冬はスウェットが好き
「着いたぞ」
目の前には大きな門。
和風には程遠い洋風な門。
そして、いつの間にか彩と距離を取っている兵隊たちにやっと気付く。
「遠くない?」
彩の問いかけに
兵隊たちは気のせいか冷や汗のようなものを掻いている。
「口を閉じろ。」
兵長のきつめの口調に
なによ夢の中の住人のくせに
と小さく悪態をつく
聞こえているかいないかは分からないが
兵長は構わず
「主上、連れて参りました。」
「入れ」
気品のある澄んだ声が門の中から聞こえてくると
門が開いた。
そこには
銀髪の綺麗な顔立ちの男性が
立派な椅子に座ってこちらを見ている。
髪の毛は腰ほどはあるだろうか。
少し遠目でも
主上と呼ばれるであろう気品を持っているのが分かった。
「ここに来なさい」
指定された位置へ彩は連れていかれる。
私ってつくづくイケメン好きなんだなぁ。
そらもう2年も彼氏もいないし
夢の中くらいイケメンと話したいわな、うわっ、睫毛長っっっ!!
切れ目ー!かっけー!!!
長髪でこんなカッコいいて思ったの生まれて初めてー!!!
「黒髪の女。名はなんという?」
目の前のイケメンに内心興奮していたことは
バレていないようだ。
「田中 彩です」
「珍しい名だな。その黒髪は生まれもったものか?」
「そうですけど?」
ふむ、となにやら考え込む男に兵長がなにやら耳打ちをしている。
すると銀髪の男は目を見開いた。
「その着ている物は、、普段着なのか、、?」
「そうですけど、、」
「なんと、、、!!!」
驚愕する男に
彩は怒りが沸いてきた。
「えっ、てかなんなの?あんたたち私の夢の中の住人のくせにさっきから人のこと黒髪黒髪言ったり服装のこと言ったらそーやって驚いて見せたりなんなの?ケンカ売ってんの?
てゆーかTシャツにジャージとか最高に楽だしくつろげるしまさに夢見心地ワンダーランドじゃん!?この服装のおかげであんたたち出現できたの!分かる?」
「てぃしゃつ、、?わんだあらんど、、、?」
「そう!!この世で一番リラックスできる服装よ!!非リア充専用服よ!!冬はスウェットが好きだけど!!」
そう、今は春だ。
彩の迫真の演説に
しん、、と静まる。