バイト終わって、外で飯食って、そんで泣いた
バイト終わって、外で飯食って、そんで泣いた。
別に失敗したわけじゃない。理不尽に叱られたり、無茶な仕事を任されたりもしていない。
本当に山も谷も無く、最後まで淡々と業務を熟していただけ。楽しいとは思わないけれど、辛くもなかった。
ただ、大人になったって、思ってしまったんだ。飯食い終わって会計に行くとき、頭ん中で、バイト代から代金引く計算を無意識にしてた。
嘗めんな、と言われるのは分かってる。子供のごっこ遊びから、たった一歩進んだだけで、労働と呼ばれるものがずっと遠くにあるのは知ってる。
でも、自分で稼いだ金で、糧を得たっていう事実に間違いは無い。それが、もう子供じゃないんだからっていう、使い古された文言を自覚させた。
そういや小さい頃は、残してしまうことも何回かあった。今日は何も考えずに大を頼んで、それでも腹が膨れなかったのに。
そもそも店は違う場所にあった。僕の家より、おばあちゃんの家の方が近かった。
街灯が伸ばす影は、誤魔化しようがないほどに長くなって。とっくの昔に、親の背丈を越えてたことを思い出す。
今更、すら無かった。枕になんて、何も付かず、ただ嘆いてもしょうが無いという現実が、否応無く突きつけられる。
時を経ることを、成長なんて言葉で飾ってくれるな。それは紛れもない喪失なんだから。誰がどれだけ祝おうと、この目にはその虚しさだけしか映らない。
悲観しすぎだと、そう言って笑うことをあなた達に許すから、涙を妹に見せたくなくて、自宅の前でへたり込んで泣く僕を赦してくれ。
お世話になった塾で、学生気分のままやった講師のバイトとは、丸っきり違う二度目のバイト。
達成感はなかった。代わりに手にしたのは、戻りたいという願望。憐れむ必要は微塵も無い。成し遂げたことの気持ちよさなど霞むほどの、僕にとっての一番の報酬だと、心の底から思っている。
一生、手放すつもりはない。