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カトレア 18

翌日。

ルフト様の体調が戻り、ちゃんと授業に出席していることを祈りつつ自分も教室に向かう。


教室にはまだ誰も居らず指定された席に付く。

隣がリファル殿下で更にその隣がリリアナ様。


リリアナ様の席をぼんやりと見ながら昨日の妖精とのやり取りを思い出す。

妖精の話ではリリアナ様に悪魔が憑いていて背中に羽が生えてると言っていた………

魅入られたと言うルフト様の事ばかり気になって憑かれているリリアナ様について詳しくは聞かなかったけれど、リリアナ様の背中に羽など生えていなかったはず。

もしかして精霊や妖精にしか見えない羽なのかも。


リリアナ様はみんなから好かれ可愛がられている。リファル殿下との婚約発表がなされるまでは特に仲が良かった訳では無いが悪くも無かった。

発表されてからは何故か酷く敵視され嫌味や意地悪な事を言うようになったが、妃候補筆頭だった立場からすれば八つ当たりしたくなっても仕方が無い。


しばらくそんな事を考えているとリファル殿下とリリアナ様が仲良く教室に入って来た。

2人はそのまま私の挨拶を無視して席に付くと楽しそうに話続ける。


いつもの事なので無視される事は然程気にはならないのだが流石に今日はちょっと違う。どうしてもチラチラとリリアナ様に目がいってしまうのだ。


妖精達が言っていた背中をそっと確認するがやはり羽は生えていない。

リファル殿下との会話も流行りのスイーツやドレスや装飾品をねだるようないつも通りの会話。


ニナしか人間の友達が居ない私にはよく分からないが、悪魔が取り憑いているなど信じられない程年相応の普通の女の子に見える。

でも、嘘をつかない妖精達が言うのだから間違いなく悪魔は彼女の中にいるのだろう……


「……………い、おいっ!! カトレア・ラモエル!」


急に名前を呼ばれ我に返る。

声のする方を見れば怒りに満ちた顔のリファル殿下がジッと私を睨みつけている。


「な、なんでしょうか……。」


さっきまでリリアナ様と楽しくお話していたはずなのになぜ急に私に対して怒っているのか?

わけも分からぬまま返事をすると、


「先程からなぜリリアナ嬢を睨みつけている?

先日も東屋で彼女に失礼な事を言ったようだが勘違いも甚だしい。

私の婚約者にとの発表があったがまだ婚約式もしていない仮の状態。私が誰と何を話そうがオマエにとやかく言われる筋合いは無い。

それに発表の撤回を父上に陳情している。いつまでも婚約者面できるとは思わないことだ。

分かったら勘違いせず余計なことを彼女に言うな! それと精霊王の加護だかなんだか知らないがその気味の悪い()を我々に向けないように下を向いて歩け!!」


どうやらチラチラ見ていたつもりが考え事をしているうちにジッと見つめてしまっていたようだ。

今は殿下の首元を見ながら話を聞いていたが、目を向けるなと言われたら思わず見てしまうのが心理。

ちらりとリリアナ様を見ると悲しそうにも笑いを堪えているようにも見える表情をしていた。

どういう感情なのかは分からないが、私と目が合うと大袈裟に「ヒッ」と声をあげて顔ごと視線を逸らした。するとその声に反応した殿下が私を怒鳴りつける。


講師が来たことで一旦話はおさまったが、休憩時間になると不満や文句を言い始める。

余程私との婚約が嫌だったようで鬱憤が溜まっていたようだ。


授業が全て終わりトボトボと部屋に戻る道すがら今日の事を思い出す。

結局あの後はリリアナ様を観察する事は出来なかった。代わりに殿下の声を一生分聞いた気がする……

最初の内は黙って聞いていたのだが、途中からなにを勘違いしたのか私がリリアナ様に嫉妬をして嫌がらせをしていてそれを止めるようにとの忠告になっていた。


残念ながら私は殿下自身にも王妃の座もこれっぽっちも興味が無い。なので身に覚えの無いことばかりだし忠告そのものがかなり的外れ。

そう訂正をしようと試みたが、殿下は一切私の話を聞くことは無かった。

結局殿下の気が済むまで文句を聞き続け、殿下が

「疲れた」からとようやく解散になった。


部屋に戻るなり俯いてグッタリしている私に驚いたニナが色々と世話を焼いてくれる。

その間、世間話のようにルフト様が今日は登校していたと教えてくれた。


その報告に安堵する。ただ、顔色も良く体調も問題なさそうだと言う割にどことなく歯切れが悪い。

もしや夕べ悪魔に取り憑かれたリリアナ様に何かされて異変が!? と不安になりニナに詰め寄る。すると、


「……笑顔だったの。」


ニナは理解出来ないとでも言うように呟く。


「……????

それは……ルフト様だって嬉しかったり可笑しかったら笑うでしょ? 最近は不安定で不機嫌な事もあったけれど前はいつもニコニコされてたじゃない。」


そういうと呆れた様にため息をついて、同級生としてのルフト様の実態ついて話し始めた。


「カトレアからの手紙にはそう書いてあったから私も初めは穏やかな方かと思っていたのよ。

でもね、実際は教室では全然笑わない、表情が変わることも滅多に無いわよ。

どんなに身分が高い相手にも愛想は無いし、必要最低限の言葉しか交わさない。女子生徒だけでなく男子生徒にも同様ね。

唯一、他の人より多く話すのが同じスペランツィアのライク様(2号)ってところかしら。

……それなのに今日、久々に登校してきたあの男は教室に入るなり皆に挨拶したのよ!

「おはよう。」ってそりゃもう爽やかな笑顔で!! 鳥肌が止まらなかったわ!」


私の中では前半のルフト様のイメージができないのだが……

でもニナが嘘を言う訳も無い。悪魔に何かされたとして、笑顔になったり挨拶をしたりするようになるこの変化は悪い事では無いのでは?


「ホントにアレはもう別人ね! 中身が変わったのよ! それか双子! 見た目だけはソックリな別人ね。」


「絶対にそう!」と笑顔のルフト様を否定し続けるニナにハッとする。

…………………………『中身が変わる』事は有り得るのでは? ルフト様が無愛想から愛想が良くなる変化をしただけならば問題ないが、全く入れ替わってしまったとなったら話は別。

夕べルフト様は何故か意識を無くしたように眠り、そこに悪魔に取り憑かれたリリアナ様が現れた。

悪魔が取り憑く相手を変えたとか? もしくは仲間を呼んで別の悪魔をルフト様に取り憑かせた可能性も……?


有り得なくは無いだろう。

そこも含めてちゃんと悪魔について調べなければ……


その夜、話を聞こうと部屋に1人になるとぽっちゃり妖精と風妖精を待った。


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