聞き覚えのある名前
「人間ってやっぱりバカなこと…考えるよね。」
機械みたいな声が耳元で聞こえた。
そしてその後にツンツンと頬を触られる感触。
それでも、その手には何か違和感を感じた。
人の温もりが感じられなかった。
冷たい、そうとしか言いようがない。
と言うか、ここはどこだ?
私は確か…瑠樹と下校していたのだ。
それで……ダメだ、思い出せない。
叶えなくてはならない約束があったはずなのに。
でもまぁ、覚えていなくても平気だろう。
「オーイ、人間さん?」
「起きてないんでしょう。止めてあげなさい。」
「うぇー?」
人間さん、とは私のことだろうか。
だが、それだとこの声の主が人間では無いみたいな。
人間じゃないのか?
声が先程もいったように機械染みている。
考える私とは違って不平不満を洩らすその声は、なんだかんだ言って何かが嬉しいらしく笑っていた。
機械なのに、笑ってる。
顔を見ずに私は機械だと決め付け話を進める。
「それにしても、ユイ?起きてるんでしょう。」
「姉さんも起こしてるじゃん。」
「しょうがないでしょう。後がつまっているのよ。」
「次は誰だっけ。柳……蓮?」
聞き覚えのある名前。
ピクリと反応してしまう。
寝ているふりを突き通そうと思っていたのに。
起きてる~、だなんて機械さんが笑っていた。
それもまぁ、嬉しそうに。
「起きて、ます。…と言うか、ここどこです?目隠しも解いてくださいよ。」
「嫌だよ~。」
私の言葉に対し、即答とも言える早さで返してくる機械さん。
「それに私、機械さんじゃないよ~。キカイだよー。」
「あ、生身の人間なんですね。」
「そりゃねぇ。ここにいるのは転生者だけだし。」
「あ、取れた。」
「ちょっ、なんでとってんの?」
キカイさん?の話を聞きながら適当に目隠しを弄っていると解ける。
慌てたような声も聞こえたけど今は、そう前を見ることが最優先です。
「はうあ……見られたぁ……っ!!」
「はうあってなんですか。」
「キカイさんの口癖さ。」
「自分のことキカイさんって呼ぶんですね。」
「まぁね。キカイさんはキカイさんだし。」
目隠しを解いて一番最初に目に入ったのは銀。
それから金。
それプラス白。
白は背景。
と言うか、背景全部真っ白ってなんなの。
2次元かよ。
「あぁもうっ!!私の声が聞こえた時点で合格っ!!ほらいくよっ!!」
「キカイさんっ!?蓮さんも連れてって!!」
キカイさんが私に見られたことに気づいたらしく、ため息をつく。
そして徐に私の手を掴み駆け出す。
と言うか、走っても何処にもたどり着かないのでは。