かごのとり
研究所の中にはガラスで造られた小部屋が二つ、その中に少年と少女が一人ずつ入っている。ガラスの部屋の上部には、無数のケーブルやダクトがついている。その姿は、大樹のようであり、研究所の天井につながっている。その天井には、黒い大きな箱の様なものがあり、時々カタカタと音をたてていた。
「被検体零の体調に異常はないか?」
「体温 血圧 心拍数 脳波 異常なし。」
「意識レベルAと確認。」
「よし、実験室の酸素環境を17パーセントに設定し、空気中の粒子をPM2.5に変更して、24時間モニタリング!」
「了解しました。実験室内の環境を変更します。」
「酸素濃度19から17に変更。変更を確認しました。」
「空気中の粒子設定をPM2.5に設定します。」
「引き続き、室温20度、湿度50パーセント。」
「モニタリング開始、9時31分25秒。」
「12時31分まで、45分間隔で被検体の確認、それ以降は3時間置きに確認します。」
「MAMAの変化を確認、免疫機能レベル3からレベル4に移行、心肺機能の変化を確認。」
「被検体零、異常ありません。」
「私は、10時より会議になるので退出するが、後のことは、主任の日比野くんの指示に従ってくれ。日比野くんあとを頼む。」
「教授お疲れ様です。」
少女はガラス越しに研究員の姿を観ていた。
四人の男たちがなにやらキーボードを叩きながら、話し合っている。
すると、急に息苦しくなった。同時に身体の中が熱くなってくる、背筋の辺りが、ニクロム線が巻かれたように熱くなる。 「?」
しかし、それは一瞬で治まり、息苦しさもなくなっていた。
あの男たちがいるときはいつもそうだ。
息苦しくなったり、寒くなったり、暑くなったり、喉が痛くなかったりする。
そして、身体が熱くなってきて気がつくと、何でもない。
彼等は、いつまで私をこの箱のなかに閉じ込めているのだろうか?
「ココカラデタイ
自由になりたい。」
少女は強く願った。
少年はただ眠っている。
いや、昏睡状態になっていた。
ガラス箱の中の彼らには、人工的に造られたウイルスが投与されていた。
少女は、記憶の一部を失いはしたものの、意識ははっきりしている。
しかし、少年の方は意識を失ったままでいた。




