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第4話

 授業の終わりを告げるチャイムが聞こえる。

 その頃には気分がよくなり、一礼をして保健室から出る。

 それと同時に声が掛かる。

「秋ちゃん、大丈夫?」

 振り向くと由枝が心配そうにしていた。

 用事があって私のクラスに行ったときに私が倒れたことを聞いて慌ててここに来たらしい。

 由枝を見ると少し息が上がっているように見える。そんなに慌てなくても……。

 でも中学の時からを考えると由枝らしい。そう思いながら大丈夫だと伝えると、ようやく笑顔に戻る。

「そういえば……」

 由枝らしいって言えばそれまでだけど、なんでわざわざ愼也に言うのよ。

 由枝って何か勘違いをしているようだけど、私と愼也はただの幼なじみ。それ以上の関係じゃないのに。

 そんなことを考えていると、誰かが階段を駆け下りてくる足音が聞こえてくる。

 もしかして……。

 階段の方へ視線を向けると、思った通りに愼也が結構な勢いで降りてきた。そしてこっちを見ると少し安心した表情になっている。

「オイ、大丈夫なのか?」

 大丈夫だけど……。

 少しの困惑を感じながら伝えると、ようやく安堵したような顔を見せる。

 すると由枝が私の肩を叩く。

「それじゃ私は教室に戻るから」

 なんでウインクしているのよ。だからそんな関係じゃないって。

 そう言おうとしたけど、既に背中を見せて離れて行っちゃうし……。

 由枝的には、気を利かせているつもりだろうけど、こいつと二人っきりになったとしてもそんな雰囲気になるわけはない。

 はずなんだけど、なんか愼也の様子がおかしいような気がする。

 どうして視線をそらせているのよ。それに当てられて私までなんかおかしくなりそうだよ。

 でも取り敢えず心配させたようだからそれは謝っておこうかな。

「いや謝らなくていいよ。大丈夫なら問題ないから……」

 だからなんでこっちを見ないで言うのよ。しかも少し紅くなっている頬を掻きながら。

 正直に言わせて貰えばあんたはそう言うキャラではないでしょ?

「でも元気だけが取り柄の秋穂が倒れたって聞いたときは、正直ビックリしたよ」

 そうよ。そうやってふざけるのが普通なのよ。

 でもそれってちょっと引っかかる物言いだよ。だからこれは少しお仕置きが必要ね。

 そうと決まったら気取られないように笑顔で近づいて、元気だけが取り柄で悪かったわね。そう言って耳を引っ張る。

「痛てぇな。場を和ます冗談に何マジになっているんだよ」

 耳をさすりながら少しむっとしている。

 どうせ私は、場の空気を読むような繊細な女性じゃなくて、元気だけが取り柄の女性ですから。そう言って背を向ける。

 別に本気で怒っている訳じゃない。これもお仕置きの続き。素直に謝ればこんなことしなくてもいいんだけど、こいつの性格を考えるとそれは望み薄。

 だから仕方ないよね。恨むなら自分の性格を恨みなさい。

「お、おい」

 慌てたような声を出している。

 でもこれだけで許して上げない。もう少し怒っている振りを続けよう。

「秋穂ちゃん?」

 少し焦っている感じがする。

 もう一押しかな?

 でもタイミングを間違えないようにしないと。こいつが本気で怒ったら後々めんどくさくなるしね。

「悪かったよ。前言撤回するから、許してくれないか?」

 どうしようかな? そう言って少しだけ和解できる感じを伝えてみる。

 すると愼也からため息が聞こえてくる。

「分かったよ。今度なんか好きなものを奢ってやるから、それで勘弁してくれないか?」

 やるからっているのはマイナスだけど、これぐらいで勘弁して上げないとかわいそうだよね。

 だから振り向いて謝罪を受け入れることを伝える。満面の笑みを加えて。

「現金なヤツだな、お前は……」

 呆れながらも安心した表情を見せている。

 さてと何を奢って貰おうかな?


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