表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ローファンタジーショートショート

幽霊に取り憑かれている青年は霊能事務所を訪れた

「ああ、見えてきました……最近の貴方の不幸の原因が……取り憑いている幽霊が……」


 困ったような表情を浮かべて落ち着きなく椅子に座っている青年に向かい、霊能者を名乗る女性が目を閉じたまま厳かな口調でそう言った。

 そのまま女性は見えたという幽霊の特徴を挙げていく。


「年老いた男性ですね……貴方と関わりのある……貴方がまだ子どもだった頃に亡くなっています……その方が貴方のことを心配するあまりに取り憑いてしまい、霊的なバランスが崩れたのでしょう……」


 そしてこれこれこういうものがあれば除霊できる、一般的にはなかなか手に入らないので代わりにこちらで用意できる、このくらいの代金が必要である、というようなことを言った。


 青年は財布を確認すると、少し足りないのでまた後日持ってきます、と言った。女性は穏やかに微笑み、お待ちしておりますと言った。



 霊能者を名乗る女性の事務所を出た青年は思い切り伸びをすると、自分の後ろに話かけた。


「年老いた男性だってさ」

「私のどこが? なんにも見えてないじゃん!」


 青年の背後では若い女性の幽霊がぷかぷかと浮かび、両手を振り上げて先ほどの霊能者に対して文句を言っていた。

 青年はスマートフォンを取り出して先ほどの霊能事務所の紹介ページにアクセスすると最低評価を付け、コメントで一言「インチキ」とだけ書き込んで再びポケットにしまう。


「にしても君さ〜、幽霊(わたし)に取り憑かれてるのに全然動じないよね」

「だってあんた、全然怖くないし。あと悪意も感じないし」


 青年の言葉に幽霊は微妙な表情になる。そしてさらに言葉を続けた。


「しかも私を連れ回してわざわざインチキ霊能者を炙り出してネットで低評価つけるだけって……」

「僕は幽霊を有効活用してるだけだ」


 そしてニヤニヤと笑みを浮かべると、次の霊能事務所行くかと言った。

 その後ろをふよふよと追いかけながら幽霊はため息を吐き、「悪趣味」と一言呟く。

 その顔は青年と同じようにニヤけていたが、それを見て似た者同士だと指摘する人は誰もいなかった。

お読みいただきありがとうございます

面白ければ評価や感想をお願いします

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ