表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たぬきの嫁入り2  作者: 藍色 紺
第7章 春の来訪者
29/48

73話 ぽこと実験①

 悪魔百合と蜂のクエストの後、似たような仕事をいくつかこなした。

春になり山が目覚めると、草木が生い茂り、魔獣も活発化する。雪かきのような便利屋仕事ではなく、冒険者としての仕事も増える。


 ぽこと俺はバディを組むようになってから、治癒薬の効率のいいかけ方について何度も話し合うようになっている。

 毎回治癒薬を大量に使うのも、頭から被って薬酔いするのも非効率だ。

 俺はぽこを守ることを優先し、ぽこは俺の傷を癒すことに専念する。

 当然互いの主張がぶつかり合うこともあるが、それすらも嬉しくて仕方ない。

 仲間がいる心地よさの方が、恋人がいるよりも勝る。

 仲間としてのぽこは、古の薬の問題を考えずに済むからだ。



 ぽこが安全な場所に居ながら、怪我した箇所にピンポイントで治療ができる方法に、スリングショットを使おうってことになった。


 問題は、液体の治癒薬をどうやって飛ばすかだ。


「スリングで放てる強度があり、当たったら確実に割れるとなると何がいいだろう?」


「薄い皮で、液体が漏れないってことですね」


 二人で向き合い夕食を取りながら、話す。

 バディを組んでからというもの、食事中も仕事の話題になってしまいがちだ。

 ぽこも俺と同じように、新しい仕事にやりがいがあるのだろう。


 皿の上のこんがり焼いたのを見て、思いついた。


「腸詰みたいだな」


 炙った腸詰にかぶりつくと音がして薄皮が裂け、肉汁が口の中に迸る。

 続けてパンを齧ると、栄養が動かした身体に染みわたる気がする。


「やってみましょう!」


 ぽこが頬を上気させて、野菜スープが入った椀を傾けた。


 宣言通り、ぽこは、クエストと家事の隙間時間に腸詰屋に走り、首尾よく羊の腸の塩漬けを買ってきた。

 食事の後、寝るまでのわずかな時間を捻出して、治療薬を腸詰めにする試作品を作るために、食卓に向かい合う。


 塩水で腸の塩抜きをし、麻紐で閉じた腸に薬の代わりに水を入れる。

 ただこれだけのはずが、二人そろって、なかなかうまくいかない。

薄い腸は広げるために擦るだけで破けてしまう。

机に並んだ腸の残骸は十個。いらいらしながら十一個目に挑戦していると、ぽこが立ち上がった。


「できました!」


 試作品をそっと持ち上げて、手渡してくれた物が掌で転がる。

恐る恐るつまみ上げたら、弾けて割れた。

掌から水が机に垂れる。


「駄目だなぁ」


「数作れば慣れると思いますけど、駄目ですか?」


「繊細すぎて、持ち運びすらできんからな」


「腸詰はどうやってパリンってさせてるんでしょうね?」


 ぽこが顎に手をやって思案する。

 ない顎鬚を撫でていると気づいて、心の中で笑ってしまう。

 バディは、互いに似てくると言われているからだ。


「食うやつは、茹でたり燻製したりするんだろ」


「じゃ、私たちも薬液を入れて茹でましょうよ」


 大胆な提案は、ぽこならではだろう。

 冒険者なら誰でも、駆け出しのときに「混ぜるな危険。いじるな危険」とさんざん言われている。

治癒薬を買う魔術研究所でも、治癒薬を作る魔術師にも、報告を上げるクエスト屋でも、先輩からも。

言いつけを守らなかったどこぞの盾は、ヒキガエルになったとか何とか。


「どうだろうな。ウシュエは丸薬にするのに、直火に当ててないはずだが――」


 その辺りは全くの専門外だ。

 やるのならウシュエに聞いてみなければならない。


 緑屋敷のウシュエは、こちらに用事があっても、ウシュエに用事がなければ、居留守を使うことがある。

 室内で物音を立て、窓から姿が見えても玄関を振り向くことすらせず、堂々と居留守する。これが緑屋敷の主は人嫌いと言われる所以だ。


 ウシュエが作る治療薬を、腸詰に詰め替えることが凶と出るか吉と出るかはわからない。


「エルダーフラワーを集める頃合いだな」


 春先にぐっすら咲く白い花は、緑屋敷への納品物だ。

 納品ついでなら話を聞いてもらえるだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただきありがとうございます

おいしい食べ物を通して、人と人の反応が生まれる瞬間――
そんな場面を書くのが好きです。
あなたの楽しみになるよう、更新していきます!


jq7qlwr6lv5uhtie2rbp8uho30kr_zjl_2bc_1jk_5lz4.jpg
『たぬきの嫁入り3』へ



〇 更新情報はX(旧Twitter)にて

▶https://x.com/aiiro_kon_



〇 ご感想・一言メッセージをどうぞ

→ マシュマロ(匿名)
https://marshmallow-qa.com/ck8tstp673ef0e6



〇 新しい話の更新をお届け

こちら ↓ で、『お気に入りユーザ登録』お願いします。
(非公開設定でも大丈夫です)
▶▷▶ 藍色 紺のマイページ ◀◁◀




いいねや反応を伝えてもらえると、
新しい物語の活力になります☺️


本日もお読みいただき、ありがとうございました。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ