SAMURAI FANTASY ー対ポリこれ最終兵器ー
世間では最近開発されたフルダイブ型VRゲームというのが話題だったが、話題と言いながら、どこか冷めている様な雰囲気があった。
野球やサッカーを自分の体で行う。もちろん、リアルではなくバーチャルなので、運動が苦手でも可能だという。
普段は行けないような海外での釣りやプロがまわる有名なゴルフ場巡りとか、様々なゲームが発売されている。
ただ、こうしたゲームで一番盛り上がるはずのファンタジーRPGはイマイチ盛り上がりに欠け、その事が冷めた評価の原因であるらしい。
スポーツや釣りは天候や時間の関係でその場所に行けない、その日に練習が出来ない選手やユーザーのツールという、いわゆるガチ勢が使うモノになっているし、自動車やゴルフに至っては、利用制限が掛けられていたりするらしい。
どうしてRPG系が振るわないのか?香川県のゲーム条例だろうか?
そう思ったが、どうも違うらしい。ポリこれ問題とかいうものがあって、それが引っ掛かっているんだとか。
ポリこれが艦〇れとどう違うのか分からないし、どうして問題なのかよく分からん。もしかして、パリコレの方の関連で、ただのデザインではなく服飾関連で著作権や商標権に引っかかる事でも起きているのだろうか?
そんな、RPG冬の時代にあったフルダイブVRを大きく変えたのが、SAMURAI FANTASYというゲームだそうだ。
サッパリよく分からなかったが、友人によると、「対ポリこれ最終兵器」なんだそうだ。
サムライというだけあって、プレイヤーは皆、侍の恰好をしているらしい。ただ、対戦格闘ゲームではなく、あくまでRPGなので、勇者や冒険者であるべき装備が、何もかも甲冑や法衣、忍者装束へと変更されているだけらしい。
それのどこが対ポリこれ最終兵器なんだ?
もしかして、欧米映画作品と衣装や装飾が被るとライセンス料が発生するからか?
疑問だらけだが、低空飛行だったRPGゲームが俄かに活況を呈しているんだと聞かされた。
「おいおい、何言ってんだ?信也」
侍ゲームをやり始めた友人が呆れたように俺を見てくる。え?映画の衣装や装飾にライセンス料が発生するからと違うのか?
「そんな訳ないだろ。パーツを組み合わせてオリジナルで出来るさ。第一、ライセンス料ウンタラ言ってたら、スポーツ系のゲームなんてソフトだけでウン十万になっちまうわ」
という話である。じゃあ、ポリこれって何ぞや?
「それな。これまで連綿と受け継がれてきたRPGのキャラクターが軒並み改悪されてる問題のこったよ」
と説明を受けた。
別にダークエルフでもない普通のエルフが黒人をモデルとしたデザインに変更されたり、米俳優モデルだったキャラクターが、どっかの政治家かという様なデブやオッサンに改変されたり、近所のオバサン化したんだという。
それをポリこれっていうのか?ただの改悪って言うんじゃないかと思うが。
その流れでせっかくのフルダイブ型ゲームでキャラクターデザインをやろうと思っても、なぜか自身の容姿から改悪方向にしか変更できず、とても遊びたくない代物に成り下がっていたらしい。
そうか、それが不評の原因か。いや、侍風に言えば下手人か!
「うん、まあ、そうだな。で、だ。今回のSAMURAI FANTASYはな、男女の別なく甲冑だろ?僧侶は袈裟だし、シーフは忍者に改変されてるからボディーラインの分かりにくい忍者装束だ。髪型だって、侍はみんなポニーテール風丁髷で統一だし、僧侶は坊主、忍者は頭巾。ポリコレくそくらえって仕様なんだぜ!」
と、どこか喜ばしげだ。
何がそんなにうれしいのかまるで分らないんだが。
「それに、鎧武者って頬面ってのがあるだろう?素顔を晒さずに頬面チョイスで街中歩けるから、ポリコレモーマンタイ!イスラム黒人何でもござれだぜ!!」
などと有頂天である。
どうやら、RPGのくせして似非和風な作りでナーロッパならぬ、エ?戸な街並みであるらしく、平原には富士山が背景にあるらしい。もはや欧米人の日本テンプレじゃねぇかそれ・・・・・・
「だからだ。和風な街並みに富士山が背景にあるから、そこはヨーロッパじゃない。ハクジンガーの降臨は無いし、ビーナンチャラやフェな連中も鎧武者や忍者装束には文句を言わん。何なら、アラブでも大人気のゲームだぜ!」
どうやら、町中で女性が肌を晒すことが戒律で厳しく制限される中東においても、甲冑や法衣、忍者装束で露出のないキャラクターならOKらしい。頬面武者や頭巾忍者なら男女の別すらわからないので、なおさら好まれるようだ。
しかし、そんなキャラクターとなってファイナルなゲームやドラゴンなゲームに似たシナリオをプレイするのってどうなんだ?と思わなくもないが、世界的に受け入れられているらしいので、それで良いのかもしれない。
「どうよ、信也もやんね?」
などと誘われてしまったが、ゲームに夢中で病院搬送なんてニュースを見ると、さすがにそこまでしてフルダイブ型VRゲームを始めようとは思わんのだが。