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3_転機

「タマは平気なの? 道 わかんなくなっちゃったんだよ」


 私はこのまま姫を振り切り逃げてしまえばという考えが一瞬頭へ浮かんだがその考えは後で聞こえるサドラの怒声とも思えるだみ声によってかき消された 普段から慣れていなければ人はそう簡単に悪い行ないも良い行ないもできるものではないのだろう・・・・・・


「タマァ 姫 どこにいる 標はどこだぁ・・・・・・まさか タマ おまえが・・・・・・」


「姫 こっちですにゃ」


 私は姫の手をさらに強く握り私だけ見えているであろう迷いの森の光る標を進んだ サドラの声は森の理により違う方向へと変えられたのかすぐに聞こえなくなった

 そしてようやく森の出口が見えた頃私の手からは姫の感触が消えていた


「姫 どこですにゃ?」


「タマ どこにいるの?」


 姫は近くにいるらしい・・・・・だがそこに姿はなかった

 何度もお互い話しかけるたびにその声が自分の中にあることに気づくのにそう時間はかからなかった


「なんで」


「なんでにゃあああ」


「姫 姫 ちょっと落ち着くにゃ まずはこの森から離れるんですにゃ ここは魔物や凶暴な触鬼もうようよしているって聞いているにゃ 落ち着けるところを見つけてそこで話すにゃ」


 当然 私もこの状況は理解の範疇を超えるものであり錯乱状態にかわりはなかったがなにより森の中のサドラが今にもそこからでてきそうで恐ろしかった

 私 いや 私達はこの森の近くに位置するザモの町ヘ向かい宿をとることにした ザモの町は迷いの森の雨が地下で集まり湧き出しそこを中心として作られた小さく美しい町だ


「姫 近くにあると言われている街の宿を取りそこで今日は休みますにゃ そこでこれからのことを話しますにゃ・・・・・・」


「うん わかった タマの言うとおりにする」


 これは少し経って分かったことなのだが2人の意識がはっきりとしている場合どちらかに抵抗の意志があると体が思うようにうごかなくなるようだ 今回ザモの町まで難なくこれたのは姫が私に絶対の信頼を持っていたからに違いなかった


 ・・・・・・


「にゃあ(きゃあ)」


 私達は宿屋に備え付けられた小さな化粧台の鏡を見て驚愕の声をあげた

 なんと私の顔が姫のような顔になっていた いや正確に言うと姫と私の顔を足して2で割ったような顔だ そして頭には姫にはないであろう獣の耳が見えている 昨日王につけられた頬のアザはうっすらとまだ残っていた


「これって・・・・・・私とタマの体一つになっちゃったってことだよね・・・・・・」


「そのようですにゃあ」


 姫はうすうす感づいていた事をおそるおそる私に話す

 私もかなり動揺してしまっていたが姫を怯えさせまいと冷静を心がけた


「ま いいかぁ だってこれからずっとタマと一緒だし一人じゃ何も出来ないところだったんですもの」


 驚いたことに姫はこの状態を半ばあきらめたようにすんなりと受け止めてしまった

 姫は私にこれから一人では何も出来ないところだったといった 私はそんな姫の言葉に違和感を覚えおそるおそる聞いてみる


「もしかして 姫は・・・・・・今日 私と共に国を出ることを知っていたにゃ? タマが王に呼ばれたとき何を言われたのか知っていたにゃ?」


「タマ 本当は・・・・・・私も父に呼ばれ今日のことを聞いていたの まさかばあばが敵の国にに加担しているなんて思いもよらなかった・・・・・・父はこう言ったの 私はタマにお前を託す タマと共に生きろ 生きて・・・・・・いつの日かこの国を取り戻してくれ・・・・・・ってね あ あと もしタマが裏切り者ならばおそらくお前の未来はないだろうなんてこともいわれたの」


「姫は強いんだにゃ・・・・・・タマが家族にそんなことを言われたらきっとショックでしょげてしまうにゃ」


「ううん・・・・・・ 違うのタマ ただ実感がわかないだけかもしれない きっとまだ心のどこかでまたばあばたちとも仲良く暮らせる日がやってくる・・・・・・お父様とも会える日が来るんだって思ってるからだと思ってるからだとおもうの だから 今は心配しない・・・・・・だってタマといっしょなんだもん」


 鏡を見ていた私は自分の顔がひどく不安げになっていく様子を眺めた


「そ そうですにゃ 姫 心配しなくていいですにゃ きっと 王様がなんとかしてくれるにゃよ 今タマたちがやらにゃいといけにゃいのは王様に言われた通りに南の街の鍛冶屋さんを目指すことなんですにゃ それだけを目指していればいいにゃ なんでも南の街にはとてもおいしい食べ物があるって聞いたにゃ」


 私は余計なことを姫に考えさせれば不安となりそれがまた別の不安を呼び込み悪循環になってしまうだろうことをしまうことをあんじてなるべく旅へと姫の意識を向けるよう心がけた 南の街においしい食べ物があると言ったのはもちろん嘘だ つかまってから城の外にでていない私にその手の情報は皆無だ 


「タマ これから私達は南の街を目指すのね わかった」


 ・・・・・・


 私は窓の近くに備えられた椅子まで行き座った 私はぼんやりと次の行動を考えていた 


「ふう タマ なんだかすごく眠いの・・・・・・ちょっとだけ・・・・・・休むね」


 姫がそういったあと私の体の中から姫の意識が消えていくのがはっきりと分かった どうやらこの体での意識の出し入れは本人の意思によって決められるらしい 2人でいっしょに生きていく場合お互いのプライベートな部分も尊重しなければその生活は破綻してしまうだろう 姫が次起きたらそのことを話しお互いの時間をつくるようにしよう


 ・・・・・・


 姫の意識が体からなくなってから数分間私は窓から外を眺めまだ平和そうなこの町の音をきいていた

 はっと気づく 今 私は束縛がない自由な時間を生きているのだということに・・・・・・

 初めてだ・・・・・・ 私は・・・・・・自由だ もう なにもいらない今死んでもくいはないだろう そんな充実感を感じていると自然と涙がこぼれた

 そして椅子の上で腕をのばし大きくのけぞり あああ と声をあげた

 こんな単純な行動さえも私にとっては自由を感じ感動は海となって押し寄せた

 そんな私の心を察してか姫は数日間意識を休ませていた 私は自由を噛み締めながら南の街へ行くための準備を始めた











































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