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青い空が見たくて  作者: カンクン
13/21

イキテ

「うっ…」

零は意識を取り戻す。

周りは瓦礫だらけだった。

彼女は何かの影があるのを背後に感じた。

「はっ、壱…壱なの?」

急いで後ろを振り返ると、黒く焼けた炭の塊が立っていた。

「壱?嘘よ!壱は、壱は…」

彼女は、周りを見渡すが、人の気配はなかった。

「そんな、そんなことって!」

彼女は力なく倒れこんだ。

「壱〜〜〜〜〜!」

涙を浮かべ、小さな白い手で大地を鷲掴みにして、全身から吐き出す様に叫び声をあげた。


「レ…イ…」

微かに響くその声に彼女は振り返った。

「壱…どこ?」

虚ろな表情を浮かべながら、周りを見渡した。

しかし、彼の姿は見あたらなかった。

黒い炭の塊からそよ風のような、柔らかく小さな優しい声が流れてきた。

「僕はここだよ…」

「壱なの?」

「…」

「壱…」

そこかしこから、火の手が上がり、小さな爆発音と共に、金属片やコンクリートの破片が飛び交うなか、二人だけの一瞬の静寂が流れる。

「……………」

「……………」

そして、その時訪れる。零は見上げる様にして、彼の顔を見つめる。

彼女の瞳は潤んで、今にも、涙が流れ落ちそうだった。

零は微笑みを浮かべる。彼女の手のひらが静かに彼の頬の辺りを触れる。

腫れ上がった上に炭化した彼の顔は、その形を失っていた。

そんな彼の顔を彼女は見つめ続けた。

「ありがとう…壱…助けてくれて…」

彼女は分かっていた。

彼の命が後僅かだと言うことを、…

彼の身体は限界を迎え、砂のように崩れ始める。

零は抱き締めたい、気持ちを押さえた。

少しでも触れば、崩れ落ち、無くなってしまいそうだった。



彼の顔から一滴の涙が零れ落ちた。

それは、彼女の頬に落ち唇へと流れていった。

「イ・キ・テ」

最後にそう言って、壱は彼女に倒れこむように崩れ去った。



彼女は、身体を震わせながら、静かに立っていた。

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