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ある晩、ふと目が覚めたので、たまにはと思って月を見ようとバルコニーに出た。
綺麗な満月だわ…
久々に明るい気持ちになった。
しばらくして、そろそろベットに戻ろうと思ったところで隣のお部屋からバルコニーへ誰かが入ってきた。
えっ姉様…泣いてる…?
涙を流しながら月の明かりに照らされる彼女は、まるで月の女神のようで儚くどこかに行ってしまいそうだった。
まだ私には気づいていないみたい。
私が生まれてから一回も姉様が泣いたところを見たことがない。
そんな姉様が泣いている。
本当は知らない、見なかったことにした方が良いのはわかってるの。
でも私はあの涙の理由を知ってる。理由を作ってしまった。
「アリア姉様…?」
とても小さい声だったけれど静かな夜には十分だった。
「オリヴィア?…あら!嫌だわ。こんなみっともない所を見せてしまうなんて。姉様失格かしら」
ふふっと笑う姿は美しいけれど、無理をしているのがわかる。
だから耐えきれなくなり言ってしまった。
「姉様。姉様の今の気持ち、私ずっと気づいていました」
震えてしまった。
「オリヴィア?なんのこと…?姉様はね夢見が悪かっただけ「オーウェン様ですよね?」
「私知っていたのです…姉様がオーウェン様に惹かれていること。そしてオーウェン様もアリア姉様に惹かれていることを…」
「ま、まさか…そんなことはないわ!オリヴィア。私そんなことは…オーウェン様だってオリヴィアのことが好きなはずよ」
「姉様、私姉様のことが大好きですの。お願いですから本当のことを言ってください。私はオーウェン様を好きですがそれは恋愛ではないのです。それはオーウェン様も同じです。」
「……」
「私が引き合わせてしまったから…姉様に笑って欲しくてオーウェン様とのお茶会に招いたのも私でしょう…?私のせいなのです。ごめんなさい」
私に泣く権利なんてないのだけど泣きそうになってしまった。
「いいえ。オリヴィアそんなことはないわ。叶わないことを知っていても人を想うことができたのはとても幸せなことだったわ」
静かに姉様が言った。
「叶わないのにですか…?」
「ええ。そしてあのお茶会も幸せだった。でも何より私の可愛い妹が私のためにそのような時間を考え、あの場に招いてくれたことを知れたのも幸せだわ。」
本当に幸せそうに言うので少し泣いてしまった。
「ね、姉様は優しすぎるのです…!私の身勝手を怒ってくれてもいいのですよ!」
「ふふっありがとう。でもね本当のところ私が悪いと思っているの。」
「なぜですか?」
姉様に悪いところなんてないのに?
「恋なんてしないと思ってたから、父様と母様のような夫婦は一握りで私には縁がなかったと思っていたから。だからレオと結婚することを決めてしまった。自分のことをわかりもしないで良い子のふりして現実主義を演じてしまっていた自分のせいなの。あっレオは良い人よ?本当に私の結婚相手にはもったいないくらいに」
「…レオ様のことはどう思っているのですか?」
「ん〜そうね。可愛い弟のようだわ!レオはオリヴィアには優しいお兄様だったと思うけれど私には生意気だったもの」
姉様は気づいてなかったのね。レオ様の気持ち。
「ああでも本当に。オリヴィアありがとう。誰かにこの気持ち打ち明けたかったのだけど無理でしょう?でも今オリヴィアが聞いてくれたからとても楽になったわ」
多分切なさも哀しさも押し殺して姉様は笑って微笑む。
ずっと考えてきたことがあった。
言ったらきっと戻れない。全部をぐしゃぐしゃにする覚悟が必要で。
でも姉様には心から笑ってほしい。
だから言ってみよう。
私が非常識な人だと思われても。
「姉様。提案があるのです。」
「何かしら…?オリヴィア?」
「婚約者を交換しませんか?」
書きたいように書いてしまってるせいで文章が変だったらごめんなさい。
暖かい目でよろしくお願いします!!






