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彼女の決断

一応ここで話に一区切りつきます


「君には死神の才能があります。だから私は貴女を陛下の下にお連れしたのです」


男は半泣きの陛下の目の前に理恵を下ろすと、自分は2人から距離をとる。

未だグズグズ鼻を鳴らす陛下は、それでも手を彼女にかざし近づける。


「ちょ、ちょっと待って!突然死神とか言われてもわけわかんないし!だいたい私は死神になんてならないし!」


自分に向けられた手を振り払い数歩後ずさると、理恵は陛下を睨みつける。


「生きてることが嫌になって死んだのに、これ以上面倒くさいことに巻き込まないでよ!」


続いて自分をここまで連れてきた男をひと睨みすると、彼女は扉へと足を進める。


「復讐、したくないかい?」


背筋が凍るような声に理恵の足が止まる。

その声は確かに先ほどまで泣いていた陛下のものだったが、明らかに先ほどとは違う雰囲気を纏っていた。

恐る恐る振り返るとそこには『王』と呼ぶにふさわしい人物が座っていて、反射的に理恵は膝を折りその場に跪く。


「君の中に燻る純粋な悪の心。ドロドロしていてそれでいて美しく輝いている」


陛下の右手があがり、理恵に向かってひと振りされる。

すると彼女の体が黒く光り、小さな黒い球が心臓の辺りから出てきた。


「それが君の中の悪意だよ。その年でそこまで密度の高い悪意を持っているなんて死神としてはかなり優秀だ。だからこそ、復讐したい相手も生きていた世界に大勢いたんじゃないかい?」


「死神になったら…復讐できるの?」


「もちろんだよ」


陛下が指を1つ鳴らすと、黒い球が淡く光り、理恵の体の中に戻っていく。

球が入っていった部分を触ってみるが特に変わったところもなく、体にも異変は感じない。


「それで、どうするか決めた?」


陛下の周りの濃密なオーラがふっと消えて、またヘタレなお兄さんに戻った。

その裏に支配者としての圧倒的な力を隠しているなんて微塵も感じさせない笑顔。

どうせ1度捨ててしまった命ならこんな強者に仕えるのもいいかもしれない。

そんなことを考えてる自分に苦笑しながら、理恵は立ち上がると陛下の前まで足を進める。


「私を死神にして」


佐藤理恵としての第二の人生に思いを馳せながら彼女は静かに目を閉じた。






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