一触即発?
グラトニーの出現によって、食堂内にピリピリとした空気が流れ始めます。
イロハは知らない事ですが、このグラトニーと言う男は最近現れたゴロツキを纏める貴族であり、そしてグラトニー本人が語るよう冒険者の中では一番の希望の星なのです。
「グラトニー様、申し訳ありません。これは私と、私の家族が今日を。そして明日を生きるために必要なものなんです」
カノンは、相手が貴族だからと言うこともありあくまでも敬語を使っていますが、その態度はどう見ても反抗的な様子でした。
グラトニーはそれを嘲笑うかのように言葉を返します。
「知らねえよ、そんなこと。この貴族である俺様が寄越せと言ったんだから、貧しい貧しい家の出であるお前は黙って差し出しゃぁいいんだよ。なぁ、お前らもそう思うだろ?」
いつの間にかグラトニーの回りに居た取り巻き達は、我が身可愛さのせいか、それとも盲信しているのか肯定の声が食堂内に響き渡ります。
そしてその声を聞きグラトニーは、どうだと言わんばかりのドヤ顔でカノンを見ています。
ですが、イロハはそこで黙って見過ごす事も出来ませんでした。
「のう、グラトニーとやら」
否、神様だからこそ、と言ってもいいのかもしれません。
「お主は貴族だから偉いと思っているんじゃな?」
「当たり前だろう、小娘。しかし貴族である俺様に対して言葉がなってないな。どれ、俺様の家でこってりとその体に刻み込ませなきゃあいけねえなぁ?」
「イロハ、すぐにグラトニー様に謝って! お願いだから!」
グラトニーはイロハをニタニタと穢らわしい笑みを向けると、カノンはイロハに駆け寄って体に抱き付き、懇願します。
ですがイロハにはグラトニーが貴族だなんてどうでもいいことなのです。
「なら、仮に私が神様だとしたら? そうしたらたかが貴族であるお主なぞ、とてつもなくちっぽけな存在よな?」
「小娘、お前は俺様も虚仮にして楽しむのは、後でどれだけ酷いことが起きてもいいって事だよなぁ?」
こめかみに青筋を浮かべ、ピクピクとひきつった笑みを見せるグラトニー。どんな時でも笑顔を浮かべているのは、常に余裕を見せ付けて相手にプレッシャーを与える為なのですが、今回に至っては完全に道化。
幼い見た目の狐の少女と、小太りでてっぺんハゲな脂ぎった男のやり取りに、さっきまでグラトニーの言葉を肯定していた野次馬達は、一触即発の空気の二人から目を離せないでいました。
「酷いことか……ふっ、出来るものならやってみるとよい。もっとも、お主がこの私に指一本触れる事など出来ぬであろうがな」
イロハの挑発に煽り耐性たったの五のグラトニーは、大声をあげながらまっすぐイロハに殴りにかかったのでした。
グラトニー、嫌な奴だなぁと思いつつ、楽しんで書けるキャラです
基本敵キャラとかゲスキャラは書くの好きなので←