全裸フェンシングGO
「フッフッフッフ、驚いたか。私の能力に。さあ、わたしのちん〇んの前にひれ伏すがいい。後ろ向きで」
それは危険だ。今のこの状態のリナラゴスに尻を向けるのは非常に危険な行為であると言わざるを得ない。
リナラゴスは余裕の笑みとともに両腕を頭の後ろで組み、腰を左右に振って誇示するかのように息子をぶらぶらと揺らす。
「ふざけるな。僕は君みたいなやつは全然趣味じゃないし、腸内洗浄もまだしていない!」
具体的な話をするな。
とはいえ、何気に見境のないリナラゴスはヴェルニーをもその射程に収めているようである。なんという性豪。決して負けられない戦い。ヴェルニーは会話を切り上げて大剣で斬りかかる。
「甘い!!」
凄まじい金属音とともにヴェルニーの剣が弾かれる。なんと、リナラゴスは再びちん〇んでヴェルニーの剣を逸らしたのだ。
「クソッ!!」
「無駄無駄ぁ!!」
ヴェルニーは連続で剣閃を繰り出す。二発、三発と。しかし全ての斬撃がリナラゴスのちん〇んで弾かれてしまう。リナラゴスは腰を素振りし、ひゅんひゅんと息子が空を切る音が響く。
「フフフ、どうだ? この私の全裸フェンシング、破ることが出来るかな?」
「くっ……なんて悍ましい武術だ」
全裸と全裸の、負けられない戦いが今始まる。
「どうした、来ないのか? ならば私の方からイかせてもらおうか!」
言葉を終えるや否や即座に距離を詰めてくるリナラゴス。攻撃の手段はもちろん彼にとって最も信頼していて、最も硬い部位によるものだ。
「ぬんッ!!」
腰の一撃を折れた剣で何とか受け止める。リナラゴスの両手は頭の後ろで組んだままだ。通常であればこの姿勢は「抵抗の意志はない」「武器を持っていない」ということの意思表示に他ならないのであるが、彼においてはそれは当てはまらない。
なぜなら今の彼にとって最も強力な攻撃手段を最も効率的に扱うための構え、そう、これは「構え」なのだから。
「全裸フェンシング、GO!!」
掛け声とともに連続の攻撃が襲ってくる。決して長いリーチではないものの、しかしヴェルニーの方も剣が折れてしまっていて、リーチに関しては全盛期とは違う。
だがそれでも腕の長さにプラスして折れた剣ならば十分ヴェルニーの方がリーチが勝っているはずである。昆虫ではないのだから如何にリナラゴスが自分の得物に自信があると言っても限りがある。
それでも戦闘を優位に進められているのは偏に、その勢いと、陰茎に対してヴェルニーが幼いころの経験からか、恐怖を抱いているからなのかもしれない。
しかしヴェルニーも黙ってちん〇んに攻め立てられているだけではない。リナラゴスの突きを刃を下に下げた形で受け、そのまま即座に柄頭で顔面を狙って攻撃を入れようとする。
「無駄だ!」
しかし、先ほどの再現か。顔面への攻撃をリナラゴスが頭の後ろに組んでいた腕で叩き落としたのである。体のばねを十分に生かしきるための構えが、そのまま攻撃を受けたときのガードに利用できるという二段構え。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!」
矢継ぎ早に繰り出される突きの嵐。ヴェルニーは何とかそれを受け切ったが、最後にリナラゴスが錐揉み状に飛び上がって回転してきた。ちん〇ん廻し打ちである。
「ぐぅッ!?」
側頭部に打撃を受けて、鮮血をまき散らしながらヴェルニーが吹き飛んだ。
「大丈夫ですか、ヴェルニーさん!!」
すぐにルカが近づき、竪琴による吟遊詩人の魔法で傷を回復する。しかし体の傷は癒えても、精神的なショックは如何程であろうか。比肩するもの無き最強の剣士と謳われたヴェルニーが、ちん〇んに負けたのだ。ち〇ぽには勝てなかったよ……
「フフフ、どうした? もう諦めるのか? ならば次はルカ、貴様だ。貴様は必ず尻を掘って私の勝利とすると予告しよう」
怖気が奔り、全身の毛が逆立つ。誘惑の多いシモネッタとの生活に於いても守ってきた貞操を、まさかこんなところで失うというのか。
「大丈夫だ、ルカ君……僕はまだ戦える。君の穴は、僕が守る」
最後の一言は言わない方が良かった。結局リナラゴスにしてもヴェルニーにしてもルカのケツを狙っていることに変わりはないのだ。
とはいえ、ヴェルニーは立ち上がる。
深呼吸をして、気持ちを落ち着ける。そうだ。剣が折れてもなお圧倒的なリーチの差がある。普通に戦えば負ける相手ではないのだ。それでも勝てないのはなぜか。もちろん分かっている。
ちん〇んを前面に出して突っ込んでくる敵に対して恐怖心を抱いているからだ。
その恐怖心を打ち消してからが本当の闘いである。尋常であれば、おそらくヴェルニーが圧倒する。しかしその先が問題だ。リナラゴスは形勢不利となれば、両手や魔法を使ってくるだろう。というか、今は気分が高揚してしまってそこまで気が回らないのだろうが、おそらくはそうなってからの方がよほど地獄なのだ。
ならば、勝負は一瞬。相手が冷静になって「勝つための戦法」を使ってくる前に勝負を決めなければならない。さらに言うならそれを狙っているということも悟られてはならない。未だ恐怖に捕らわれて萎縮していると思われなければならないのだ。
「行くぞッ!!」
しかし戦術を組み立てる前にリナラゴスが突っ込んでくる。
通路の壁を破壊するほどの強烈な一撃なのだ。生身の体で受ければ即死も考えられる。
「やっぱり怖いッ!!」
演技ではない。やはり恐怖に体が委縮してしまっている。体の一部も縮んでいる。ヴェルニーはギリギリのところでリナラゴスの突きを剣で受け止める。
「いいかげんに……」
しかし、その時リナラゴスの背後から声が聞こえた。
「しなさいッ!!」
ヴェルニーに突きを受け止められたその一瞬。背後にまわったグローリエンの蹴りが炸裂したのだ。
それもただの蹴りではない。両足の間から、彼女が唯一身に着けている装備品、硬いブーツを纏った足が、リナラゴスのエクスカリバーの根元を蹴り上げたのである。
「ッッッ~~~~~~!!」
当然と言えば当然。自らの体を武器としていればその弱いところも自然とさらけ出すこととなる。如何に彼の息子が最強の硬度を備えていようとも、その根元には無力な男性最大の弱点が控えていたのだ。




