おいなりさんを探して
童話っぽいのは仕様です←
神様はおいなりさんを求め徘徊――さ迷い歩いていると、森の中に居ました。
風で揺れる木々の葉や、小鳥のさえずりが聞こえます。
その中で耳をつんざくような甲高い悲鳴が上がります。神様はそれを、艶のある毛並の耳をピクピクさせながら聞き取りました。
いくらお腹が減ってるとは言えそこは神様。悲鳴を聞いてもそのままには出来ません。
場所は分からずとも悲鳴が聞こえた方角へ行けばきっと見つかるだろう。神様はその考えでひたすら走って行きました。
「大丈夫か、お主!」
神様が走っていった先には神様より少し背の高い女の子。褐色肌に銀糸のように光輝く髪。気の強そうな緑色の瞳には涙がたまっています。両手両足に半透明のぷるぷるとしたジェリー状の触手が絡み付いて、これからどんな結末を向かえるのかを察してしまったのでしょう。
「待っておれ。今助ける!」
このジェリー状の触手を操っているのは、ゲームなんかではお馴染みのスライムと言うモンスターです。ただゲームなんかと違う点と言えば。
「はあぁぁぁっ!」
神様は自慢の脚力を活かしスライムに跳び蹴りを見舞います。ですが。
ふにょん。
跳び蹴りを繰り出す神様のちっちゃな御御足は、スライムのぷるぷるボディに当たった瞬間に衝撃を吸収されてしまいます。そして、あろうことかそのぷるぷるボディに突っ込んだままとなってしまいました。
「キ、キミ! 魔法とか使えるなら使って!」
叫ぶ声は両手足と触手で拘束されている褐色の少女です。
神様は魔法か、と思案します。幼女ながらも狐である神様は火と幻覚を見せる事を得意としますが、果たしてこれは魔法なのか、と。
ですが迷っていれば状況は悪くなっていく一方。神様は祝詞を唱えます。それは火の玉。俗に言う狐火と言うものでした。
「これでどうじゃ!」
業々と燃え盛る火はスライム本体に直撃し、その身を焦がしていきます。
そうしてスライムの中にある核が燃え尽きると同時に、触手はその形を崩して褐色少女が土の上にドサッと落ちました。
「ふぅ、なんとかなったの」
神様は、スライムのぷるぷるボディで濡れたスベスベの足を、着ているパジャマ越しに、出来るだけ火力を抑えめにした狐火で乾かしています。
「お主は大丈夫か? ケガは無さそうじゃが……」
「あ、ありがとうございます。助けてくれて」
褐色少女は神様に頭を下げます。フワリとした銀色の、腰まである長い髪が重力に従って地面に付き、神様はもったいないと言う気持ちでいっぱいでした。
「ボクはカノンと言います。冒険者をやっているドワーフです。キミは?」
「え、私? 私は……なんじゃろうな……?」
カノンと名乗る褐色少女の自己紹介と質問に、名前等無い神様はただただ戸惑うばかりでした。