11_それはすでに決まっていた
「それでは 最後のゲームです ランクを決めるためカードを一枚ずつ引いて下さい」
私達は順番にカードを引いた後硬貨を円の中へ置いていく
そして場に開かれたカードをゲームマスターが読み上げた
「おっと 魔王のカードが一枚入っていますねぇ これは通常の触鬼のカードの点数に乗算されます 今回のレートは30倍です」
「ききき キタキタのでぇす 最後の最後にこのこのラポに勝機がまわまわまわってきたのだぁああああ きゃははは」
ラポは歓喜の声を上げキャッキャと浮かれているしかし勝負はまだ始まってもいない
(ねぇ タマ もしかしたら私達ってこのラポって子をおとしいれるためのさくら役なんじゃないかしら・・・・・・)
姫はカードを受け取る私の思考を妨げないよう静かにそう語った
(姫もきづいたにゃ? そうだにゃ・・・・・・今までの流れを考えるとゲームマスターもおそらくラポの隣の男もグルだと思うにゃ)
(じゃあ 私達はそれを知らされないままこのゲームに参加させられてるってこと?)
(きっとそうだにゃ・・・・・・タマたちになんにも知らせにゃいほうが相手に不信感を抱かせる行動をしないかもしれにゃいと考えたのかもしれにゃいにゃ・・・・・・)
(このカード・・・・・・)
(にゃはは・・・・・・これほどあからさまなカードがくるとはにゃ・・・・・・)
私の手札は5枚中4枚が豪華な装飾が彩られたものであり4枚すべてに4天王と書いてある カードの文字はカンナ ナベンナ サキ アルミと書いてあるように見える
すでにカードの強い役は出来ているのだがこのカードに魔王ラミスのカードが来るとゲーム最強の役が成立する
一巡目は私のカードに変化がなくラポに良いカードが回ったようだ
「やったった ラポのカチカチは見え見えたのっだ」
ラポは歓喜の声をあげるとベットの金額をあげるため自分の着ている衣服まで脱ぎ
賭け始めた
そしてラポが賭け終わるとすぐに私のところへカードが舞い込んできた
(タマ おもったとおりね・・・・・・)
光り輝くそのカードは一番最初にラポの隣の男が引いた魔王ラミスのカードだ
私はこの役でこのゲームを終わらせられる権限を得た
「やったにゃ 役が揃ったにゃ 信じられないにゃ」
私はおおげさによろこび場の方へ捨てるようにカードを開いた
きっと老婆が大げさに喜べと行ったのはラポが負けた後私が勝ちを掴んでラポの射幸心を煽るための演出だったのだろうが今回はそれとは関係ないとおもいながらもついつい歓喜の声を上げてしまった
「うそうそ そんなの あるわけわけないのの」
ラポは強い役が揃いかけのカードを力なく自分の眼の前に開いておいた
そして目を抑えて机に肘をついた
どうやらもうなにかいう気力もなさそうだ
部屋のドアが静かに開かれるとそこには私を案内した無感情な少年を先頭に3人の男たちが足踏みをしていた
「僕たち 進め」
少年は右手を上げると足踏みの状態からこちらに向かって歩き出した
まるで何かの行進のようだ
どうやらこちらのテーブルへとやって来るようだ
「僕たち 止まれ!」
少年は上げた右手を下ろすとラポの隣に止まった 後ろの3人の男たちも同じように止まる
「お前 こっち 」
少年は右手を水平にあげその手をラポの方に置きそう言うとすぐにくるりと振り向き左手を上げて足踏みし始めた
ほとんど下着状態のラポはうつむいたままうなだれていたが男たちにがっしりと両腕を抱えられ椅子から引き剥がされた
「こんこんこんな 詐欺詐欺 ゆるゆるさない ラミスおば様に言ってこんな所つぶしてしてやるやる」
「ラポ様 詐欺なんて・・・・・・これはゲームです 勝ちもあれば負けもあるのです 残念ながらラポ様はお負けになりました・・・・・・ ラポ様はウチにたくさんの借金をしてしまいましたので借金が終わるまでは働いていただきますよ」
ゲームマスターは淡々とそう語るとテーブルの後始末を始めた
「わかわかわかった お金が払えればいいんだろ あああ タタタタマとか言ったな」
ラポは男たちに抵抗しながら下着の中から一枚の紙を出すとそれを他の客やゲームマスターに分からないよう私の方に差し出した
「タマ 君 旅人なんだろ このゲームするの初めてだったんだろ ラポはラポは君のせいで負けたんだ すこすこしでも悪いと思うならそそれをラミスおばさま そう 現魔王ラミスに届けて届けて」
「ええ? タマ タマがにゃ? にゃんで?」
「僕たち出発」
少年はそう言って行進しはじめると男たちもそれに追随した
「くそ くそう はなはな離して・・・・・・」
ラポの声が虚しく部屋を出て小さくなっていった
扉が完全に閉じるとどこからともなく老婆が私の隣にたち一枚の封筒を差し出した
「ほらよ 今日の駄賃だ 受け取ったら着替えてさっさと帰りな 余計な詮索はするんじゃないよ 帰りの竜車は事務所の前だそれに乗りな」
どうやらこれで今日の仕事はおわりのようだ
ゲームマスターも片付けを終わるとさっさとどこかへ行ってしまった
・・・・・・
私達は着替えと送迎の竜車のある事務所へと移動することにした
店から出た私はここへ連れてこられて来たとき感じた向かいの建物からの視線が気になりそこを眺めた
(姫 あれ ラポだにゃ)
(きゃあ なに なんで・・・・・・)
窓からちらと見えたその光景はラポが首輪をつけられ引かれている姿であった
いくらゲームに負けたからといってあの仕打ちはあまりであろう
私達は言葉を失ったが日雇いの私にはゲームで勝った報酬などはなくそれを救出するすべはなかった
私にできるのはラポからもらったこの紙切れを現魔王であるラミスに届けることくらいだ
が魔族に知り合いなどいるわけもなくひとまずその紙は大事にしまっておくこととした
私達が竜車場へついたのはもう夜だった