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狐ロリ神様はおいなりさんがたべたい。  作者: 凪狐
一章 狐ロリ神様、異世界へ
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カノンとルピアの昔語 三

 緑色の皮膚は黒く歪み、口元にはだらしなくヨダレが垂れて、大男と同じぐらいではないかと言う体躯。ゴブリンキングと言われる、ゴブリンリーダーすら統率する魔物。

 ゴブリンキングは女子供の中で一際目を惹く真っ白な少女。ルピアに狙いを定めると、一直線に走っていきます。

 恐怖で動けないルピアは為す術もなく捕まってしまいました。


「ルピア!」


 誰よりも先に、ルピアの身を案じるカノン。ルピアはもがいて逃げようとするものの、それは叶いません。

 ゴブリンキングはルピアの頭を飲み込むのではないかと言うほどの、巨大な口で迫ります。


「……やだ、来ないで、来ないで、私に、触れないで――」


 赤い瞳はゴブリンキングのヨダレでべとべとの口内を映し、そしてこれからどうなるかを悟ります。

 それでもルピアは叫びます。赤い目が真紅に染まっていき、


「――オレ(・・)に触れるなぁぁっ!」


 叫ぶと同時に、無音。

 沈黙。

 静寂。

 遠くで聞こえていたゴブリン達の争う音も、家が燃えて倒れる音も何もかも。不自然な程に何も聞こえなくなりました。


 それもそのはず。何故なら、ルピアを掴んでいたゴブリンキングの体を伝って丘も山も川も村も、家を焼く炎ですら。全てが氷の白に染まっていたからです。


「ルピア!」


 カノンがルピアに駆け寄ると、ルピアは気を失って地面に倒れました。少しして村へ走って行った男衆は、全てが白くなる異変に、何かあったのではないかと引き返してきました。

 そうして凍り漬けにされたゴブリンキングと、倒れているルピアを見た男衆は驚き、カノン達は目の前で何が起こったのかを頭の中で噛み砕きながら説明するのでした。



「結局村の氷が溶けたのはそれから二ヶ月後、か……」


 カノンはつい去年起きた出来事を思い出し、独りごちます。

 あの時、ボクが早くルピアを助けていれば、ルピアは村の中で孤立しないで済んだのに……!

 カノンは、自らの弱さに苛立ち、血が出るのではないかと言うほどの力で手を握ります。


 結局あの後、ルピアに触れると氷漬けにされる。真っ白なのは悪魔の血を引いてるからだ、と揶揄されて村で孤立してしまいました。強大な力を。ゴブリンキングに襲われた時に氷の、全てを凍てつかせる魔力に覚醒したからです。

 そして、孤立することをルピアは受け入れてました。

 畑や川が凍って村の収入が減り、それらは全てルピアのせいだと。悪者を一人決め付けて、村を無理矢理平穏に見せる。村人達はそう言う風潮を作り、ルピアは親友のカノンにまで意識が向かないように離れるようになりました。


 そして、それからおよそ十ヶ月後。カノンがイロハと会う三ヶ月程前。

 カノンが食堂でイロハに説明したように、カノンの家は収入源である作物は、畑が凍ってしまい収穫が出来ない事によって生活が苦しくなります。そうしてカノンは冒険者になることを決めたのです。


 ですが、一人だけ。説得をする事が出来ない人が居ました。


「ルピア。ボクは冒険者になるから」

「ダメだ。オレが悪いんだからオレが冒険者になって、稼いで、それでもってカノンの家を。村を助ける」

「ルピアは悪くないでしょ。だって、あの時ルピアが頑張ってくれたから、今こうしてみんなが生きて――」

「そんな事は終わった事だ! ……オレがもっと力をコントロール出来てれば、良かったんだ」

「……っ! もう、いいよ。とにかくボクは、冒険者になって稼ぐから」


 それが、カノンが村でルピアとした最後の会話。

 カノンはベッドで横になって窓から覗く月を見上げます。


「ボク、冒険者になったんだよ……でも、全然ダメダメだけど、ね……」


 そう呟くと、月に背を向けるように横になって、静かに目を閉じました。


これで過去編はとりあえず終了です。

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