表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された地味令嬢は、辺境で国を再建する ~無能扱いした王太子が後悔してももう遅い ―捨てられたのでお金の管理をやめたら、王都が崩壊しました  作者: 桜庭ルナ
第2部:七王国会議編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/113

第20話 非常宣言案

 港町の炎が鎮まった翌日。


 王城評議室には、これまでにない緊張が漂っていた。


 円卓の中央に置かれた書簡。


 提出者――アーネスト・グラン=カリオ。


「非常宣言の発動を提案します」


 彼は立ったまま、静かに告げた。


 ざわめきが広がる。


「内容は」


 アルヴェルトが問う。


「王任期制の一時凍結」


「王権の一時強化」


「国難においては、迅速な決断が必要です」


 視線が一斉に私へ向く。


「任期制は国家の不安定要素となっています」


「市場は揺れ、軍は不安を抱き、民は分裂している」


「今は改革より安定を優先すべきです」


 論理は明快だ。


 港の炎、通貨の下落、国境の緊張。


 全てが“改革の揺らぎ”と結びつけられる。


 *


「つまり」


 ユリウスが言う。


「王の期限を撤回せよ、と」


「撤回ではない」


 アーネストは首を振る。


「凍結です」


「危機が去るまで」


 危機はいつ去るのか。


 誰が判断するのか。


 その問いは口に出されない。


 *


 レティシアが低く言う。


「軍は揺れていない」


「だが不安はある」


 アーネストは即座に返す。


「兵は王の安定を求めている」


「期限付きの王は、士気を削ぐ」


 セラフィナの言葉がよぎる。


 ――守るべきは国です。


 若者は王ではなく、国を見ている。


 *


「陛下」


 アーネストが正面から私を見る。


「今は威厳を示す時です」


「退くと言った王ではなく」


「立ち続ける王を」


 円卓が静まる。


 私はゆっくりと立ち上がる。


「非常宣言は、強い」


 静かに言う。


「だが強さは、依存を生む」


「今、任期制を凍結すれば」


「外圧で改革を止めたと見られる」


「市場は安定するかもしれません」


「だが疑念は残る」


 アーネストは眉を寄せる。


「疑念より混乱が問題です」


「混乱は抑えられます」


「疑念は積もる」


 短い沈黙。


「私は退くと宣言しました」


「それを撤回すれば」


「王の言葉は軽くなる」


 評議室の空気が張り詰める。


 王が自らの言葉を守るかどうか。


 それは制度の根幹だ。


 *


「ではどうするのです」


 アーネストが問う。


「危機は現実です」


「港は燃え、市場は揺れ、軍は睨み合っている」


「王はどう責任を取る」


 私は一歩前に出る。


「責任を取るために、改革を進めます」


 ざわめき。


「任期制は凍結しません」


「王位選出制への移行を加速させます」


 衝撃が走る。


「危機だからこそ」


「制度を明確にする」


「曖昧さが不安を生む」


「ならば明確に」


 円卓の一部が息を呑む。


 *


 アーネストは言葉を失う。


「……今は火に油です」


「いいえ」


 私は答える。


「火は曖昧さで燃えます」


「進むと示せば、方向が見える」


 それは賭けだ。


 だが立ち止まれば、外圧に屈する。


 *


 評議は紛糾した。


 賛否は拮抗。


 結論は保留。


 だが非常宣言は通らなかった。


 *


 夜。


 アーネストは廊下で足を止める。


「進めるのか」


 呟く。


 彼は王を守りたい。


 だが王は、自ら王を削ろうとしている。


 それが忠誠か、破壊か。


 *


 王城、執務室。


 私は一人、灯りの下に立つ。


 非常宣言は退けた。


 だが危機は続く。


 市場は再び揺れ始めている。


 国境では、兵が動いている。


 港の傷は癒えていない。


 王は立つ。


 だが立ち続けるためには、進むしかない。


 第二次再編。


 それを宣言する日は近い。


 静かな戦争は、頂点へ向かっている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ