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入寮して4年目。今年も3人のスペランツィアが入って来た。

男の子が2人に女の子が1人。歓迎会の後は、恒例の談話室での説明会がリファル王子の主導のもと開催されたのだが、何故かオレとルフト、それにグラドンまでも召集された。


「お前達、良く来た。俺はこの国の王太子リファルだ! この寮では下級生の面倒を上級生の者が世話をするルールがあるが、俺は世話をされることがあってもすることはない!! 困ったことがあればコイツに言え。」


仮にもこの先この国のトップに立って民衆を導いて行く人間の言葉とは思えない事を、恥ずかしげもなくピッと親指でオレを指し示しながら言いきったお子ちゃま王子。


「リリアナ、コイツらの事で困った事があったらすぐに言うんだよ?」


下級生を指差し、目をハートマークにしてグラドンがリリアナの耳元にささやけば、リリアナは全力でリファルの後ろに隠れて首をブンブンと横に振る。


「カトレアです。よ、ヨロシクお願い致します。」


姿勢良く淑女の礼をするも家名も言い忘れてしまう程緊張し、その後はもじもじと俯いたままのカトレア嬢。まぁ、リファル王子も名前しか言わなかったから良いんだけどね……


……この状況で分かる通り残念ながら彼らは相談相手には向いてない。今年の入寮生は問題が起きても解決は是非自力で頑張って貰いたい。

一応何かあった場合に備え、オレとルフトはもう一度自己紹介と握手をしてからその日は解散となった。


因みに、3人の内唯一の女の子リーツが(のち)にあの女の信者になる。そして、ルフトに殺された犠牲者の1人でもある。


翌日はギフトの診断の日。ハーノン女史が亡くなってしまったので、今年からはまんま"診断"と言う名のギフトを持つイシュラ様と"推量"ギフトを持つセイブル夫人の担当となった。2人は学園の関係者ではく、毎年この日だけ召集される。


イシュラ様の"診断"は与えられたギフトの名前が分かるのみ。どういった内容の賜物なのかは分からないため名前から推測するしかない。

"推量"は見ただけで色々なモノの量が数値として分かるらしい。なので各々の神力を見てもらう。


ハーノン女史が慧眼のギフトを使えるようになるまでは、これに近いギフトの持ち主が数人でこの儀式を行っていたそうだ。

女史のギフトは神力を数値化することは出来なかったものの、名前と内容、それにある程度の神力の量を全て一人でみる事が出来た事を思うと、本当にレアなギフトだったんだと改めて実感する。


そしてこの年、あの日処刑された彼女とそれを対面の舞台から見ていたメンバーが全て寮に揃った。


今更だが、役者が全て揃ったのでこの4年間とこれから()()()までに起こりうる事を思い出し整理しておこう。と、自室でノートを出してメモをとり、日記をつけ始めた。


まずこの4年。ハーノン女史が亡くなったり、講師が入れ替わったりという出来事は時間が巻き戻る前と記憶の限りでは同じタイミングだった。


違うものと言えば、俺が2つ下の王子や彼女らに対する態度だろう。以前は王太子と言うこともあり、何か頼まれればハイハイと聞いていたが、今回は上級生だからということで程々の付き合いしかしていない。


それともう1つ。引っ掛かっているのはミネルさんとの初対面の時とグラドンの反抗的な態度。

ミネルさんはあれから俺たちの記憶通りの穏やかな対応となった。そして、平民のスペランツィアにはお決まりの養子縁組が成され、ミネルさんは公爵家の養子となった。

グラドンについては、元々前回も反抗的だったのが輪をかけて酷くなった気がする。……まぁ、あくまで気がするだけなので深くは考えないことにしよう。


次にこれからの事だが、俺たちが9歳になると2つ上のキーラント王子とミネルさんがセプト神学校に入学し、同時にこの寮を移りオレたちがハマッチ寮の最年長寮生となる。

この年は男爵家の男の子が1人入寮してくる。


翌年、10歳になるとルフトに養子縁組の話が来る。スペランツィアは男は王族に仕えることが確定しており、女は王族と婚姻を結ぶ可能性があるので貴族の養子としてかなり人気がり、10歳になると養子縁組が出来るようになるので平民のスペランツィアの元には連日貴族が面会にくるのだ。

ルフトは珍しいギフト持ちな上、かなり容姿が良いので上級貴族がかなり名乗りを上げたらしい。そして、すったもんだの末テペラ侯爵家の養子になった。

……オレより身分が上だよ……。


そして11歳、ハマッチ寮最後の年。前回の人生で起きなかった事件が起きた。

グラドンとリファル王子が結構派手な喧嘩をしたのだ。理由はグラドンがリリアナにちょっかいを出し、そのリリアナはリファルの後ろに隠れる。リファルはリリアナと仲が良いのかと思いきや、特別な感情はなく毎回盾にするリリアナにイライラしていたらしい。


「リリアナ! 嫌なら嫌だと自分で言え!」

「えっ……そんな……無理ですぅ……シクシク」

「リファル!! お前、リリアナを泣かしたな!?」


っと言う実に下らないもの。オレとルフトが間に入り収めたものの、リファルとグラドンの仲は一層悪くなったのは言うまでもない。

この騒動は俺がリファルの面倒をあまり見なくなったから起きた事象だろうとルフトに言われた。前世を思い出し、確かにこの3人の間に入って苦労したことを思い出した。


翌年、何だかんだとハマッチ寮を出る年となった。2度目なのでこれと言って思うことも無い。

だが、この年はあの処刑に繋がる重大な発表があった年でもある。


『リファル・テラス・ホシュグァル王太子殿下とカトレア・ラモエル侯爵令嬢の婚約をここに発表する。』


俺たちの退寮式の最後に城からの使者が巻物を手に発表した。

前回の人生ではポケッとこの発表を聞いていたオレだが今回は関係者の顔を伺う。


リファル王子とカトレア嬢は事前に話を聞いていなかったのか驚愕の表情、リリアナはカトレア嬢を睨み、グラドンはそんなリリアナを心配そうに見つめる。更に下の子達は我関せずといった感じで、おめでとうございまーす。と流し聞いていた。


そして最後にルフトを見る。今までで一番険しい顔をし使者を睨み付けていた。それもそのはず、この発表はルフトの計画の失敗を表すものだからだ。


因みに、王族男子がスペランツィアの女性以外と婚姻を結ぶことは、ホシュグァル王家始まって以来初の出来事だった。

読んで頂きありがとうございます。

次回からルフト視点の話になります。時間回帰する迄の流れも描いておりますので次回も読んで頂けると幸いです。


それと、この作品について評価等をして頂けると嬉しいです。よろしくお願い致します✩.*˚


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