昼休みの来客
キマは二時間目が終わりジークによって保健室に運ばれた。それから三時間目、四時間目が終わりルーア達は昼休みを迎えた。教室に残っているのは数人ほどで残りは購買や食堂など、それぞれ昼食を食べている。テラスや屋上など他にも昼食を食べる場所はあるのだがルーアは朝とは違い静かになった教室に残っていた。
「ルーア、お昼食べようか」
自分席で教科書を整理していた俺の目の前の席に弁当箱を持ってジークが座った。
「あれっフルラはいないのか?」
「何か先生に呼ばれたらしいよ」
いつもの昼食は俺とジークとフルラとキマでいつも食べていたが一名が保健室送り、もう一名は先生の呼び出しと二人欠席で今日は男二人で淋しく食べることになってしまった。ちなみにキマ以外は全員自分で朝作ってきた弁当でキマは朝余裕がないので購買で買ってくるという感じになっている。
「また何かドジで物を壊したのか」
「その可能性は大いにあるね。キマは大丈夫かな?」
「あいつは大丈夫だろ。たしかクラスでお前以外心配している奴はいないと思った」
「まあいろいろキマは前科があるからね」
キマがやったことはたしか、ガディア魔法院の少し離れたところに男女別に生徒の寮があるのだが女子寮に乗り込もうとして案の定見つかり女子生徒たちにフルボッコにされて翌日の朝半泣きの状態で発見されたり、放送室を占拠して貧乳の素晴らしさを全校放送して教員一同にフルボッコにされ一週間姿が見えなくなったりある意味伝説を作っていた。入学して半年も経ってないのに…。
「ホント思い返すとあいつろくなことしてないな」
そこで教室のドアが大きく音を立てて開いた。教室に残っている生徒たちがビクッと反応する。
「待たせたな親友達よ、愛と勇気の超戦士キマ様の登場だぜ」
ドアの方を向くとどこからか持ってきた花を口に咥えて決め顔のキマがドアの前に立っていた。友人として見ても客観的に見ても物凄く気持ち悪い。
「俺に会いたかったろ~」
ドン引きしている俺たちをよそにすごい笑顔のキマこちらにスキップしながらやってくる。
だがすぐ後ろから物凄い勢いで走ってきた少女に突き飛ばされる。
飛んできたキマを椅子から転がり落ちる形でぎりぎりで俺は回避した。立ち上がりつつキマを突き飛ばした少女に文句を言う。
「危ないだろーがリフ」
「黙りなさい。落ちこぼれに用はないわ。用があるのはそこにいるジーク」
堂々と胸を張り青い髪を腰にかかりそうなくらいまで伸ばしている少女。人形のように整った顔立ちだが宝石のように青く輝くその瞳には作り物の人形とは違い自信に満ち溢れている。指名されたジークはというと完全に動揺していた。ジークは戦闘中だと人が変ったように頼もしいが基本彼はへたれだった。
「えっ何いつものやっやつなの?」
このリフ=シュバリタスは入学式の日にジークと何かあったらしく他のクラスだというのに週に一回はジークを襲撃にきていた。そのたびにジークは逃げ腰で追いかけっこが始まる。
「あの時に受けた屈辱は忘れないわ絶対に」
リフはグッと拳を握りしめる。いったいジークは彼女何をしたというのか。前にジークに聞いたことがあるが引きつった笑みが返ってきただけで真相を知ることはできなかった。
「わかったから落ち着いて」
「これが落ち着けるか~~~」
「ごめんルーア」
そう言い残すとジークは全力疾走で教室から逃亡した。それを追うようにリフも教室の外へ飛び出してい行く。男女的な差があるだろうにリフはジークのすぐ後ろまで迫っている。身体能力が高いジークとほぼ同じ速さを出せている理由は多分魔法による恩恵だろう。中級の魔法の中には身体能力を上げるものもあったはずだ。
「やっと教室が静かになったな。でも一人で弁当食べるのか」
「助けて~~~」
声がした方を向くとキマが顔と先ほどの花を持った右手だけだして壁に埋め込まれていた。何故かこの教室の窓側の壁だけとても柔らかい素材でできていて勢いよく飛びこむと自力では脱出できないほど埋まってしまう。この学校は安全面を考慮しているのだろうか。とりあえずキマを無視して自分の席に座った。
「落ちこぼれか、今日はまだ言われてなかったな」
ふと思ったことを呟いていた。落ちこぼれという言葉を聞くと入学当初の自分の環境を思い出す。あの辛かった時のことを。