悠葵が巫女になったワケ
前回の話のつづき
「さて、次は私が巫女になったわけですね」
神妙に、厳格に、尊大に。次の台詞を言うまでたっぷりと時間を開けて、口にします。
「巫女と言う神聖なものに、私がなりたかったからです!」
「……はぁ?」
「……む?」
たっぷりと時間を使ったからこそ、語られる話は呆気なく終わり、二人は目を点にしたのです。
その様子を見て、悠葵はぷくーっと顔を膨らせます。
「なんですか、その反応は! 私がやりたい事をやってるんです。私はそれで満足なんですよ!」
「いや、確かにその通りなんじゃがな。さっきあんな大見得きって悠葵の知らない裏側を話すなんて言ったのに、これっぽっちも裏側で口を出せるところも無しに。私は色々と悲しいのじゃ! だから悠葵が巫女になった理由で実は裏側で私がこんな事をやってた、みたいに話したかったんじゃよ!」
竹箒をギュッと握り締めて抗議する悠葵に、尻尾の毛を逆立ててこちらも抗議で対抗するイロハ。
「それは神様が単に喋りたいだけじゃないですか! 私はカノンさんに分かりやすいように話を纏めただけです」
「なっ、なにをぉぉ! でも私は知ってるのじゃよ。お主の口調がやけに仰々しいのはお主が好きなら、ら……」
「ラノベですね」
「それじゃ。さすが悠葵! って褒めてもそれ以外は何も出さないのじゃよ!」
カノンは今朝の、クエストに出る前の自分の部屋とは様変わりした有り様に、実家の事を思い出します。
双子の妹と弟。あの二人も目の前に居るどこか不思議な二人と同じように、よく騒いでは両親に怒られ、そして自分の胸の中で泣く。そして元気付けて明るい二人が戻ってくる。これが冒険者となる前までのカノンの日常でした。
「ふふっ、ふふふふっ」
気付けばカノンはお腹を押さえて笑っていました。
じゃれあいともとれる口論をしていた二人は、いきなり笑いだしたカノンに意識を向け、それでもカノンは笑っていました。
「ははは、あははははっ」
「おーい、カノンや? いきなりどうしたのじゃ?」
イロハは、いきなり不気味に笑いだしたカノンに堪らず聞きます。
聞いた内容は悠葵も気になった事だったらしく、隣でコクコクと頭を上下に振ります。
たとえさっきまで些細な事で言い合っていても、十数年間、親子のような。いや、それ以上の絆で引き合ってきた二人にはお互いが何を言いたいのか。その程度の事ならある程度は分かっていたのです。
「いや、ちょっとね。あははっ。なんか、家族っていいね」
カノンの言葉に、イロハと悠葵は互いの顔を見合わせます。そしてカノンの笑いが二人にも移ったように笑い始めます。
「そりゃそうじゃ。だって」「そうですよ。だって」
二人の声がハモります。
「家族、ですから」
リアルでは台風が大変な事になってますね。
読んでくださった方々。特に東北の皆様。どうかお気をつけくださいませ。




