プロローグ
誤字や文法の誤りがありましたら教えていただきたいです。
魔法が存在し人類を脅かす魔物も存在する世界。そんな世界でアスト王国は先代の王に代わってからは隣国との争いはまったく無く平和を維持していた。魔法を扱うための魔力を持っている人間はアスト王国には三割程度しか存在しない。そしてアスト王国の王都ポーリアにはその三割を育てるための学校の一つであるガディア魔法院があった。
いつもながら王都ポーリアの大通りは賑わっていた。魚を売る店、果物を売る店、食べ物以外にもアクセサリーから中古の武器を販売している店まである。ガディア魔法院の生徒である自他共に認める平凡な容姿に平民特有の黒髪を持つ十六歳の少年、ルーア=マテルはそんな出店の多い大通りに買い物に来ていた。
そのすぐ近くの裏路地では黒髪の少女が柄の悪そうな三人の男に絡まれていた。王都だからといって治安がいいわけではない。人気の多い大通りでは犯罪が少ないものの人気のない裏路地では犯罪が多発している。この少女のように裏路地を近道の代わりにすると犯罪に巻き込まれる場合がある。
王都は豊かな人が多いだけ貧しい人も多いため犯罪をする人も少なくない。最近では国王が改善しようと努力しているのだがまだ良い成果はもたらされていなかった。
「ちょっとだけだって一緒に食事するだけだからさ」
「そうそう、悪いようにはしないから少しお兄さんたちと遊ぼうよ」
「あの、そのすみません」
少女は早々とお辞儀をして立ち去ろうと方向を変えたが男達の一人に腕を掴まれる。しかたなく男たちを方を振り向いた。少女はあまり男たちを見ないようにしながら大通りを通っている人たちに助けを求めるが目が合ってもすぐに逸らされ誰も助けに来てくれない。
その時大通りを丁度歩いていたルーアと目が合う。ルーアは少女を見ると特徴的な大きな瞳は黒色で顔はまだ少し幼い感じが残るが全体的に整っていて美少女という言葉がしっくりくるという感想を持った。年齢はだいたいルーアと同い年か少し下と推測できる。
「あの~彼女が嫌がってそうなので止めて上げたらどうでしょう?」
こういうキャラじゃないんだけどな、と内心思いつつルーアは笑顔で男達に近付く。困っている人は必ず助ける、そんな友人を持つ彼は少し影響されていた。
「なんだお前?」
男たちは背後から現れた少年を睨みつける。それを見ても臆することなくそのまま笑顔で少女の隣に立った。
「いや~僕は」
会話の途中でルーアは少女の腕を掴んでいる男の手を振り払った。少女が再び捕まらないように男たちと少女の間に入る。
「さっさと逃げて」
「その、ありがとうございます」
「なっお前!!」
少女は早口でお礼を言うと人が多い大通りに向かって走りだした。男達も追いかけようとするが目の前に立ち塞がるルーアの手のすぐ上に浮かんでいる球体を見て立ち止まった。そうしている内に少女は大通りの人ごみに紛れることに成功する。
「ちっ上玉だったのに。お前魔法使いか」
「わかったら痛い目を見る前に引いてもらおうか」
男達の手から雷で作られたと思われる火花を散らす球体がそれぞれ出現した。合計の三つの球体だ。
大通りの人達が裏路地で行われている犯罪を止めたりしない理由それは魔法使いが犯罪者だった場合一般の市民では手に負えないからだ。過去にも止めようとした市民が魔法によって殺された事例はいくつもある。そして犯罪者というのは大抵が魔法使いだ。力があるから行うという心理なのだろう。一般の市民ができることは街の治安を守る王国騎士団を呼ぶことぐらいだが助けが間に合う方が少ないのである。
「正義の味方気取りのガキを懲らしめてやらねえとなぁ」
「紅蓮の赤き魔術師を相手にたった三人で勝てると思っているのか?準備運動にもならないよ」
ルーアは不敵に笑うと改めて男たちと対峙した。
その数分後、市民に呼ばれてやってきた王国騎士団が到着した頃にはこの裏路地には誰もいなかった。