表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

バイト終わって、外で飯食って、そんで泣いた

作者: 士介


 バイト終わって、外で飯食って、そんで泣いた。


 別に失敗したわけじゃない。理不尽に叱られたり、無茶な仕事を任されたりもしていない。


 本当に山も谷も無く、最後まで淡々と業務を熟していただけ。楽しいとは思わないけれど、辛くもなかった。


 ただ、大人になったって、思ってしまったんだ。飯食い終わって会計に行くとき、頭ん中で、バイト代から代金引く計算を無意識にしてた。


 嘗めんな、と言われるのは分かってる。子供のごっこ遊びから、たった一歩進んだだけで、労働と呼ばれるものがずっと遠くにあるのは知ってる。


 でも、自分で稼いだ金で、糧を得たっていう事実に間違いは無い。それが、もう子供じゃないんだからっていう、使い古された文言を自覚させた。


 そういや小さい頃は、残してしまうことも何回かあった。今日は何も考えずに大を頼んで、それでも腹が膨れなかったのに。


 そもそも店は違う場所にあった。僕の家より、おばあちゃんの家の方が近かった。


 街灯が伸ばす影は、誤魔化しようがないほどに長くなって。とっくの昔に、親の背丈を越えてたことを思い出す。


 今更、すら無かった。枕になんて、何も付かず、ただ嘆いてもしょうが無いという現実が、否応無く突きつけられる。


 時を経ることを、成長なんて言葉で飾ってくれるな。それは紛れもない喪失なんだから。誰がどれだけ祝おうと、この目にはその虚しさだけしか映らない。


 悲観しすぎだと、そう言って笑うことをあなた達に許すから、涙を妹に見せたくなくて、自宅の前でへたり込んで泣く僕を赦してくれ。


 お世話になった塾で、学生気分のままやった講師のバイトとは、丸っきり違う二度目のバイト。


 達成感はなかった。代わりに手にしたのは、戻りたいという願望。憐れむ必要は微塵も無い。成し遂げたことの気持ちよさなど霞むほどの、僕にとっての一番の報酬だと、心の底から思っている。


 一生、手放すつもりはない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ