水路として機能している間は、歩道を含め、中央が窪んだ半円筒状の地面になっており、そこに水が通っている。

 その通行規制が解除されるのは、歩行者天国ホコテンになった時──正確には、ホコテンの入り口と出口に立つ電子ポールが設置されるタイミングだ。

 ホコテンが開始されると、まず入口と出口にある水門が閉ざされ、仕掛けによって水はけのいい石畳の地面が中央からせり上がり、本来の現実世界の車道と同じ形状の街道になる。

 この、巨大な水路兼街道の先には、駅前のスクランブル交差点、つまり、貯水池が存在する。無論、規制により、この部分に立ち入ることは出来ず、ホコテンの終点にはダムのような壁が築かれている。興味があるなら、ゲームプレイが可能な高所から確認するといい。


 周囲のビル群はそれを支えるようにして建つ古い住宅になっている。この世界の都市部における十階建て前後のビルは、だいたいこのような建物になると考えてもらっていいだろう。この世界独特の建造方式で、二、三階建ての屋根付きの家の上にまた違う家を建てていくというチグハグな増築をしているため、屋根の形を僅かに残したままその上に家が建っていく。

 古都は建造されてから数百年以上経過した背景があり、人が住まない替わりに魔物の住処になっていたり、或いは冒険者が宿として利用することもある。

 だが、当然ながらゲームとして機能しているのはショップを除いた一部の建物だけだ。その他は、ゲーム内においては入り口が破壊されていたり、長年の間に泥や瓦礫にくっついてしまっていたりと入れないようになっている。そもそもゲームが出来ない場所であるため、実際に入りたければ、まずゲームを終了しなければならないというわけだ。


 古都が栄えていた頃、水の引いた水路は人間族が舟から運び入れた物資を各建物に移動させる街道として使われていた。

 その後、種族間戦争により古都は滅び、水路としての機能を残したまま廃都となった。

 現在は小さな魔物たちが古びた建造物を棲家にし、水路の水が引いた時に現れては餌となる草や打ち上げられた小魚を好んで食んでいるという。

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