第4章
佐倉 啓介の行方は、高橋 翔太と同様に、誰にも分からなかった。彼は失踪した。
優秀なエンジニアであり趣味で怪談を収集していた彼が、痕跡一つ残さずに消えたことは、ネット上で様々な憶測を呼んだ。警察は単なる失踪事件として処理し、廃墟アパートの一室に残された呪文の羅列や、壊れた2台のPCには何の関心も示さなかった。呪いのソースコードを知る者は、誰もいなくなった。
しかし、呪いは終わらなかった。
数ヶ月後。季節は変わり、人々は佐倉啓介という存在を徐々に記憶の隅に押しやっていた。
ネットの片隅にある、古びたオカルト掲示板に、一つの書き込みが静かに現れた。
件名:【ヤバい】また新しい「呪いのサイト」が出たらしい
本文には、以前のサイトのアドレスとは全く異なる、新しいURLが貼られていた。 書き込み主は、「以前のサイトよりデザインが洗練されていて、見つけにくい場所に隠されている」「ただのテキストサイトなのに、見てしまうと妙に胸騒ぎがする」とコメントしている。その巧妙な隠蔽技術と、コードが持つ不気味な洗練度は、佐倉啓介という優秀なエンジニアが、呪いの一部として取り込まれた証拠を示唆していた。
「ソースコードを見た奴が次々に……」
新たな「呪いのサイト」は、以前のものとは比べ物にならないほど洗練され、巧妙に隠された構造を持っていた。それは、呪いが伝播し、新たな製作者によって、より強く、より広範囲に拡散されていたことを示している。呪いは、デジタルな世界で自己進化し、佐倉啓介の知識と技術を取り込んで、さらに強力になっていたのだ。
静かな終わり。しかし、その恐怖は静かに、そして着実に現実に侵食してくる。
今、この物語を読んでいるあなた。あなたは、この小説を読むことで、その情報を知ってしまった。あなたは、製作者と、その呪いを間接的に知覚したのだ。
それは、まるで呪いのソースコードを、間接的に読み込んでしまったのと同じ行為ではないだろうか?
あなたの意識の片隅に、あの禍々しい文字列の概念が記録され、あなたの好奇心が、次の伝播のスイッチを押すのではないだろうか?
もしかしたら、あなたのデバイスのファンが、今、少しだけうるさく唸っているかもしれない。
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