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召喚された魔王様

作者: じゅん

初めての短編を書いてみました。

相変わらず残念な脳から湧き出た妄想なので、緩く軽く読んで頂ければと思います。


 俺の毎日は同じ単調な日が続いていた、その日も同じ代わり映えのしない日が続く筈だった。


 いつもの日課で早朝から、闘技場で刀を一心不乱に振って鍛練していると、突然俺の足元に白く光る魔方陣が発現した。

 なんだ?と思ったら、俺は光に包まれた。


 眩しくて腕で目を覆い光が収束したので、腕を下ろし状況確認する。


 そこは何もない白い部屋で、床に魔方陣があり、その魔方陣の周りに人族の魔導師達数人座り込んでいた。

 俺は驚き目を見開いて呆気にとられてしまうが、驚いてる場合じゃないと思い、先ずは抜き身の刀を鞘に収め、着物の片袖を抜いていたので、腕を袖に通し身形を整える。

 そしてまずしなければならない事を考えて、今居る場所の位置確認を索敵魔法で行った。

 するとそんなに離れてない場所に見知った魔力を感じ、遠視魔法でその魔力の持ち主を見た。

 俺の国の宰相が、右往左往している。

 城の警備兵も青ざめた顔色で宰相と話をしているようだ。

 これは不味い早く帰らないとと思った所で、女性から声を掛けられた。


「勇者様お願いです、この世界を救って下さい」

 はい~?俺は目が点になる、そしてそのまま呆けた顔したまま、話し掛けてきた長い金髪で青い瞳の女性に聞いた。

「俺が勇者なのか?」

 女性がいい笑顔で答えた。

「はい、私がこの世界を救って下さる方を女神様に願い、女神様から選ばれ召喚されたのが貴方なのです」

 そう言って女性は目を輝かせながら、俺を祈るように手を合わせて見つめる。


 俺はその言葉を聞いて頭が痛くなる。

 こめかみを押さえつつ状況整理をする。


 うーむ、俺を召喚したのは位置確認の結果、隣国バサル国だ。

 で、この人は俺が人族で無いと判って・・ない?


「俺は人族ではないのだが」

「はい、異世界の方ですよね」

 え!?そこからか!自分で呼んでてわからないのか!?

 いや、まあバサル国の魔導師の力量で、どこからの召喚なんて分からぬか。

 しかし、まあ俺の見た目は人に近いが、目の色は金色で瞳孔は縦になってる、髪は銀髪、耳が少し尖っている。

 よって、近くで見れば人族で無い事がわかるはずなのだが。

 うーむ、素直に言ってしまうか?

 大丈夫か?襲って来たりは・・・うん、今は魔導師が魔力を使いきって動けなさそうだし・・・逃げれるな。


「いや、俺は異世界人ではない」

「えっ?!」

 その女性が驚いた表情をした。

 いや、その驚きのが驚くが。

「俺は・・・、隣国ソナル国の者だ、種族で言うと龍族だ、だから勇者では無い」

 案の定女性は固まった。


 周りの魔導師も這いながら、俺から距離をとる。

 騎士を呼ばれるのは困るので、この部屋に結界を張っておいた。


「おい大丈夫か?俺は帰っていいだろうか?」

 固まった女性の目の前で手を振り話し掛けた。


 はっと気が付いた女性は、にっこり微笑む。


「ふふふ、勇者様は冗談がお好きなのですね、でも、よくこの世界の事を知ってられますね、流石勇者様です」


 女性の言葉に今度は俺が固まった。


 ななんで?そんな解釈になるんだ?この人頭が残念な人なのか?


「あの失礼だが、貴方は誰なのだろうか?」

「あっ自己紹介がまだでしたね、私はバサル国の王女であり巫女のマデリーヌと申します、よろしければ勇者様のお名前を教えて頂けますでしょうか?」

「いやだから勇者じゃないが、名はアッシュだ」

「では、アッシュ様、私の父にアッシュ様をご紹介したいので付いてきて頂けますか」


 なっ?!俺の言った事冗談と本気で思ってるのか?それともこの王女さん種族関係ないのか?いや召喚した勇者と思っているからか?あーそれが無くても同じ対応をしてくれれば出来た王女さんだが、後者の理由だろうから残念な王女さんだ。


 流石に王は俺を勇者とは認めんだろう、そうだ今まで会うことも出来なかったんだ、折角だ来たついでに少しでも話をして、不可侵条約でも結んで貰えないか提案してみようか。


 王女では話にならないと思った俺は、前向きに王に会う事が出来る機会だと思い直し王女に付いていった。


 *****


 謁見の間に入った俺を見て、バサル国の重鎮達が驚き、どよめいている。

 うん、やっと予想通りの反応で安心した俺。

 普通の反応をありがとうと重鎮達に思う。


 王女の後ろで一応片膝をついた俺に、重鎮達や王がますます落ち着きを無くしている。

 王女が俺の事を王に紹介した。

 そして俺は立ち上がり王を見据え、魔王として話し掛けた。


「バサル国の王よ、お気づきだと思うが、私は勇者ではない。

 マデリーヌ王女にも申し上げたが、隣国ソナル国の者だ。

 突然魔方陣で此方へ召喚された、今回ソナル国から抗議する事はないが、一つ提案がある、常々書簡を送っていたが、一向に返事を頂けなく残念に思っている、まあ、私の誠意が足りなかったのだろう、こうして私が来たのは、こちらの女神の思し召しのようだし、両国不可侵条約を一年間だけまずは結んでみてはどうだろうか。

 その後毎年話し合いの場を設けその都度条約を結び、少しずつ我々の事をわかって貰えればと思う」

 そしてここで一息入れて、改めて一礼をして言う。

「申し遅れたが、私はアッシュ・ゴールフィン龍族の王であり、魔国ソナル国の王でもある、そして魔王と呼ばれている」

 改めてバサル国の王を見ると、あわあわしていた。


 はぁ駄目か、びびってるな、他に話が通じる者は居るかと、ちらりと周りを見ると一人だけ冷静に俺を見る人物がいた。


 するとその人物がゆっくりと俺へと歩み寄り、片膝をついて礼をした。

 俺が立つように促すと、その人物立ち上がり話し出した。

「アッシュ魔王様申し訳ありません、カール王もびっくりしてしまい、お返事も出来ず、私ではお役不足かと思いますが、お話をさせて頂いてよろしいでしょうか?」

「失礼ですが貴方は?」

「私はバサル国宰相をさせて頂いてます、ワイスと申します、まずは、この度のご無礼をお許し下さい、言い訳にしかなりませんが、今回の召喚は王女が独断で行ったのです、何回か召喚を阻止していたのですが、今回は間に合わず、アッシュ魔王様をこちらに・・」

 ワイス宰相はなんと言ったらいいか悩んでいるようだ。


「いや、気にしなくていい、先程も申し上げたが今回の事で抗議する気はない、その代わりと言ってはなんだが、先程カール王にお話しした事を検討頂ければと思う、この状況ではあなた方も落ち着かない様だし、私は一旦失礼した方がよさそうだ、一ヶ月後よい返事を頂ければと思う」


 ワイス宰相が一礼して俺に言った。

「寛大なご配慮有り難うございます、私からカール王へ進言致します、一ヶ月後私が責任持って貴国にお伺いしますので宜しくお願い致します」

 うん、少し話が出来る状況になって良かった。

 残念王女のお蔭だなっと思っていたら、その残念王女から声を掛けられた。


「アッシュ様、先程のお話はどういう・・・」

 まだわかってないのか、この残念王女さんはと思っていたら、慌ててワイス宰相が王女に注意する。


「マデリーヌ王女、この方はソナル国の王のアッシュ魔王様です、貴方は隣国の王を誘拐したのですよ、事の重大さを考えて下さい、先ずは無礼をお詫び下さい」


 えっと驚いてる王女、しばらく固まった王女は置いておき、後はワイス宰相が後始末をしてくれるだろうと思い、帰ろうとした時腕を掴まれた。

 はっ?と掴まれた腕を見て、手の主を視ると残念王女だった。

 その後ろではワイス宰相が顔色を無くしていた。


 残念王女は俺ににっこり微笑み話し出した。

「私、わかりましたわ、アッシュ魔王様が召喚された理由、私と結婚をする為ですわ!」

 どや顔で言い切った王女。


 俺は呆れた表情をし、ワイス宰相は驚愕の表情で両手で頭を抱えていた。

 しかし俺と目が合ったワイス宰相は、はっと表情を引き締め、王女を俺から引き離し、冷静になった他の重鎮二人が王女をがっちり掴んで拘束した。


 ワイス宰相が俺に頭を下げて言った。

「誠に申し訳ありませんアッシュ魔王様、王女には私からよく言い聞かせて後日お詫び致します」

 頭を下げるワイス宰相を気の毒に思いながら労う。

「ワイス宰相大丈夫だ、頭を上げてくれ、気にしてない、なんと言うか貴殿は苦労性だな、では、私は帰るので、一ヶ月後貴殿に会えるのを楽しみにしている」

 そして俺は転移魔法で自国に帰った。


 *****


 執務室に転移魔法で現れた俺を、丁度執務室に居た宰相のカイルが涙目で俺に近づいた。


「魔王様!どちらに行かれてたのですか!皆心配して魔王様を探して居たのですよ!!」

「落ち着けカイル悪かった、先ずは冷静に俺の話を聞いてくれ」

 そう言いながら俺は自分の机の椅子に座る。


 少しして落ち着いたカイルが俺の前に立った。


「魔王様、ではご説明をお願い致します」

「俺は隣国バサル国の王女の勇者召喚魔法で呼ばれて、バサル国に行っていた」

「なっ!?なんと言う事を!」

 カイルが拳を握りしめプルプルしている。


 俺は手を前にだして、ちょっと待てと示し話す。

「まあ、実害は無かったから大丈夫だ、折角今まで会うことも出来なかった隣国に呼ばれたんだ、それを利用して不可侵条約の提案をして来た、一カ月後使者が来るだろう」


 カイルが疑り深く俺を見る。

 まあ、そうだろうな、俺も半分位しか信じてないが、初めて見たが、バサル国の重鎮は無能では無さそうなのだが。


 魔国ソナル国は五年程前に出来た国だ、バラバラだった古代の森に住んでいた種族が纏まり、一つの国になった。

 それから隣国バサル国に書簡を送り、話し合いをしたいと送っていたが、バサル国からは返事は来なかった。


 理由は恐らく俺達は人族より力も強いし、魔法も上位魔法を使う者も多いが、一番の理由は俺達の姿かもしれない。

 人族とはかけ離れていることが恐ろしいのかもしれんな。

 何はともあれ、お互い会って話し合い、お互いに譲歩しなければ何も始まらないしわかり会えない。

 今回の事で少しは状況が変わるだろう。


 そう思うと、あの残念王女は実はこの様な成り行きを見越しての行動だとしたら・・・いや・・・無いな。

 王女の話し方表情や行動を思い返しても、深く考えての行動とは思えん。



 *****



 一カ月後、バサル国より使者がやって来た。

 バサル国とソナル国の間には深い森が広がっており、その森は古代の森と呼ばれていて、大型魔物や凶暴な魔物がいる。

 この森が境界でソマル国の領地となっている。

 その境界には結界を張っており、それに触れるとソマル国の警備兵が駆けつける。


 そして、まさに今結界に触れられたので十人の警備兵と後方に暗躍部隊が四人潜んで、結界に触れた者に接触した。


「ここからはソマル国の領土となる、貴殿達は何用で来られたのか?」

 部隊長がその者達に問かけた。


 その者達は人族でその中の一人が部隊長に向き合い一礼して話だした。


「私はバサル国の宰相ワイスと申します、本日はアッシュ魔王様に先日のお詫びと、これからの両国の為の話をさせて頂きたく参った次第です」

 話を聞いた部隊長も一礼をして答えた。


「先程の非礼をお詫び致します、ワイス宰相様、アッシュ魔王様より伺っております、ここから王城へご案内と護衛をさせていただきます」


 そうして無事ワイス宰相達はソナル国の王城へ到着した。



 知らせを聞いた俺は、カイルと見合わせて驚いた。

「本当に来たのか、いや、ワイス宰相なら約束を破る事は無いだろうと思っていたが、他の重鎮や王を説得出来なければ来たくても来れないだろうと思っていたが」


「これで少しは関係が良くなるといいのですが」

「うむ、早速挨拶だけでもしておこう、実質的な話は明日にしよう」


 *****


 ワイス宰相達が王城に到着して少ししてから、謁見の間で会うことになった。


「お疲れの所申し訳ない、ワイス宰相が本当に来て頂けるとは嬉しい限りだ、今日は顔合わせの挨拶だけで後は休んでくれ、こちらが、我が国の宰相のカイルだ」

 カイルが一歩前に出て一礼する。


「初めましてソナル国の宰相をさせて頂いております、カイルと申します、我が国に来て頂きありがとうごさいます」


 顔合わせが終わったと思ったら、ワイス宰相の後ろに居た女性が前に出て膝をついた。


 ワイス宰相が慌てている。

 うん?と俺が首傾げていると、女性が顔を上げた。

 あっ残念王女のマデリーヌ!

「アッシュ魔王様、お久しぶりでございます、バサル国王女マデリーヌでごさいます」

 にっこり微笑みを俺に向ける。

 思わずピクリと顔が引き吊った俺は、ぎこちなく微笑み言った。

「マデリーヌ王女も来てくれたのか、明日はいい話し合いが出来そうで嬉しく思う」


「アッシュ魔王様、もし、お時間がありましたら、私に城内を案内して頂けませんか?無理にとは言いませんが」


 そう言いながらマデリーヌ王女は、にっこりと俺に微笑む。

 俺はそれくらいなら良いかと、仕方ないとそれに答えた。

「わかった、明日の午後に案内しよう」


 *****


 翌日会談が行われた。


 ワイス宰相とマデリーヌ王女が席に座る前に頭を下げた。

「先ずは、先日のお詫びを申し上げますアッシュ魔王様、これ迄の王女の非礼をお詫び致します」

「いや、その件は本当に気にしてない、それに、マデリーヌ王女のお蔭でワイス宰相と会談が出来るのだ、こちらとしては悪くなかった」

「そう言って頂ければ私も気が休まります、ありがとうごさいます」


 どうぞと席を進めて話をする。

「一つ教えて欲しいのだが、これまで我が国から、書簡を届けていたのだか、返事を頂けなかったのは何故だろうか?」


 ワイス宰相が言いにくそうに、居心地悪そうにしている所に、マデリーヌ王女が話し出した。


「愚かな事に人は、己と見た目が違う者を恐れますから、また、未知の地へ足を踏み入れるのも怖いのです、それが責任が有る者であれば有る程、ですから、私は失礼ながらアッシュ魔王様を召喚しました、貴方が一度来て頂ければ、我が国も漸く動くと思ったのです、申し訳ありませんでした」

 再度マデリーヌ王女が俺に頭を下げた。


 俺はほぉっと驚いた。

 マデリーヌ王女は俺を限定して召喚したのか、魔力は魔導師に借りて魔方陣を再構築したのか、興味を持ってマデリーヌ王女を改めて見る。

 今までと違う雰囲気を纏ったマデリーヌ王女は凛としていた。


 ワイス宰相も驚いている。

 マデリーヌ王女はバカな王女を演じていたのだ。

「貴方なら、賢王として貴国を導けるのではないか?」

 俺の問に微笑みでスルーした王女。


 その後、午前中に話はある程度纏まった。

 昼食を四人で取り、その後約束通りマデリーヌ王女を案内する。


 先ずはオーソドックスに王城の庭園だ、まあ、俺に女性のエスコートは無理なのだかな、やったこと無いから、だから今も並んで歩いているだけだ。

 それを気にする事なくマデリーヌ王女は楽しそうにしている。


「綺麗な庭園ですね、見たこと無い花があります」

「気に入ったのであれば、持って帰るか?」

「いえ、この花はこの場所に居るから綺麗に咲けるのだと思います」

「貴方は、どうしてバカな王女のふりを?俺もすっかり騙されたが」

「王女では政治に口を出す事は出来ません、変に意見すれば私は疎まれ、直ぐに道具として嫁がされるでしょう、いえ、そうでなくても王女は嫁いで、その先での縁を繋ぐ道具でしかありません、その前に気になる殿方に一目会いたいと思ったのです」

「あなたに思う人がいるのか?」

「はい、アッシュ魔王様ですよ」

 言われた俺はしばし固まった。


「はっ?!しかし、俺はバサル国に行ったことないが?」

「ええ、私は貴方が書かれた書簡を全部読みました、一通目は簡潔に書かれていて、二通目は此方を気遣われ、三通目は此方への気遣いと貴方の考えを、四通目は此方への気遣いと貴方の思いを、私は返事も返さない我が国に優しく気遣い、根気よく信念を持って対応される貴方に一目お会いしたかったのです」


 俺を見て嬉しそうに微笑むマデリーヌ王女。

 俺は人の深層心理を読むのが得意だったのだが、すっかり騙された。

 まあ、魔法で心を読んでいたら解ったのだろうが、基本仕草や表情で読むからだ、今まで外した事なかったのだが、おもしろい女性だ。


 そういえば始めからマデリーヌ王女に俺は翻弄されていたなと思い、これ迄の事を、今日マデリーヌ王女が話した事を踏まえ思い返すと心がざわりとし、今までに無い感情が溢れてきた、ああそうかと思い思わず笑いが漏れた。


「ふふふ、ははは、そなたは面白く思慮深い女性だ、さて、実際に会った私はどうだ」

「ええ、私の思った通り、アッシュ魔王様は相手の事を考え、思いやりのある優しい方ですわ、アッシュ魔王様はやはりもうご結婚されてるのですか?」

「うん?いや、していないな、だが・・・」

 そう言ってじっとマデリーヌ王女を見ると、俯いて何か言いにくそうにしている。


「では、あの、もし「マデリーヌ王女、貴方は種族が違っても気にしないのであれば、私の妻になって欲しい、どうだろうか?」」

 俺は我慢出来なくなり、マデリーヌ王女の言葉を遮り婚姻を申し込む。

 マデリーヌ王女が驚いて目を見開き俺を見ている。

 そして、うっすら目に涙を貯めた。

 そして、少し震えた声で答えた。


「はい、私でよければアッシュ魔王様と共に居させて欲しいです」

 俺が差し出した手に、マデリーヌ王女が手を乗せた。

 俺はその手をキュと握り膝をついて、マデリーヌ王女の手の甲にキスをして、結婚の申し込みをした。

「私、アッシュ・ゴールフィンは、マデリーヌ王女に婚姻を申し込む」

「はい、マデリーヌ・シルベルタは、アッシュ・ゴールフィン様の求婚をお受け致します」


 マデリーヌの返事に、俺はにっこりと微笑み言った。

「貴方には可哀想だが、もう俺から離れる事は出来ない、俺かマデリーヌから離れられなくなったから、マデリーヌが離れてしまえば俺は狂ってしまう」

 そして俺は立ち上がり、そっとマデリーヌを抱き寄せた。

「済まない、こんな俺は嫌か?」

 チラリとマデリーヌを見ると耳が真っ赤になって、あっうっと動揺している。

 嫌がってはいない事に俺はホッとした。

 もう既にちょっとでも嫌がれたりしたら、俺は確実にへこむだろうし、みっともない醜態を晒すだろう、それは龍族の習性と言うものだ。




 龍族は滅多に誰かを好きにならない、生涯で伴侶は一人しか愛さない。

 だからか、その一人を見つけ伴侶になると、その人を激愛してしまう、今まで既婚の龍族が、何故あれ程伴侶の事になるとデレデレになるのかとと思っていたが、今わかった。

 片時も離れたくないと思うこの思い。

 俺は今、勇者召喚されて良かったと思った。


 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 その後バサル国の王女がソマル国のアッシュ魔王に嫁ぎ、両国は徐々に親密になり、後に同盟を結ぶ事になる。


 長い治世をしたアッシュ魔王とマデリーヌ魔王妃は、子供にも多く恵まれ、隠居した今も仲睦まじく、子供達に人目の有る所でイチャイチャするなと怒られる日々だそうな。


最後まで読んで頂きありがとうございます。

少しでも楽しく読んで頂ければ幸いです。


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