42_鍛冶師ベルエン
「ご ごめんくださいにゃ」
私達はソフィの父であるカスタード王国国王の手紙を赤顔族の鍛冶屋ベルエンへと渡すため赤顔族の村の崖の上にあるベルエンの鍛冶場へとやってきていた
ベルエンはこの村でも有名な鍛冶師でもありその場所はすぐに調べることができた
鍛冶場は年季が入っているようで入口の引き戸は古びた感じに見えたが開けると意外にスムーズにガラガラと音を立て開いた
作成途中であろう武器がバラバラとおいてある鍛冶場のその一角には出来上がった武器が数本美しい光を放っていた その中でもひときわ目立つ大剣は部屋の隅にあったにも関わらず異様な魔気を放っていた いったいあんなものを誰が使うのだろう・・・・・・
「うおい なあんだぁおまえらわぁ ヒック」
赤ら顔の大柄の男が怪訝な顔をしてこちらを見かえした
近くに置いてある酒瓶で酔っているであろうことがわかる
今にもおそいかかりそうな真っ赤な形相でこちらを見ているため 私はすぐに要件を伝える
「カ カスタード王国 国王ゲルヴィ・カスタード1世より書状を持ってきましたにゃ」
「んあ・・・・・・なんだってぇ 兄貴から手紙? ええい ちょっと待ってな」
ベルエンは今までの調子とは一転して焦ったようにその場を片付けはじめる
「おおう 鍛冶場はひとまず片付ける 隣の小屋で話を聞こう 先に行って待ってな」
ベルエンは一通りの片付けを終えるとそう言って私達を隣の小屋へ入るように促したが私達は小屋の入口さえわからずその手前でうろうろしてしまった
「こおおらああ 娘ええ なにやってんだ そこから入んだよぅ」
後から来たベルエンは大きな声でそういって入口らしい扉を指差した 私とミリ ギブレは平然とその指示にしたがったがモリとランキはその威圧感に怯え気味だ
小屋の中は食事 あるいは休憩の為の部屋になっているようで真ん中に木製の机に椅子が6つ隣の部屋には横になるための座敷が用意されていた
「よし 話を聞こうか すわりな」
さきほどの鍛冶場のベルエンの酔っ払った様子が演技だったのではないかとおもうほどに誠実な感じで椅子についたベルエンは私を見据えてそういった
「こ これですにゃ」
私は国王にあずけられた書状をベルエンに渡す
ベルエンは信じられないといった様子で一度首を傾げて手紙の裏の封蝋を確かめた
「確かに国王のものだが・・・・・・」
ベルエンは手紙を開けるとそれをだまって読み始める
「な なんと・・・・・・」
そしてワナワナと震え始めると私のほうを向いて静かに言った
「そ・・・・・・それで 兄貴の娘・・・・・・王女ソフィはどこにいるんだ?」
私は返答に困ったが一つずつ順を追って説明することにした
国王からこの手紙を預かり姫を国外へ逃がすよう言われたこと 姫の儀式が終わった後私の体とソフィの体が一つになったこと 迷いの森でサドラから逃げたことそして渓谷でまたサドラと戦ったこと
ソフィの特殊な能力のこと そしてその能力の副作用で現在ソフィの精神は 表に現れることができないであろうこと等をたんたんと話したのだった
「・・・・・・うむ それでどうするんだ?」
「どうするって なにをにゃ?」
「・・・・・・兄貴の手紙では国が治まるまで姫をワシに託すと書いてある 兄貴の意向だ ここに住むのかと聞いているんだ」
私は手紙の内容を知らなかったが今の王国の状況を鑑みるとソフィをこの辺境に置くのも納得である 私はミリの方に目線を送ったがミリは少し顔を傾ける仕草を見せただけだった
「す 少し考えさせてほしいにゃ」
「そ そうか・・・・・・ま まぁ ゆっくり考えればいいことだ どのみちワシはここにずっとおるのだからな」
「あ あの ベルエンさん・・・・・・ベルエンさんって国王とどんな間柄・・・・・・」
めずらしくモリが口を開く
「ああん?」
ベルエンはそんなモリにぶっきらぼうに返答するとモリは怯えたようにミリにしがみついた
「あ すまん 怖かったか? この風貌でこの顔だ 怯えるなという方が難しかろう ああ そうだったな 兄貴との関係だったな?・・・・・・ まあいわゆる戦友って奴だ ワシは現王国が誕生する前の政権で兄貴とともに傭兵として敵軍と戦っておった だが真の敵は雇い主である国王であった 国王は我々を売ったのだ 我々にろくな装備を持たせず敵につっこませ 戦況の不利を理由に敵国と和平を持ちかける計策であったようだ それだけなら良かった ・・・・・・ 我々も民の家族やこの国の平和の為であれば人柱になればよかろう そう思っていたのだ だが実際は王は・・・・・・王家一族が助かるが為に民まで売っていたのだ それを知った兄貴はすぐに戦場を放棄し国王を打った・・・・・・」
「ベルエンはその時カスタード国王と共に戦ったにゃ」
「そうだ 娘 故に兄貴とワシとは家族より深い絆でむすばれておるのだ・・・・・・」
ベルエンは少しだけ顔を緩ませてそう答えた
「んにゃ?」
「どうした?」
「でもおかしいにゃ もしベルエンがカスタード王国を作ったというのならば王城にいるのが普通じゃにゃいのか?」
「がっはっは 娘 それは普通ではない 人には誰でも夢があろう もしその夢が現実になるチャンスがあればそこでとびだしてみるのも人生ってものだ ワシは兄貴が国王になった後無理を言って多大な報酬を持ってカスタード王国を出た そしてそれを元手に今では魔工と呼ばれる程の刀鍛冶となることができた まあ実際は城での窮屈な生活に耐えられなかったのかもしれぬが・・・・・・今となってはどうでもよいことよ 」
ベルエンは照れくさそうに顔を真っ赤にしたかとおもうと真顔になって続けた
「うむ だが兄貴が王女をここに預けるということは相当国の状態が悪いのであろう どうだ 娘」
私が王に話を聞いた時すでに王は 城は敵の手に落ちていると言っていた もしかしたら私達がここについた頃にはカスタード王国はなくなっているかもしれない
私が悲痛な顔をして返答に困っているとベルエンは一転やさしい顔となって話した
「・・・・・・やはりそうか 娘 いや タマとか言ったな ここまで手紙を届けてくれてありがとう ソフィの事は承知した ここに住むか住まぬかの返事はタマの気持ちでよい ゆっくり決めてくれ ああ あとここは自由に使っていいからな ワシはいつも鍛冶場で寝ておる 向こうが家のようなものだからな ワシは仕事に戻る」
そう言ってベルエンはなにか噛み殺すような気を発しながら部屋を出ていった
・・・・・・
私達はその日ベルエンの小屋で静かな夜をむかえた




