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ソファーで項垂れるグラドン。ものすごく反省してるのかと思いきや、全くそんなことは無かった。

もちろんあるであろうと思っていた謝罪もかなり適当なものでオレは立ったままでグラドンは座ったまま。

思いっきり殴られて出来た顔の腫れもチラリと見て「うわぁ、結構腫れたな。すまん、すまん」と軽ぅーく言われただけだった。


謝るならちゃんと謝れや!! と大声で言いたいのをグッと我慢。

うん、相手はまだ11歳の子供。オレは見た目は12でも中身はトータル30越えた大人だからな。ここは子供のした事だと広い心で許すのが正解、うん、うん……。

腹立たしさを納めて小さくため息をつく。


ここでグラドンの従者がこそりとグラドンに声をかける。するとグラドンは慌ててオレに席を勧めてきた。立たせたままの事に違和感は無かったようだ。

……遅せぇよっ! ってか、言われなきゃ気づかないとかどんだけ人を下に見てるのか。そういえばさっきもオレを"お前"呼ばわりしてたな……

今頃思い出してまたちょっと腹を立てる。前の人生でもかなり尊大な態度だったが、今回の人生では輪をかけて酷くなってる気がする。


この人も大変そうだな、と座るのと同時に出された珈琲を飲みながらチラチラとグラドンの従者を見る。

グラドンの従者は10歳位年上で、オレの従者(フィル)ルフトの従者(カイン)と比べるとかなりのベテランだ。

前の人生では脳筋である意味素直すぎるグラドンを上手く乗せつつコントロールしてるイメージだったのだが、今見ると記憶より遥かに老けて疲れているように見える。


オレがカップを置くと、グラドンはその従者に部屋から出るように言った。グラドンの従者は何か言いたげな顔をしたが素直に頭を下げて出ていく。

フィルはオレに伺うような視線を寄越すのでコクリと頷くと分かりましたとばかりにグラドンの従者の後を追って出ていった。


「おま……ライク様の従者まで追い出して悪いな。

ただ、これから話すことはちょっと人には聞かせられない話なんだ。」


グラドンは従者達が出ていった事を確認すると真剣な顔で話し始めた。

"人には聞かせられない"話など聞いたところでいい事は無いので聞きたくはないのだが、ルフトの言ってた"言いがかり"の内容ならば聞いておかねばならない。

先を促すように黙って小さく頷く。と、グラドンはオレの目を見ながら言う。


「……俺は今、過去に戻って2度目の人生を生きている。」


「……………はっ?」


予想外過ぎる話で思わず眉間にシワを寄せたままグラドンを凝視してしまった。そして、発したつもりのない声が出ていた様だ。


「うむ、驚くのも無理もない。この話をした者は大体皆同じ顔をする。夢でも見たのだろう。と、そして真剣に話せば話すほど可哀想な子を見るような目でオレを見る。」


グラドンは半ば投げやりに鼻でフンッと笑いながら言った。

オレの場合は他の人達とは別の意味で驚いたのだが、突然この話を聞いた人達は何を言い出したんだと驚く姿が想像出来る。


グラドン自身も何人かにこの話をしたのだろう。そして多分、この話し方からして信じてくれる人は居なかったようだ。


「信じられないかもしれないが本当のことだ。

今までカトレア嬢が精霊王の加護を受けたと診断される事も、リファルと婚約する事も、ハーノン女史が亡くなる事も全て1度目の人生で経験していたために言い当てている。

疑うならグラドンの従者(イーシャ)に確認すれば分かる。」


自身満々にそう言い切る。嘘はついていないようだ。


グラドンが言ったことは当時子供だったオレ達には衝撃だった出来事だった。そして肉体強化系のギフトを持つグラドンは知りえない事実ばかりである。

本当にこれらを事前に言い当てたのならば、グラドンもオレ達と同じように記憶を持ったまま過去に戻ったのかもしれない。


「な……んで?」


色んな意味でその言葉を発したのだが、グラドンはなぜ言い当てらたのか? と聞かれたと思ったようでもう1度、「2度目の人生だから」という返事をよこした。


イヤイヤ、そうじゃない! オレが聞きたいのは過去に戻ってきた方法とかなんだが? ルフトのギフトが関係してるのか??

どうやって聞こう? いざ聞こうと思うと躊躇ってしまう。


"どうやって過去に戻った?" なんて聞いたら他と人同様、疑っているようでお前も信じないのか! って機嫌を損ねて追い出される?

……それとも興味を持ったと判断して色々と答えてくれるのか?

悩んだ挙句、結局聞いてみることにした。するとグラドンは後者の考え方の持ち主だったようだ。


「フフン、興味があるのか? 良いだろう。話してやる。」


嬉しそうにそう言うと、何故か得意げに話し始めた。


1度目の人生、どれ程自分が優秀でリリアナと愛し合っていたか。

その愛するリリアナを虐め尽くし、リリアナがなるはずだった王太子の婚約者の座を掠めとった悪者のカトレア嬢を如何に糾弾し処刑に追いやったか、そしてリリアナを王太子の婚約者にさせるまでをまるで武勇伝の様に語った……いや、騙ったが正しいか。


何故なら話した内容の8割位は誇張され、辻褄が合わない部分は脳内で補完された()()だったから。

残りの2割は事実。イーシャに話したであろう衝撃的で記憶に残りやすい出来事。


「…………そしてカトレア(罪人)の首を跳ねた直後、断頭台に白髪の老人が飛び込んで来て首を抱え込んで喚き始めた。あんな悪女にも泣いてくれる者が居たのかと驚いたが、もっと驚いたのはその老人がスペランツィアだった事だ。

その老人のギフトだと思うが、その場に居た半数以上の人間の動きを止めて、挑発したリファルや俺達に斬りかかって来た。そこでリファルやリリアナ、それにミネル、そして多分お前も殺された。」


ん? 半数以上の人間ってなんだ?? ルフトが時間を止めたなら総ての時間が止まるハズ……

ルフトが昔、刻を止めると自分以外の総てが一時停止状態になり自分だけが止めた分だけ歳を取る、って言ってた。生き物は心臓も脳の働きも止まるから止まっていたことすら分からない、とも。

って事は、グラドンが過去に戻ってきたとしても自分達が殺される記憶は残るはずが無い! これももしや脳内補完? でもオレが視た夢と大差無い。


疑問符を浮かべたままグラドンの話の続きを聞く。


「その時俺もその老人に刺されたんだが、鍛え抜いた肉体のお陰で何とか死なずに生きていた。まあ、瀕死で殆ど意識は無かったんだがな。その老人が誰かと喋った後、俺達の死体を集めて何かを始めた。そこで俺の意識は一旦途切れる。

……そして気づいたら俺は子供に戻っていて屋敷の訓練場で素振りをしていた。」



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