26_訳
老人はランキを叩いたあとひどく悲痛な顔をしてランキの方を震えながら見ていた
同じ様に悲痛な顔をしていたランキはそれでも村の触鬼を襲った理由をぽつりぽつりと話しだした
「お おじいさん ごめんち・・・・・・ 身寄りのない私を育ててくれたおじいさんには迷惑をかけたくなかったんだっち 村のみんなに安心して暮らしてほしかったっち」
ランキはひと呼吸おいたあと続けた
「ランキは長年マシュについて色々と研究していたっち ある病気の兆候のことを偶然発見してしまったっち その病気はマシュが感染すると知らぬ間に形態を変え凶暴化するってものだっち 今まで病気のマシュは飛んでいってしまいその被害は村には出ていないのが現状だったっち しかし今回の兆候はひどかったっち・・・・・・放置すれば村の半分のマシュは凶暴化し村人を襲う可能性があったっち 私は静かに病気にかかったマシュを処分しようと目論んでいたっち・・・・・・そしてランキの計画はほぼ成功したっち 捕まらなければっち・・・・・・」
「ラ ランキ お前はそんな大事なことをなぜ村の人たちに伝えなかったんじゃ?・・・・・・」
「あたりまえのことだっち 村の人にとってマシュは神聖な生き物・・・・・・古い慣例によりマシュは祭事のときの生贄のもの以外殺すことを禁じられているっち・・・・・・そんなところに病気だからなんだからと言ってマシュを殺そうとする私の言い分が慣例に追従するみんなに通じるわけないっち・・・・・・」
「そ そうじゃったのか・・・・・しかし」
「あそこだああ」
遠くで他の村人たちの声がする
「そ そこの女性冒険者のかたがた・・・・・・」
「タ タマたちにゃ?」
老人は私の方を見ると額を地面につき土下座しながら懇願するようにいった
「理由は聞いてのとおりでございます この娘は村のためを思い行動を起こしたのです ですがきっと理由を話したところで他の村人はこの娘の事を許すことはないでしょう ひどい目に合わされるのは目に見えています どうか どうかこの娘を逃してやってください 無理なお願いかもしれません 村から離れるまでで良いのです なにとぞ・・・・・・」
「おい みんなぁ 帰るぞお」
冒険者たちは決断を私達に一任し厄介事に関わらぬようさっさと竜車場のほうに引き返し始めた
(ソフィ どどどう するにゃ?)
(こまったわね これは私の一存では決められないわ・・・・・・)
「おい こっちや」
「きゃ」
「爺さん ランキは修行のたびに出る・・・・・・ええな」
「おおお・・・・・・」
ミリはランキの手を引くと私とモリの方へと強引に引き入れた ランキは短い悲鳴をあげたが抵抗などせずミリの指示にしたがった
老人はその場でミリのほうを拝みながら嗚咽だけを残しランキの方を悲しげに見ていたがすっくと立ち上がり顔を手で拭くとしっかりした顔つきに戻り頷きながらランキへ小さく手を振った
「ランキやったな・・・・・・ フードを少し深めにかぶりや タマ モリいくで」
「にゃ」
「う うん」
私達は足早にその場を離れ竜車のあるほうへと移動した
こういった場面でのミリの決断力は早い 私は感心しながらミリとランキのあとへ続いた
「族には逃げられたんやて いったいほかの冒険者たちはなにをやってんや」
ミリは老人の方へ向かって通り過ぎていく村人たちにわざと大声でそこに犯人がいないことを伝えていた
・・・・・・
私達は竜車へつくと夜明けを待たず出発することとなった
「ランキ ウチらと一緒に村を出るならウチらのルールを守ってもらう ええな」
(ソ ソフィ ルールなんてあったにゃ?)
(は 初めて聞いたわ・・・・・・)
「ランキ 実はうちらは竜車の竜の世話をゲームで決めてるんや な なあ モリ」
ミリはモリに目配せを送ってモリに同意を求める
「う? うん」
「なあ タマ」
「にゃ? にゃあ」
ミリになにか考えがあるのだろう・・・・・・ここはひとまずミリの考えに同調しておくのが無難だろう
実は竜の世話は一週間の当番制でやっているものでこれは誰が決めたものではなく旅をしていく上で自然にそうなっていったという経緯があるものだった
「ルールは簡単や ここにサイコロがある 皆が一度ずつ振って1番小さな目をだしたものが一週間の竜の世話や」
「それじゃあ まずはタマとソフィや」
(私達 体一つなのに2回サイコロ振るのってなにか損してる気分ね)
(本当にゃ・・・・・・そもそも こんなルール・・・・・・にゃ)
私は気づいてしまった・・・・・・今週の竜の世話はミリの番だったということに・・・・・・
ミリは新人が入ったことを良い事に竜の世話を回避する算段だろう
そうはさせにゃい
「にゃあ ミリ にゃんだかタマは今ツキがおりてきてにゃい気がするにゃ ミリが先にふるにゃ」
「あは うちはなんかめちゃめちゃ乗ってる気がしてん ええんかなぁ ほな最初にっと」
ミリはそう言ってサイコロを岩の上へと転がした
「やや ややや 5や うわあ 6ならよかったんやけどなぁ・・・・・・」
(ソフィ ミリはサイコロに魔法を付与してズルしたみたいにゃ 最初から6だと怪しまれるからきっと5にしたにゃ)
「はじめまして ランキ ソフィ・カスタードといいます わけあってタマと体を共有してます ソフィと呼んでくださいね」
「え あ よよとろしくっち」
ソフィは私と精神を入れ替えるとランキに挨拶を交わした
ランキは突然雰囲気が変わった私達に目を白黒させていたがミリから人格が2つあることの説明を受けるとすんなりとそれを受け入れた
「じゃあ 振るわね やぁ」
私はソフィと体を入れ替える少し前にサイコロに弱い魔法を付与した これで出目は6がでるはずだ
ソフィは私がサイコロに細工したことはわかってないようだ にゃは それでこそ自然な反応が期待できるってものにゃ
「うわぁ やられたわぁ ソフィ やるやん」
「お やったぁ 6だわ はい じゃ タマ タマの番よ」
ミリは自分より低い数字が1人だけいればいいのだ まだまだ余裕が感じられる
「んにゃ タマはもう少し後で振るにゃ ランキ 振るにゃ」
私は私に回ってきたサイコロにソフィと同様に弱い魔法を付加しそれをランキに渡す
「あ ありがとっち それじゃあ ふるっち」
「・・・・・・え」
「やったぁ ランキも6だよ 嘘みたいっち」
素直に喜ぶランキ
ミリはさすがに2度も6が出るなどとは思ってもいなかったようで首をかしげながらサイコロを見ていた
(・・・・・・ミリが動くとすればここにゃ)
「じゃ タマが振るにゃ」
私はランキの振ったサイコロを地面から拾うとすぐにふろうとする
「ちょっと待つんや」
「なんのまねにゃ?」
ミリが私の腕を掴んだミリと私の間にまるで時間が止まったかのように緊張が走った
「ちょっと サイコロを見せてもらってええか?」
(ふふ タマの思ったとおりにゃ)
「いいにゃ ミリ」
私はミリに素直にサイコロをわたした




