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再挑戦

「いや~、それは災難だったねルカくん」


 ダンジョンの入り口。


 グローリエンがアンダーウェアをたくしあげると、彼女の形の良い乳房がふるんと揺れる。


 大丈夫だ。そう自分に言い聞かせるとルカは自分も衣服を脱ぎ始めた。


(そう。大丈夫だ。もう二回目だし、今日は町を出る前に三回もヌいてきた。彼女の裸に心乱されることはない)


 心の中で何やら呟きながら衣服を脱ぐ。しかし突然現れた前回と違い、普通の状態から脱衣する様を見せつけられるとやはり趣が違う。冷静と情熱の間、半勃ちの状態になりながらもルカは深呼吸をして心を落ち着かせようとする。


「前回は随分と抵抗してたっていうのに、今日は観念して服が脱げるようになったじゃねえか」


 にやにやと笑いながらそう語りかけるスケロクはすでに全裸だ。


「しかしまさかあの後全裸で人助けに行くだなんて、君は予想以上の逸材だよ、ルカ君」


 もちろんヴェルニーも同様である。

 

 全員の脱衣が終わるとそれをまとめてダンジョン入り口付近の脇にグローリエンが精霊を呼び出してそれを隠させた。


 前回の探索から二週間ほど間が空いてしまったが、ルカを加えて二回目のダンジョン探索スタートである。


 ダンジョンに向かう道すがら、ルカはメンバーにあの後何があったのか、事のあらましを話した。


「そうか、あの『来たれ粗チン』って意味不明な求人、あれお前を探してたんだな」


 まだダンジョンの浅層である。斥候役のスケロクもたいして気を張ることなくしゃべりながら進む。


「でもルカ君。多分その件、君が思っている以上に面倒なことになってると思うよ」


 ヴェルニーも自然体である。後方に控えているルカ達に話しかけながら、(彼らにとっては)ザコモンスターを処理しながらダンジョンを進んでいく。


「面倒なこと……というのは?」


 一方の後衛の二人、グローリエンは入り口で永続(コンティニュアス)(ライト)を唱えてからはマップを確認しながら歩き、ルカはパーティーメンバーの士気と体温を維持するための魔法をリュートを媒介にして調に乗せる。


「そのシモネッタ姫を襲った連中というの、多分野盗じゃなくて刺客だよ」


 やはり。


 ルカも薄々そうではないかと感じてはいた。


 あの時山中で倒した三人、運よく生き延びた一人がわざわざ復讐に来るのがまずおかしかった。しかもどうやら相手がシモネッタ姫だと知っていて襲撃に来たような節があった。


 あんな街中で、破れかぶれの襲撃、成功する目などあったのだろうか。たとえシモネッタがあれほどの戦闘能力を有していなかったとしてもだ。


 それはおそらく、もはや引くに引けないところまで来ていたのだろう。失敗すれば依頼主に始末される。(成功したところでどっちみち始末されると思うが)


「おそらくはマルセド王国の嫡子、ジェリド王子か、その辺の刺客だろうな」


 スケロクは他国のお家事情にも詳しいようである。確かにハッテンマイヤーはシモネッタの王家での立ち位置が微妙だ、と言っていた。


「マルセド巨人王国の情報はあんまり外に漏れねえが、こんな単純な話なら大体想像つくぜ」


 すなわち年長者ではあるが私生児のシモネッタを警戒しての所業。留学生として国外に追い出すだけでは足りなかったのだろう。実際、シモネッタをこのトラカント王国の王子とくっつける作戦は彼女のあまりのでかさに王子がビビッて卒倒するという事態に陥り失敗しているのだ。(その後、冒険者とくっつこうとするという意味不明な展開にはなってはいるが)


「はぁ……ホントに迷惑な話というか、お家騒動なんか国外でやらないでおうちでやってほしい」


「実際、彼らも本当のところで言うとその山道のうちに始末しておきたかったんだろうね」


「それをルカが邪魔しちまった、と。こりゃ責任とらねえといけねぇな」


「えぇ?」


 露骨に嫌そうな表情をするルカ。それが確かならやはり、最初から国外に出すなんてポーズをとらずに国内でやってほしい。無関係な人を巻き込まないでほしいというところだ。普通の人間を使うよりも巨人を刺客にした方が良いだろう。実際あの野盗はシモネッタにまるで歯が立たなかったのだから。


「実際、巨人がどのくらいの強さなのか、ルカ君は知っているかい?」


 ヴェルニーの質問の意図を読みかねる。問うまでもなく、強いに決まっているではないか。強さとは、質量である。


「実は、イメージと違って巨人族(ティターン)はそれほど強くはないんだ」


「え?」


 全く予想外の言葉であった。実際ルカは野盗の男をシモネッタが一撃で殺すところを見ているのだ。しかも巨人族としては小柄なシモネッタがである。成人の巨人族は身の丈三メートルを越え、目方は四〇〇キロにも届くという。


「二足歩行の骨格で、あの巨体を運用するのは無理があるのさ。力は強いがね」


「どういうことです?」


 二人の会話は続きながらもダンジョンの中を進みゆく。


「たいていの成人した巨人族は膝か腰に爆弾を抱えてる。敏捷性(アジリティ)も低いから慎重に攻撃を躱しながら戦えば無傷で勝てるよ。多分ルカ君でもね」


 それはさすがに言い過ぎではないか、と考える。実際ルカでは相手の攻撃は躱せてもこちらからの攻撃が有効打にならないのだ。


「シモネッタ姫はルカ君の話だと巨人族ではかなり小柄な方だね。もしかしたら、彼女は巨人族最強の人間かもしれない。大きさと敏捷性を兼ね備えた、ね」


 なるほど、ルカは納得する。少人数で、詰め将棋のように状況を整えて、事を成す。そこまでやって待ち構えているのがあの最強の戦士シモネッタなのだ。確かに暗殺一点にすべてをかけるよりは今のようにいくつかの策を同時進行させた方が良いだろう。


 その結果、トラカントの王子が卒倒し、ルカが粗チンの汚名を被ることとなったのだが。


「さて、もう二階層だね」


 一階層のモンスターは率直に言って大したことがない。ゴブリンや野犬程度のモンスターしかいないし、道程も既知のものであるので迷いようがない。初心者が腕慣らしをするには絶好のダンジョン。しかし熟練者には物足りない。


 だが用事があるのは既知の最下層、第五階層なのだ。


 前回の探索の後、『せむし男のダンジョン』の最下層が解放されたということが分かると冒険者が殺到することとなった。その中にはグローリエンの『ワンダーランドマジックショウ』も含まれており、ヴェルニーとスケロクも他の仕事が入ったこともあり、この『ナチュラルズ』の活動ができなかった。


 そこで、他の冒険者の探索も一区切りして落ち着いたところで、ようやくナチュラルズの招集がかかった、というところなのだ。


 つまり、今回のダンジョン遠征の目的は他の冒険者が断念した第五階層最奥の攻略である。

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