ゆるぎない決断
私の名前は、美咲、34歳。未婚で、子どもを一人産んだ。子どもの父親は、既婚者だった。どうしても、産みたかったので、産んだ。
世間の目は、冷たかったが…でも、私は、後悔していない。
子どもの名前は、陽子、8歳。すくすく、育ってくれた。陽子の名前は、太陽の様に、明るく、のびのびと、育ってほしいので、つけた。
陽子の父親からは、養育費は、いっさいもらっていない。もう、かかわりはない。美咲は、それでいいと思っている。
美咲は、クリーニング屋さんで、パートで、働いている。夜も、スナックで、アルバイトをしている。昼夜、働いているのだ。
クリーニング屋の店主も、スナックのママも、美咲が、未婚の母だと知っても、理解を示した。
スナックでは、固定客もできて、給料が、よかった。それで、生計は、なんとかなった。
ゆくゆくは、喫茶店を開きたいと思っていた。そのために、今は、少しずつ、お金をためていた。
スナックでの、固定客の中に、真面目に、美咲の事が好きな人がいた。その人は、君人といって、46歳、未婚の独身だった。一回り年の差があった。一目、美咲のことを、見た時から、君人は、美咲の事が、好きになっていた。
あの手この手で、美咲に、モーションをかけたが、美咲は、見向きもしなかった。今は、陽子のことを、育てることで、精一杯だった。
君人は、子どもも、一緒に、遊園地に行かないか、と言ってきた。美咲は、そういえば、仕事にかまけて、陽子を、どこへも、連れて行ってあげれてないことに、気づいた。君人の誘いを受けてみようかと、思いはじめていた。
美咲は、 君人に、「本当に、娘も連れて行ってもいいの?」と聞いた。君人は、「もちろん。」と、答えた。
約束の日、美咲は、陽子を連れて、君人と3人で、遊園地に、向かった。陽子は、最初は、恥ずかしそうにしていたが、だんだんと、君人に、慣れていった。君人は、とても、優しかった。陽子にも、優しく、接してくれた。
陽子は、楽しそうに、いろんな乗り物に乗っていた。美咲は、遊園地にこれて、よかった、と思っていた。
君人は、また、3人で、どこかへ行きたいね。と言ったが、美咲は、それには、返事をしなかった。
美咲は、また、日常に戻り、クリーニング屋の仕事と、スナックのアルバイトを頑張っていた。
そんな中、スナックで、もう1人から、美咲は、交際を申し込まれていた。その人は、バツイチで、子どもは、いなかった。36歳の隼人だ。隼人も、真剣だった。年も、近かったので、話もあう感じだった。
美咲は、「子どもがいます。」と、隼人に伝えた。隼人は「うん。」とだけ言った。隼人は、「1度、3人で、会って食事でもしないか?」と、言ってきた。美咲は、迷ったが、「いいわよ。」と、答えた。
当日、隼人は、陽子に、おみやげを買ってきてくれた。陽子は、喜んだ。3人で、食事をしながら、美咲と隼人は、いろいろ、話した。陽子とも、仲良くしてくれた。
ある時、スナックで、君人と隼人が、鉢合わせになってしまったのだ。美咲は、まず、君人と、話をしていた。それを見た、隼人が、焼きもちを焼いて、怒って、帰ってしまったのだ。
隼人は、ものすごい焼きもち焼きだった。後日、また、改めて、スナックにきて、美咲と話した。隼人は、言った。「こないだの人とは、どういう関係?」美咲は、正直に、答えた。「遊園地に、娘を連れて行ってくれた人」だよ、と。「付き合ってるの?」と、隼人が言った。「そんなんじゃないの。」美咲は、答えた。「なら、俺と付き合ってよ。」隼人が言った。
正直、隼人の、焼きもち焼きの性格は、とても嫌だった。即答できなかった。美咲は、言った。「考えさせて。」隼人は「分かった。」と言って、帰って行った。
そしてまた、君人からも、今度は、3人で、動物園に行かないか?と、誘われた。陽子を、連れて行きたかったが、君人を、誤解させることにならないかな、と、思っていた。自分の心が定まらないままに、こうして、誘いに、応じてもいいものだろうか、と、思いはじめていた。
君人に、美咲は、聞いたみた。「どうして、私と娘を、いろいろ、連れていってくれるの?」君人は、言った。「君のことが好きだし、陽子ちゃんのことも、かわいいと思ってる。ゆくゆくは、結婚してほしいと、思ってるよ。」美咲は、君人が、結婚も考えて、誘ってくれてるのだな、と、改めて思った。
美咲は、思い切って、陽子を連れて、動物園に行くことにした。3人で、動物園についた。陽子は、動物を見て、とてもはしゃいでいた。美咲は、いろいろ、思う様になっていた。もし、陽子に、父親が、必要なときは、やはり、優しい人が、いいのかな、と。君人は、あまり、怒ることもなければ、神経質なところも、ないように、思えた。そういう目で人を判断するのは、少し、悲しかったが…
最終的には、美咲は、陽子の判断も、聞きたいと思っていた。それが、自分の想う人と、違った人を選ぶとしても。美咲は、徐々に、君人に、惹かれはじめていた。娘の陽子も含めて、大切にしてくれている感じをうけたからだ。
ただ、話しが合うのは、隼人の方だった。美咲は、君人を、いいな、と、思いながらも、隼人のことも、少し、気になっていた。隼人は、どんな気持ちなのか、知りたかった。2人を、両天秤にかけるようで、心苦しかったが、隼人にも、聞いて見ようと思っていた。
隼人が、スナックに来た。美咲は、たわいない話のあと、少し、話したいんだけど、と、いいながら、隼人に訪ねた。「実際のところ、私達親子のことを、どう思ってるの?」隼人は、しばらく考えたようにして、「まずは、付き合ってみないと、わからない。」と、言った。正直な答えだと思った。
でも、今の美咲と陽子にとって、付き合ってダメになったから、やめる、という選択肢は、考えられなかった。やはり、結婚を前提にしてもらわないと、付き合うことは、できなかった。
美咲は、陽子に聞いた。「陽子は、君人おじちゃんと、隼人おじちゃんのどっちがいい?」
陽子は、しばらく、考えたあと、「君人おじちゃんの方がいい。」と、言った。
これで、美咲の心は決まった。ゆるぎない決断になった。陽子と、考えが、一致したのだ。美咲は、嬉しかった。
スナックに来た隼人に、美咲は、「ごめんなさい、付き合うことは、できないわ。」と、丁寧に断った。
君人には、三度目に、会ったときに、「これから、結婚を前提に、よろしくお願いします。」と、美咲は、言った。君人は、「こちらこそ、よろしくお願いします。」と言って、微笑んだ。




