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60_その魔獣は後ろを向いたら舌を出す

「魔弾にゃ!」


 ドシュ ドシュ ドシュ


 私はモリが氷結魔法の詠唱が完了する間魔弾を連射する 頭の中で禁書が私の魔法発動を最適化する為レコードオブインペリアルを受けた程ではないにしろ私の魔法は強力かつスムーズに打ち出された


「ウギャギャー」


「く 当たらないにゃ」


「タマ 逃げるんや」


 ミリが私の危険を察知して声をあげる

 魔獣は私の不意の攻撃に驚き大きく飛び上がると四肢をのばしたまま両手両足の指を空に向かって伸ばしそのままその触手をアーチ状にして私に降らせた

 私は禁書の力によってその触手の着弾地点を瞬時に計算しそこから数メーター飛びのける


「タマ いける」


「頼むにゃ」


 モリの詠唱が終わったようだ幸いにも魔獣は飛び上がった体制の為身動きは取れまい


「氷結!」


 ミリの魔法はワンドから冷気の道を走らせる そして次の瞬間指を伸ばしたままの魔獣の足元を凍らせた 魔獣はしばらくもがいていたが観念したのか凍っていない手の指をもとに戻すとボロボロと涙を流しながら命乞いを始めた


「タスケテ オネガイ オネガイ モウ コウゲキ シナイ タスケテ・・・・・・」


「お前 言葉がしゃべれるにゃ? 」


「タスケテ オネガイ オネガイ モウ コウゲキ シナイ タスケテ・・・・・・」


 魔獣の美しい容姿のせいもあったかもしれない ソフィがいたなら助けてあげてときっと言うに違いないそんなことを思い浮かべながら私は少しの違和感を覚えながらも必死で懇願する魔獣に心を動かされた


「モリ もう術を解いてやるにゃ」


「タマ ええの?」


「うにゃ しかたないにゃ・・・・・・」


 ピキピキ


 モリのワンドから出ている氷の道が溶解した後霧散していく


 そして術を解かれた魔獣は地上に落ちたがこちらを向いて何度も頭を下げながら私達から距離をとった

 私達は集まりその様子を見送った そしてようやく祠へ侵入しようとしたその時だった


 ヒュールヒュルヒュル


 風を切るような音が迫ってくる


「上や! みんな 今いるところからできるだけ離れるんや!」


 ミリの声に反応して皆咄嗟にその場から十数メーター離れる


 ドドドドド


 私達のさっきまでいた所に7 8本の触手が降り注ぐ


「っく さっきの魔獣にゃ 逃したのは間違いだったにゃ」


 魔獣はきっとどこかで私達が祠へと入る瞬間を隠れて見ていたのであろう なんと姑息な 私は騙された悔しさと浅はかさでワンドを握りしめながら次の策を考えている

 魔獣は触手で連続的に攻撃してくる・・・・・・結果的に場所は簡単に特定できる・・・・・・私はミリに作戦Cの合図を送った

 作戦Cとは触鬼を捉えるための作戦でA包囲 B特攻 C分散の基礎的な触鬼の捕獲方法だ 大抵の場合Aの包囲やBの特攻を使って捉えるのが一般的だが敵が複数かつ強敵の場合Cの分散 すなわち触鬼を分散しておいてその中の1匹をターゲットにするやりかただ 今回の魔獣は1匹ではあるが攻撃は両手両足の10本の触手によっておこなわれている パーティは一度ばらばらに散らばり敵の攻撃が薄くなったところでこちらの誰かが攻撃する算段だ


「みんな また あとやで」


 ミリはそう言って一足先にパーティーから外れ小さな魔弾を打ちながら右へ左へと触手を誘導しながら走り出した


「ランキ様 お乗りください・・・・・・」


 さっきまで横になっていた ギブレは形態を魔獣に変えランキを乗せその場を猛スピードで駆け出した 傷が浅かったとはいえ伝説と言われるその魔獣の回復力には驚かされるばかりだ


 パーティーが動き回っている間私はなるべく気配を消し魔獣の攻撃のターゲットにならないようにしていた そして攻撃を仕掛けている魔獣へ後ろから即座に近づき持っていた短剣に魔力を込めて一閃した


「グギャギャオーン」


 魔獣は悲鳴を上げると一瞬のうちに霧散し後に高位の魔獣である証の禍々しい魔石を1つ地面に落とした


「やったにゃ・・・・・・」


「タマぁ やったんかぁ?」


 攻撃が無くなり私達の勝利を核心したミリたちは早速私のところへと駆け寄ってきた 私は魔石を掲げて魔獣の討伐を報告をしたあとその魔石をギブレへと渡した


「ギブレ あげるにゃ」


「私に? 有難うございます」


 人の形に戻っているギブレはランキに目線で確認をとるとその魔石を口の中にほおりこみバリバリと音をたてて飲み込んだ


「うーん 口の中に感じる濃厚な風味 体の中で感じる熱い躍動 私は私は・・・・・・あっはーん」


 魔石を食べたギブレはなんだか恍惚な表情でしばらく空を眺めていた どうやら魔石はギブレに至福の時間を与えたようだ


 ・・・・・・


 魔獣を倒した私達は祠の中へと進んでいく 通常強力な魔獣のテリトリーには他の強い魔獣は存在できない おそらくこの祠にはもう先程のような魔獣あるいは触鬼はいないのだろうギブレの嗅覚にも魔獣の気配は感じられないらしい

 私達はエレナルの案内によって祠の奥に祀られているという吸血族の秘法の場所までやってきた その場所は石造りの部屋でその中に祭壇のようなものが設置されていた


「ちょっと待っててありょ」


 エレナルは袋から村長から預かった角の形のネックレスを取り出すとそれを壇上へと置き両手をそちらの方へ向けた


「これから封印をとくありょ みんな少しだけ喋らないようにしてありょ」


 エレナルはそう言って皆を黙らせるとなにかの呪文のような言葉を詠唱し始めた


「アリョアリョ パリョマリョ ソリヨ ムリョ パリョ マリョ・・・・・・・」


 祭壇は徐々に光を放ちその上に人の抱えられる程度の青紫に光る箱を出現させた

 エレナルが詠唱を終えてもその箱は残り徐々に光を失っていった


「いいありょ この箱の中に秘法の書があるありょ タマ 私がこの本を解読するまで少しだけ待っていてほしいありょ・・・・・・」


 エレナルは箱の中の書を取り出しそれを裏表眺めた後私達にそういった どのみち私達には読み方も使い方も理解できないのだ 私達はしばらくの間秘法の部屋を出て静かにエレナルが本の解読を終えるのを待つことにした


 ・・・・・・


「タマ ミリ みんな 終わったありょ こっちに来るありょ」


「エ エレナル?」


 最初に振り向いたミリはエレナルの変化に驚嘆の声を上げた




















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